ベコ
2024-11-03 13:39:08
800文字
Public CP無し
 

裏街道から

ある一人の黒爪盗賊団員の話

黒爪盗賊団は壊滅した。かつて頭目だった男の手によって。
俺たちは生き延びた。いや、正確には生かされた。その男の情けによって。

相変わらずあの人は身内に甘ぇんだ。俺たちみたいなろくでなし、生かしておいてもしょうがないってのに。
団は無くなったが、俺たちは生きている。それが意味するところは――――――


脛に傷のついた者が真っ当に生きるのは難しい。自業自得ではあるが。
幸い俺は腕に覚えがあるから、傭兵として食っていける。
だが傭兵と言ってもピンキリだ。俺が入団したのは盗賊まがいの仕事も請け負う傭兵団で、これじゃあ盗賊やってた頃と変わりゃしない。
しかも団長が高圧的なムカつく野郎で、いつも無茶な要求ばっかしてきやがる。俺は嫌気がさして、せっかく入った傭兵団をあっさり抜けてしまった。これで無職に逆戻りだ。
俺は黒爪盗賊団しか知らないから、新しい集団に入ればどうしてもそこの長と盗賊団の元頭目とを比べてしまう。
あの人はそんなこと言わなかった、あの人ならこうするだろう。
あの人は本当に悪党とは思えぬほど世話焼きな性分で、俺たち団員はみな随分と甘やかされていたんだなと改めて思い知る。盗賊に戻る気はさらさら無いが、あの頃が懐かしい。ああ、思い出してしまったらもう駄目だ。またあの人の下で働きてぇなぁ……


何か仕事はないかとたまたま立ち寄った町で元盗賊仲間に再会した。そして、そいつからあの人が最近までここにいたという情報を得た。
話によると、あの人は各地で復興の手伝いに勤しんでいるらしい。こいつもあの人の下で復興の為に働き、今では一人でこの場を任されるまでになったという。
なんだそれ、羨ましい。それであの人は今どこに?……数日前にここを出て、南の町へ向かったと。そこにしばらく滞在するんだな。よし、今から急いで追いかければ間に合いそうだ。

俺は希望を胸に、脱兎のごとく駆け出した。