ぽふむん
2024-11-02 22:51:17
3998文字
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My sweet Witch

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
しの童 氷柱if

夜露に濡れた落ち葉を掃く音や、赤や黄色に染まった山を見てキレイと言っても、童磨さん素っ気なさそうですよね。
そういうことに加え、何気ない仕草に「イラっ」ときたしのぶちゃんです。





秋も深まり、漂う風は季節の移ろいを告げるよう。
山は赤や黄色の葉の絨毯が敷きつめられている。
夜露で湿った落ち葉を掃く音もする。
「美しい景色ですこと」
しのぶが感嘆のため息をつくが

「ふぅーん……ま、冷えてきたもんねぇ」
語りかけた相手はそんなこと歯牙にもかけない。
実に味も素っ気もない返事を返す。
(本当に……相変わらずの唐変木)
しのぶは肩を竦めた。

遠くからは、色々理由ありの孤児や、親がいるには居るが……という子どもたちが広い境内ではしゃぐ、何やら賑やかな声も聞こえる。

それもそのはず。
今日は今年二度目のお月見泥棒の日。

本来は中秋の名月の日に行う行事なのだが、ここ極楽教では「楽しい祭りは何回あってもいいものだ」と言う考えの元、西洋の【はろぅいん】と合体させた。
かぼちゃしるこを作って食べ、腹を満たしたら、明日以降のおやつ獲得。寺院内の大人にお菓子をせびりに行く。
よこさなければ、やりたい放題大暴れしてかまわない。
子どもにとっては楽しい祭り。
今は、夜道を照らすかぼちゃ灯篭作りに騒いで居るのだろう。

「みんな楽しそうですね」

しのぶはそう言いながら、膝の上の宝珠の耳掃除。
正確には耳をくすぐっているだけ。
中には何も無い。
「あー……子どもの遊びだよぉ?しのぶちゃんはもうそんな歳じゃないでしょ。
子どものことは子どもに任せておけば良い。万が一の時はろくさんがついてるし、老女も居るし……あぁ気持ちいいなぁ」

本当に気持ちいいのだろう。心地良さげに目を閉じている。

(このバカ……そういうことじゃない!)

その時、一人の中年女の声がし、静かに襖が開けられた。
「仏様にお供えしたおまんじゅうのお下がりにございます」
うず高く積まれた饅頭を見て、しのぶの膝の上の宝珠【童磨】は『うへぇ』と言いたげな顔をした。
が、すぐに対信者用笑顔になって、手だけでしのぶに感謝の意を伝え起き上がった。
その仕草がなんだか横柄なものに感じ、しのぶは少しイラついた。

(まだ私はアンタの嫁じゃない!何様?)

だが人前だ。
ひとまず堪える。
後でしめてやる。どうしてくれよう。
色々企んでいるというのに、肝心の童磨はそんなしのぶの様子に気づく様子もない。 信者に返事を返した。

「ああ、ありがとう。僕はいいから、子ども達に配っておあげ」
遠回しな『いらない』ということなのだが
「子ども達にはもう、教祖様からだと言って配りました。あとは教祖様達でどうぞ」
信者には聞こえない程度の、小さな『げっ』という声がした。
天啓が降りた。しのぶは、その天啓に、にまっとほくそ笑んだ。
健啖家と言えば聞こえが良いが、要するに食いしん坊のこの青年教祖。
この教祖の、唯一の苦手な食べ物。
甘く煮た豆。

しのぶの為だけに持って来られたにしては多い。
急須には熱いお茶まで入れてある。
湯のみは二つ。
どう見ても二人分。
「ろくさんが子ども達の相手をしているとはいえ、気が利かないなぁ」

信者には聞こえない程度の小声でのダメ出しに、しのぶは童磨の尻をつねった。
「あとは自分でしますのでお気遣いなく」
しのぶがそう答えれば、中年女はお辞儀をして去っていった。

「痛いよぉ。もう!……一口くらいの大きさとはいえ……しのぶちゃん一人には多いよね……
やっと童磨の口から本音が漏れる。
「そりゃそうでしょう。ここはあなたの家、しかも当主なんですから。あなたも食べるべきです。はい、あーん」

しのぶは童磨の為に饅頭をひとつ差し出した。

「あーんって……いくらしのぶちゃんからでも、豆なんか要らないよ」
ぷいっとそっぽを向いた童磨。
それ程までに苦手なもの。わかっているが、少し意地悪をしたい。しのぶはわざとらしく泣き真似をして見せた。
「どぉまが食べてくれなぁい。せっかくあげたのに意地悪ぅ……えーんえーん」
……棒読みだよ。猿芝居はやめて。そんなことより饅頭はしのぶちゃんがお食べ。
残ったら蝶屋敷の子たちへの土産にすればいい」
あまりにもわざとらしかったようで、苦笑する童磨にしのぶは子どもっぽく舌を出す。
「べーっだ、いじわるいじわるいじわるぅ」
「意地悪なんかじゃないよ。本当に、饅頭……いや、甘い豆じゃなきゃなんでもいただくさ豆だけは勘弁しておくれ」

童磨は駄々っ子のように拗ねるしのぶを困った表情で抱き寄せ、膝の上に座らせた。

(計画通り)

しのぶは密かに心の中でほくそ笑む。

「どぉまのいじわる。なんですか。ほんの一口のお饅頭ですし……あむ……美味し……こしあんですよ。粒あんじゃありません。上品な甘さです」
饅頭を一口で頬張り大仰に幸せそうな顔をして見せた。
童磨がしのぶのこの表情に弱いことをよぉく熟知しているから。
あまいあまぁい、しのぶの笑顔。

案の定、童磨の表情がだらしなく緩む。

「かぁわい……
「ね、だから、一緒に食べましょ❤」

そこで童磨は我に返る
「いーや!こしあんって、豆を単に潰しただけ。豆は豆じゃない!!」

(頑固ですね……まぁ、ここまでは予想の範囲内です)

しのぶはそう思いながら

「じゃあ、食べなくていいです」
ぷいっと再びそっぽをむくと饅頭をもうひとつ手に取った。
「そんなに怒らないでおくれよ。しのぶちゃ……む?」
僅かな隙を狙って、すかさずしのぶは童磨の口に饅頭をねじ込んだ。
目を白黒させる童磨にしのぶはさらに追い討ちをかける。
「この手は私の頭を撫でる為。腰を抱き寄せる為のもののはず。饅頭をとるためのものじゃありませんよね」
「む~!む~!!」

「さ、召し上がれ❤もぐもぐゴックンですよぉ❤吐き出しちゃダメ!」


饅頭を吐き出そうとするが、しのぶから叱られてしまい果たせない。

「むむ~!!」
抗議の声を上げたいが、饅頭に阻まれ果たせない。

実に滑稽で無様な姿
少し哀れに思うが、しのぶは決して手を緩めない。

「頑固ですねぇ 、じゃあ半分こしましょうね……あーむ」
そういうと、半分唇からはみ出した饅頭を頬張る。
必然的に、唇と唇が触れる

「むむ~!?」
驚きすぎて童磨の瞳が見開かれる。
しのぶは半分の饅頭を食べながら、小鳥のように唇を啄む。
方や童磨は、その間も頑なに饅頭を咀嚼しようとしない。

しのぶはとうに食べきったというのに……
だから……

舌をねじ込んだ。
半分になった饅頭を口中にねじ込む目的だから、目的を果たしたらすぐに引っ込ませる。
唇を舐める。
虹の瞳を見つめる紫水晶。
咀嚼し、飲み込まねば、これ以上してやらない。
吐息混じりに
「食べなさい」

囁きかけた。淫魔の囁き。

「~~!!!(欲しい)」

童磨は目を固く瞑り、覚悟を決めた……
餡子より甘い、甘露の魅惑には逆らえない。

悪夢の味を噛み砕き……飲み込んだ
口中に広がる甘い豆の味。
涙が生理的に浮かぶ。
吐き出したい。
「おえっ」

嘔吐いてしまう。

だが、しのぶはそんな童磨の様子にさも楽しげに、実に満足そうに微笑んだ。
「そう……上手じょーず。食べられるじゃなぁい❤もう一個いかが……
童磨の虹が絶望に曇る。
「しのぶちゃん……意地悪…………餡子は嫌……君の唇……
さすがに少し憐憫の情を覚えたしのぶ

「口直しですね」

陰嚢をやわやわと撫で……揉みしだいた。

唇を吸う濡れた音が響く

「ん……んぅ……はぁ……なんの……つもり」
餡子が嫌いということは、何度も言って知っている所では無いくせに……
流石に虹に怒りの色が混じってきた……なのに

「私のこと嫌いになりました?」

至近距離で、いたずらっぽく見上げてくる紫水晶の魅了の魔力。
お前にこの私を嫌いになることができる訳ないだろう。
そう言いたげな自信と、ここまでしたら嫌われると言う怯え。
嫌うなら嫌えと言う傲慢さと、嫌わないでと言う甘え。
相反する想いが混在した、複雑な魅惑の紫水晶。
童磨にとってこの魔力は抵抗することすら不可能な強力なもの。

惚れた弱みと言うべきか。

……なれない……無理……こんなことされても……大好き……なんだろう。これ、悔しいの……かな……
童磨はしのぶを抱き寄せる腕に力を込めた。
深く、深く唇を吸う。
唇が離れると、しのぶから

「知りません」
返事が返ってきた。
二人は笑い合った

「で、……これ……なんのつもり?」

童磨が囁くと、しのぶはイタズラっぽい表情で
「Trick or Treat」
お菓子かいたずらされるか、どちらが良いと問うてきた。

……あげたじゃない」
そう、お下がりの饅頭はしのぶにあげたのに……

「ああ、違いました。お饅頭くれたからいたずらします……いや、違いますね。お饅頭をくれてもいたずらします。当然の権利です。いたずらさせろ、このやろう」
しのぶはそう言ってくすくす笑った。

(この魔女……)

童磨は思わず口をあんぐり開けてしまった。
「あら、もう一個欲しい?はいあーん❤」

餡子だけはごめん蒙りたい。口を覆い首を振ると言う体格に似合わぬ仕草が面白い。
いたずら心がむくむく湧き上がる。
「饅頭はいらない!このイタズラ娘!んっ...///……ちょ」
思いっきり(自主規制)を握りしめた。
大男の力が抜ける。


「ほらほらぁ……無様に大きくなって……いたずら嫌ならもうやめましょうか?」
男の文字通り急所を、上下に緩急つけてしごきあげる。たまらない。
……やめ……ないで……
声に吐息が混じってきた。
「餡子を?もっと?」
魔女は意地悪く微笑む。

「餡子……だけは……いや!」
童磨の声が弱々しくこだまする。