やだね、と素っ気なく言われて僕は立ち尽くした。そんな、そんな。確かに君は同性の幼馴染ではあるけれど僕の恋人でもあった筈だ。確かに熱烈に愛を囁かれているわけではないけれど、僕達は恋人関係にあってお互いに愛し合っていると思っている。
僕は提案を拒絶されて言葉も無く唇を噛んだ。
だが、仕方ない。切り替えて譲歩を引き出さなくてはと顔を上げた。
「残念だが、そちらは諦めよう。ではこちらは承諾してもらえるだろうか?」
「するわけねぇじゃん」
呆れたような声に胸が痛い。楽しみに、していたから。
「……そうか」
言い募りたかったが、やっと出た言葉はそれだけだった。
僕は俯いてリビングのソファに座った。
その僕の頭上に声が落ちてくた。
忌々しそうな君の声に、僕は項垂れていく。
「あのさ、姉貴が悪りぃけどあんたもなんで間に受けんだよ。親と姉貴が行くビーチリゾートにわざわざ一緒に行きたいわけねぇだろ?しかも水上に教会あっからついでに式しろって珍しい水上教会とやらにあいつが入りたいだけだろ?俺にドレス着てこいって完全に遊んでんじゃん。あんたもそれの尻馬に乗ってヤバいエロ下着なんて用意するなよ。なんだよアナルプラグ付きって、まだ諦めてねえのかよ。勃ちもしねえから諦めるかあんたが履けよ。まあ俺は常識がある恋人なんで人前では履かせないしベッドの上でプレイとして履かせるだけだけどな。
あんたはそれ履かせてドレス着せようとしたけどな」
「そう言葉にされると僕が凄い人非人のように聞こえるね……」
「聞こえんじゃなくて人非人なんだよ」
「白いドレスを着た君はさぞかし美しいと思っただけなのに、僕の純情も理解してくれ……」
「黙んな、エロサイテンティスト。下着の説明にはなってねぇよ」
「本当に悪かったよ…、ちょっとした出来心と遊び心を許してくれ」
「今日履けよ」
「え?」
「勿論履いてくれんよな?プラグ付きの下着。夜が楽しみだな」
「…あれは君のサイズだから僕が履いたらずり落ちてしまうな、エレガントじゃないよ」
「プラグで固定されんだろ」
「……!?、……!!」
「あんたバカだなぁ」
最後だけ声が優しくなったから君の顔を見ると、呆れた顔で笑っている。
僕の大好きな君の、美しい顔。
ああ、白いドレスはさぞかし君に映えるだろうに。
アナルプラグだって、君に抱かれるのが凄く気持ちが良いからその良さを君にも知って欲しかったのに。
しかも、今日はアレを僕が履くのか。肉体美とは縁がないので僕に似合う筈もなく君が楽しめるとは思えないが仕方ない。まあ、プラグは君に合わせて初心者用を選んだから余裕で入れられるけどね。
呆れた顔をしてるけれど、僕を見る目は優しい。
まあ僕の提案も余りエレガントじゃなかった、君のドレス姿の想像に目が眩んでしまっていたけれどね。
ごめんねの意味も込めて君に近付いて頬にキスをした。
目が合ったので少しだけ笑う。ごめんね。
緑の目が僕を見て揺れた。
そのまま手を握られて囁かれた。
「やっぱ今履いて」
「ん?」
「ベッド行こうぜ」
「え?」
バカンスの真っ最中、ある日の昼下がりの事だった。
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