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まる
2024-11-02 18:02:55
2486文字
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その仮面を奪い取る
鍾タル獣化オンリー「一念化生にいたる病」に掲載した話の再掲です!🔸🐳
詳細は以下のとおり
↓↓↓
鍾離×眷属タルタリヤの話です。
・タルタリヤが鍾離の眷属になってる
・事後です
・甘いです(当社比)
・全部捏造です。なんでも許せる人向け
厳かな天井。蕩けるように柔らかなシーツ。窓の外から聞こえてくる賑やかな鳥の唄声。
馴染みのない、あまりにも長閑な朝の光景に、ぱち、と目を瞬かせた。
未だに回転の悪い思考回路が、異常を感知して慌てて上半身を起こそうとして、途端全身に激痛が駆け抜ける。あっけなくシーツの海に背中からダイブした。
常日頃から己を兵器として磨き上げているにも関わらず、体の節々が痛い。背中も、腰も、何よりありえない場所がありえないくらい痛い。
何故、なんて考えるまでもない。昨晩(というより本朝)の出来事を思えば、当然こうなってもおかしくは、
「公子殿」
「うわあ!?」
思いがけず聞こえた声に、文字通り飛び上がった。視線を前に向ければ、いつもより随分とラフな格好をした鍾離が、きょとん、とした顔で佇んでいた。その手にある盆には鍾離お気に入りの急須と湯呑みが乗っかっている。どうやら朝からわざわざ茶を入れていたらしい。
「どうかしたのか」
「い、いや!何でもないから」
訝しげな視線が突き刺さるが、特にそれ以上の追及もなく、ベッドサイドのテーブルを使っていそいそと茶の準備を始めた。また何時間もかけて準備したのだろうか。
相変わらずマイペースな鍾離とは対照的に、目の前に現れるまで鍾離の気配に気づかないほど動揺している自分が情けない。
けれど仕方のないことだろう。忘れるはずもない。忘れられるわけもない。昨晩俺はあの鍾離と、セックス、をしたのだ。
世界を巻き込んだ天理との戦いから約100年。とある事情により彼の眷属となってしまった俺は、紆余曲折を経て鍾離と恋仲になり、この度晴れて初夜を迎えた。
普段は品行方正を形にしたような、欲なんて全くありませんなんて澄ました顔をしているような、『あの』鍾離が、あんな、あんな。
「
……
」
昨晩のことを思い出してしまい、心なしか喉が乾く。こちらが鍾離の一挙手一投足にどぎまぎしている間に、あれよあれよとなすがまま体を蕩かされて、いつの間にかペロリと頂かれてしまっていた。なんかよくわからないがすごかった、
記憶を反芻するだけで、また熱が燻ってしまいそうだ。あまり効果はないだろうが、少しでも冷めるようにと手で煽いでいると、ふふ、と抑えきれなかった笑い声が聞こえた。
「公子殿」
「?なに」
「角と尻尾が出ている」
「え」
反射的に頭に手を当てると、確かに鍾離の言うとおり、硬い角が頭に顕現している。尻尾も同様で、人の気も知らず真白のシーツをたしたしと叩いている。
通常であれば角も尻尾も隠すことなど容易いのだが、鍾離の眷属として人外に身を堕としてそれなりの時が経っているのに、未だに動揺すると出てきてしまう。
なんとか納めてしまおうと心を落ち着かせていると、ふと角に何かが触れる感触があった。どうやら鍾離が撫でているらしい。
「久しく見ないと思っていたが、愛らしいな」
「な」
にを突然、という言葉は、最後まで形にならなかった。
鍾離らしからぬ歯が浮いてしまうような台詞だったから、というのもある。
けれど、それを口にした時の先生の表情が、何だか愛しいものを愛でる時のような、大事なものを慈しむような、そんな瞳で見てくるもんだから、揶揄うことも惚けることも、ましてや拒絶することなんてできるはずもなく。
「
…
仕方ないだろ。先生が初めてだったんだからさ」
諦めて、素直に本心を吐露することにした。どうせ鍾離にはお見通しだろうし、下手に悪足掻きし面白がらせる必要もない。
「初めての恋人と、初めて夜を共にしたってのに、落ち着けるわけないから」
柄にもなく浮ついているのは自分でもわかっている。しかし、長いこと神様やっていて、文字通り人一倍人生経験を積んでいる誰かさんとは違って、こっちは何もかも初めてなのだ。このくらい許してほしい。
「そりゃあ百戦錬磨の先生にとっては慣れっこかもしれないけど、ちょっとは初心者の俺に合わせてくれてもいいんじゃない?
…
そもそも先生、いくら慣れてるからって茶に勤しむなんて少し薄情じゃ
…
っ!?」
気がつくと、目の前に天井が広がっていた。いや、ベッドに突き飛ばされていた。
突然のことに目を白黒させていると、視界の端から鍾離が覗き込んできた。どうやらベッドに乗り上げてきたようだ。
「
…
誤解があるようだが、こうして共に過ごすのは公子殿が初めてだぞ」
「は?うそ」
「本当だ。こんなことで嘘をついてどうする」
「だってあの岩王帝君だよ!?」
「期待に添えず申し訳ないが、事実だからな。それより」
顔のすぐ横に手を突かれ、鍾離を見上げる体勢になる。室内灯を背にしているせいかその表情が見えない。
「どうやらいろいろと不満があるようだな。それでは仕切り直しといこうか」
見えない、はずなのだが、その瞳が煌々と金色の光を帯びているのがはっきりとわかる。
あれ、これ俺何か間違った?
「あ、あれだけやったのにまだやり足りないわけ?」‘
「愛する恋人と共にいるんだ、当然だろう。それに」
「それに?」
「俺なりに大切にして丁寧に触れていたつもりだったが、どうやらお気に召さなかったようだからな。仕切り直しをさせてほしい。何、安心してくれ。凡人ではあるが、全力で公子殿の要望に応えて見せよう」
ぎらり、と瞳の光が一層強く煌めいた。凡人に似つかわしくない気迫に、畏れにも似た興奮が湧き上がるのを感じる。
結局これも、鍾離の掌の上なのだろうけれど、このままやられっぱなしも癪である。
覗き込んだことで垂れてきた鍾離の髪を軽く引っ張り、その顔を寄せる。虚をついたつもりで大して動揺を誘えなかったのは残念だが、まあいい。
時間はまだ、たっぷりあるのだから。
「
……
お手柔らかに頼むよ、鍾離さん」
ちゅ、と目の前にある唇に自分のそれを重ねる。触れたのは一瞬だけれど、燃えるような熱を感じるには十分過ぎるほどで。
石珀色の瞳孔が形を変える様を間近で見て、思わず笑みを溢したのだった。
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