けろか
2024-11-03 20:03:43
1730文字
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性癖パネルトラップ① 竹くく×年齢差×体調不良

性別パネルトラップ①体調不良
いただいたお題が年齢差竹くくでした!
二十歳大学生🎋×十二歳小学生📛です〜!

「え、三連休で出張と法事が重なって?塾があるから法事にも連れて行けない。なるほど、それで兵助を?うん、全然いいけど」
 電話の向こうで、ありがとう八左ヱ門くん、助かると叔父の声が安堵に満ちて弾んだ。妻の実家の法事と自らの出張が重なる三連休。その間息子の面倒を見て欲しい――ということで。八左ヱ門は叔父の息子――八つ年下の従兄弟の兵助を預かることになった。兵助とは、夏休みの帰省以来会っていない。
 六年生ともなれば一人で留守番くらいできそうだけど、と思いながらも、八左ヱ門は心の中で密かに期待を膨らませていた。人生の夏休みな大学生なので暇なことは暇だったし、なにより久しぶりに兵助に会える。
「おー兵助! 久しぶりぃ! て、言っても夏ぶりかぁ」
「うん。お世話になります」
「いーって。おっきくなったなあ」
「二ヶ月で大きくならない」
「なるもんなの、子供は!……一人で来たんだ?だいじょぶだった?」
「別に。塾の近くだから、知ってたし」
 玄関を開けると、律儀にぺこっとお辞儀して兵助が上がってくる。短い前髪の下から覗く黒目がちな瞳は、相変わらず透き通るように澄んでいて、でもどこか大人びた色を宿していた。中学受験塾のロゴが入った重そうなリュックを背負った後ろ姿に、頼もしくなったなあと思いつつ頼りなさも感じる。八左ヱ門は胸の奥がちくりと痛むのを感じた。つい最近まで「おにいちゃん、おにいちゃん」と追いかけてきた兵助が、いつの間にかこんなにも大人びてしまった。自分だってまだ二十歳なのに、じじいみたいだな、とぶんぶんと頭を振った。
「兵助、なんかして遊ぶ...?」
「いい。宿題あるから」
「そっかあ、受験生だもんなあ」
 素っ気ない返事に肩を落としてみせると、兵助が小さく身じろぎした。机に広げかけていたノートを閉じ、ちらりと横目で様子を窺っている。
……やっぱり八左ヱ門が寂しそうだからやる」
「おお、さみしい!兵助おにいちゃんがあそんでくれてうれしーい!」
「やっぱり遊ぶのやめる」
「嘘嘘、何する?将棋好きだったよな兵助、すぐ出せるようにしてあるよ」
「将棋、八左ヱ門弱いから。オセロがいい」
 塾でも上位を維持しているらしい頭の良さは、ボードゲームにも如実に表れていた。八左ヱ門は二十歳になっても、この十二歳の従兄弟にゲームでで勝てたためしがない。

 だが今日は、どこか様子がおかしい。
 白い手が石を返す動作が、いつもより緩慢だった。頬が上気して、産毛に汗が光る。呼吸も荒くて、でも唇は青いような……
「なあ兵助、どした、具合悪い?」
「悪くない」
「でもその顔」
「熱くない!!」
 慌てて否定する声が、かえって不自然に裏返る。額に手を当てようとすると、ぷいと顔を背けられた。
「熱いんじゃん、体温測ろ、ほら」
「やだ」
 こう言う時だけ年相応なのかよ。思わず八左ヱ門は兵助の額に自分の額をぴたりとつけた。黒い柔らかな前髪と混ざり合って、くすぐったい。
……はちが熱い」
「え?俺が熱いの?兵助がじゃなくて?」
「熱い」
「っておでこで分かるわけないか、ごめんごめん。体温計取ってくる」
 立ち上がろうとした八左ヱ門の裾を、小さな手がぎゅっと掴んだ。熱で潤んだ黒い瞳が、真っ直ぐに見上げてくる。
「やだ」
「でもほら体温測んないと、場合によっちゃ病院だし塾にも休みの連絡入れないと」
……八左ヱ門と遊ぶの楽しみにしてたのに、体温測ったら、風邪だってわかったら、遊べなくなっちゃう……
 熱に染まった頬を紅く染め、震える声で訴えかけてくる。長い睫毛の下で潤んだ瞳が、今にも涙をこぼしそうに揺れていた。胸に突然の衝撃が走る。
 オセロの盤面が、一気に裏返るような──。
 これまで「可愛い従兄弟」としか思っていなかった感情が、たった一瞬で、まったく違う色に染まってしまった。

 微熱で上気した頬、汗に湿った前髪、か細く震える声。じじいなんかじゃない、二十歳の若者の心臓が、理性の制御を外れて暴れ出す。
 ――え、なに?この気持ち……
 八左ヱ門は、胸の奥で芽生えかけた危うい感情から目を逸らすように、ただ虚ろに立ちすくんでいた。