萩月
2024-11-03 21:50:19
3292文字
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甘し召しませ!

ハロウィンネタの続き別verです。あんまり焦らさずいちゃいちゃです。
これだけでも読める様に、序盤ちょっと重複しております。

【前回までのあらすじ】

キン肉スグルからハロウィンのお楽しみ(他意はない)にと、猫耳付き帽子をもらったブロッケンJr.。
恋人のアタルによって被せられただけでは飽き足らず、今夜はにゃんにゃんと鳴いて欲しいと言われる。
それは流石に無理と抵抗した所、口にチョコレート菓子を咥えたまま30分耐えてみせろと勝負を持ちかけられる。
更に、ブロッケンが勝てばなんでも言うことを聞いてくれるとのことで──!




「んぅ……ッ、!」

ブロッケンはベッドの上で、アタルに後ろから抱きしめられている形だった。よしよし、とまさに猫でも可愛がるように、はだけさせられた腹部を撫でられる。
何をされるか、と構えた所に素肌の感覚が乗ったので思わず息をもらした。
今、口元は棒状のチョコレート菓子を横向きして真ん中を咥えている。それなりに硬度はあるが、気を付けていなければ折ってしまいそうになる。

「あぁ、噛み折ってもアウトだからな」
「んぎ……っ」

今言うなよ。
肩越しに睨まれても、アタルは素知らぬ顔。

撫でていた手がするすると下に降りてくると、ブロッケンはぷい、と顔を戻し試されるそれに耐える覚悟をした。
しかし、意外にも手は際どい所ではあったが止まった。代わりに項の辺りをごしごしと布が擦れる。アタルが口付けをし、そのまま強張った首筋を優しく愛でているのだ。
逆の手では時折、ふわふわの帽子少し押し込みながら頭を撫でる。

「んあ……、むむっ」

ブロッケンは思わず「なぁ」と口を開いてしまう所を、慌てて閉じる。勢い余って折ってもいけない。
正直、恐らくそれはもう激しく責め立ててくるものだと思っていた。30分の中で、自分の理性を崩しにかかってくると。

しかし、いつも以上に優しい愛撫……にもならない触れ方はなんだろうか。
呼吸の度にチョコレートの甘い香りが鼻を抜ける。毒のようにじわじわと思考が蝕まれていくようだった。

「どうした?何かして欲しいことがあったか?」
……!!?」

その言葉に、ブロッケンは一瞬冷静さを取り戻した。そして最悪の答えを見出した。

口を開けてはいけない。
それは快感に声を上げるのを耐えられるか、そういう勝負なのだと思っていた。

だかしかし、人……少なくともブロッケンの構造上は、口を開かなければ、自分の思いを伝えることも叶わない。

(隊長〜〜!!?)

振り替えれば、きっとにやにやと笑っているのだろう。

(焦らし続けるつもりかよッ──?!!)





……んぎぎ

ブロッケンは折ってしまわない程度に、咥えてるチョコ菓子を噛み締めた。甘い味がじんわりと口に広まる。
実はこれも地味な曲者で、口の中の甘ったるさは早く離して清涼な空気を求めたくなる。

いや、そんなことは気に留めない考えない、とブロッケンが頭を揺らした時、下腹部の方にあった手が内腿に手が滑り込んできた。

「んん……ッ?!」

そしてそのまま、張りがありながらもほどよい弾力と少しの熱を持つ太腿を、堪能するように撫でたり、少し指を曲げてむにむにと揉むかのような動きを見せる。
掌がぐるりと内側に回ると、その瞬間こそブロッケンの身体はぞくりと跳ねたが、際どいものの、それ以上越えてこない。

「んむむ……っ」

ブロッケンはどうも落ち着かなかった。とりあえずセクシュアルなことをされてはいるのだが、どことなく、拍子抜けと言ってもいい。

(焦らすつもりかと思ったけど……)

こんなもん?と、眉を潜める。

責め立ててくるかと思いきや、焦らすようで。
でもその焦らし方もなんだかお優しいもので。

(これなら、いける──!)

30分、いや、あと20分弱この口の中の甘ったるさを我慢すれば……と、ブロッケンが勝利への道筋を見据えた時だった。

ちゅう、とわざとらしい音がした。

「んひゃ……ッ?!」

それと同時に、首の付け根あたりに生温かい感触。
それは間違いなく、アタルの唇だ。

(ま、まって……えっ?!)

ブロッケンの心臓の音が速くなる。

先程の布越しの感触ではない。
その唇の熱と、弾力を感じるのならば、彼はその覆面を押し上げているのだ。

「ブロッケン……
「んん〜〜ッ……

ちゅ、っと優しく頬に口付けられる。
知らされた事実にブロッケンの頭がふつふつと茹だってくる。

覆面レスラーであり、更に一族の掟を持って生きるアタルはその素顔を晒せない。
それでも時折、慣れた手付きで少しだけそれをずらして、直接口付けてくれることは、ブロッケンにとって特別嬉しいものだった。

何よりブロッケンは、アタルが覆面を少し上げて、口元を晒してる状態の「 」にめっぽう弱かった。
鼻先まで見えた日には、直視できないくらい、心の弱い所を握られているのだった。

「んん……ッ!んー!」

ブロッケンは溶けそうな頭で、なんとか目を逸らさねばと頭を動かそうととする。
だが、それはアタルの大きな手で阻止され、頭を固定されたまま、チョコ菓子ごと食らいつかれた。

「んみゅ……っ!?」

べろり、とひと舐めしてから唇が離れる。

……ん、甘いな。お前よくずっと咥えていられるな」
「ひゃ…………

くらくらと目眩がする。
甘すぎる口付けは、本当にチョコレートだけの所為?

目が虚ろなブロッケンに、アタルは猫同士の挨拶の様に、晒した鼻先同士をくっつけながら、問う。

「ブロッケン、どうしたい?」
「ふぁ……ッ」

ぽとりと甘い口枷は落ちる。
それを合図に、アタルは再びブロッケンに深く、口付ける。

「んん、ふぁ、アタルッ、」

ちゅ、びちゃり、と甘い水音の合間にブロッケンの息が漏れる。
先程口枷を“落としてしまった”のに、今もそれまでのような呼吸しかできない。
アタルの舌を迎えるように口が開いたままなのは、どうしても抗えない、愛され猫のさが なのだった。




「ずりぃ〜〜!」

キィっ、と歯を剥くのは猫……ではなく、悔しさのあまりシーツを頭から被ったブロッケンである。

「ずるくない、ちゃんとルール内だ」

アタルはシーツお化けに目を細めながら、続ける。

「というか、どこかずるかった?」
「だってあんな……、ッ!」

ブロッケンの顔がぶぁっと茹であがる。
ここで相手の非を訴えても、それは自分の弱味を晒すことになりそうだ。
ぎりぎりと歯噛みしていると、アタルはくすりと微笑み、その熱い頰を撫でた。

「お前も頑張っていたから、引き分けにしようか」
「えぇ?それは……なんか逆に……
「俺はこの後も楽しみが待ってるし、お前も俺にひとつ命令できる、Win-Winだろう?」
「このあと……

ブロッケンは勝負の発端を思い出す。
なんだか更に恥ずかしいことを強要されていた……この勝負に満足して忘れてくれていないか、とほんの少し希望を持っていたが、残念、現実はチョコと違い甘くなかった。

悔しいので、せめて一矢報いたい。
ぐるぐると頭を巡らせていると、ふと、在りし日のことを思い出した。
この猫語強要男の弟が、遊びの中で別の仲間に言っていたような。ゲームか何かで、負けた方は……

……焼きそばパン買ってこいよ……!」
「それでいいのか?」

余裕綽々、と言った様子に全く矢が刺さってないことを悟る。
ブロッケンはただ赤い顔のまま、ばかー!と鳴いてみせることが精一杯だった。



end





おまけ


母星に降り立ち、そして生まれ育った王宮へ向かいながら、アタルは数日前のやり取りを思い返していた。
たまには家族に顔を見せてこい、直接礼を言いに行け!と荒ぶる恋人に、

「礼ってことは、お前も喜んでくれたのか?」

と返したら何故か更に毛を逆立てていた。
弟に美味しい焼きそばパンがある店でも聞いて、機嫌を直してもらおう。

今年のハロウィンは、なかなか良い思い出になりそうだ。


Happy Halloween!