有川真美
2024-11-03 17:39:06
1449文字
Public エンゲージ
 

黄金色の想い

11/2~11/3にPICREA様にて開催されるWebオンリー【エレオス男女会】のブシュゴルことブシュロン×ゴルドマリーのSS。
サークルカット等にも書きましたが、このSSは本来書く予定だったお話の『前置きの』部分です。またこの人折れてる……

素晴らしいブシュゴル作品や他CPに出張しているゴルドマリーからエモさを感じて満足しかけたのはここだけの話。

 三つ目の竜紋を辛くも破壊し、邪竜ソンブルが待ち構えている異界の門への進攻を目前にした神竜軍は、今まで以上に慎重に備える者や最後の休息を思う存分満喫する者等各々が決戦に向けて機運を高めていた。
「本日はわざわざ来ていただきありがとうございます。どうぞ、心ゆくまで私の料理をご堪能ください……
「ええっと、そりゃどうも。」
 かく言うブシュロンとゴルドマリーも後者の内に含まれる二人ではある。軍全体での会食の後いつもの如く誘ってくる彼女に薄々某かを察しつつ表面上は快く了承したブシュロンは、待ち合わせ場所で淡々と広げられる弁当箱を目にしてやはりかと内心嘆息を漏らした。
 何も食事の後に食事を被せる事はないだろう、と喉まで出かかった突っ込みを飲み下して、脇に添えられたカトラリーを手に取る。
「では、いただきます。」
「召し上がれ。」
 とはいえ直前に食べた分も考慮されているのか、普段差し出される物よりかは幾分少なめの分量に抑えたようだ。肝心の品目も、胃もたれしないよう重たい料理は極力避けてある風に見受けられた。
 一口大に切り分けたポテトパンケーキを口にし、二度、三度と咀嚼する。丁寧に裏漉しされた生地の優しい味わいが舌に心地好い。
「うん、相変わらず美味いよ。固さや焼き加減も絶妙だ。」
「よかった。ああ、殿方の好みを完璧に熟知している自分が我ながら末恐ろしい……!」
 天井知らずの自賛を傍目に見遣りつつ、弁当箱へ視線を戻す。元より苦手な食べ物は少なく比較的何でも好む方だと自負してはいたが、細かな嗜好まで把握しているのは流石だと言ってもいい。
……?」
「ふふ……
 ふと妙に熱い視線を感じて振り向いてみるも、柔らかな面差しに微笑を湛えているだけで何か言いたげなわけでもない。何気なくパンケーキを頬張り付け合わせの野菜を齧るという絵面をそんなに眺めていたいのだろうか。若干首を傾げながら粗方食べ終え、残りの一品となった主菜にナイフを入れた。
「オムレット作りが得意なブシュロンさんにも負けない仕上がりになっているはずです。さぁ、よく味わって……
「じゃあ遠慮なく…………ん、いいなこの具。」
「潰したトマトと角切りのトマトをそれぞれ二対一の割合で混ぜて、ある程度酸味が飛ぶまで煮詰めた後チーズを加えました……
「なるほど、道理で。」
 食べる頃にはソースやオムレット自体の熱で融けまろやかさを生むという寸法か、フィレネにおける調理法とは異なるがいずれにせよかなり完成度が高いのは間違いなかった。
「にしても、ゴルドマリー程の腕前なら俺が改めて認めるまでもないだろうに。」
「あら、ご存じありませんでしたか?殿方には何度褒められても嬉しいのが、女というものです。さあ、さあ……
「別に男も女も無いと思うが……とにかく、あんたの料理を食べる人は幸せだろうな。何せ口にする人の事もちゃんと考えて作られているんだから。」
「っ!それは、勿論です。」
 反応から察するに、考えうる限り最大の称賛は届いてくれている。それでも何かが足りない気がして、無意識に口を滑らせた。
「機会さえあれば、また……食べたいものだな。」
「ブシュロンさん……
 無論、この戦いが終わればそれぞれの祖国へ帰還し遠く離れ離れになるのは解りきっている。さりとて、願わずにいられないのは向こうも同じらしい。
「その時を、私も楽しみにしています。」
 変わらぬ微笑から紡がれる声音が、少しばかり上擦っていた。