楓花
2024-11-02 15:23:55
Public GD/真矢うさ 小説
 

Trick yet Treat

ハロウイン小話。
タイッツーに上げたものから、少し修正しています




――うーん、どうしようかなあ。

リレシーを眺めながら、宇崎は考えこんでいた。
開発班発案でハロウインパーティをすることになったことで、今年は自分も仮装する必要が出てきたのだ。
今まではもっぱら見る側だったが、主催側となればそういうわけにもいかない。
だけどいざ自分事となると、どうしていいか分からないもので。
試しに"ハロウイン 仮装”と検索してみたものの、出てきた画像のどれもいまいちピンと来なくて、先程からぐるぐると悩み続けている。

「万尋さん、何にするか決まった?」

ずっと画面ばかり見ていたからか、痺れを切らした真矢が寄ってきた。

「まだ」
「もうそろそろ決めないと時間ないよ?」
「そうなんだよなー」

分かってるけど、何も思いつかないのだから仕方ない。
宇崎は視線を上げると、助けを求めるように真矢を見た。

「真矢は何がいいと思う?」
「うーん……うさぎの着ぐるみとか?」
「それは却下」

ハロウインでうさぎと言えば、苦い思い出が甦る。
いつぞやのハロウインで、お菓子の用意を忘れたためにクロウに取れないうさ耳をつけられたのだ。
あの時の恥ずかしさは相当だった。自らトラウマに触れるようなことはしたくない。

「なら、黒猫は? ハロウインっぽいし」
「耳つけるのはナシだ」
「えー、可愛いと思うのに。――じゃあ、魔法使いはどう?」
「魔法使い? って、どんなのだっけ」

真矢の提案を受けて、再びリレシーで検索してみる。
真矢も宇崎の肩に頭を預けながら、手元を覗きこんだ。
長いマントにとんがり帽子。その中に混じって魔法学校を舞台とした人気映画の衣装まで、沢山の画像がヒットする。

「あぁ、そっか魔法使い。これなら衣装も用意しやすそうだし、確かにいいかも」
「うん。万尋さんにピッタリだと思うよ」
「そう?」
「俺も万尋さんにはずっと魔法かけられてるからね。まさに打って付けだよ」
「なんだよ、魔法って」
「恋の魔法ー」
「何言ってんだ」

宇崎はニコニコ顔で抱きしめてこようとする真矢を押しのけながら、呆れた声を出した。

「それより、お前はもうどうするか決まったのか?」
「まだ決めてないよ。俺もお揃いにしようかな」
「まぁそれでもいいけど、真矢は吸血鬼とかも似合いそうだよな」

想像してふふっと笑う。
すると、

「そう? じゃあそれにする」

宇崎の一言で、真矢はあっさりと決めてしまった。
そんな簡単に決めていいのか。そう声に出しかけたが、それもまた真矢らしいなと思う。

「楽しみだな」
「うん、早く万尋さんの仮装見たいなー」



――そうして、あっという間に時は過ぎ。
ハロウイン当日。



「やっぱ似合うな」

着替え終えた真矢を見て、宇崎は開口一番そんな感想を漏らした。
中世の貴族風衣装の上に長いマント。
元々の顔の良さに加えて後ろで無造作に括った長い髪が、退廃的な雰囲気にあっていてもの凄く目を引く。

「ありがとう。万尋さんも似合ってるよ。可愛い」
「なんかちょっと照れるよな」

こういう仮装なんてしたことないから、気恥ずかしさが先に立つ。
少しだけ浮足立った宇崎を、真矢は優しい眼差しで見つめた。

「そう言えばさ、吸血鬼って確か首筋噛んだ相手に永遠の命を与えられるんだよね?」
「え、そうだっけ?」

唐突な真矢の言葉に、宇崎は小首を傾げて記憶を手繰り寄せた。
血を吸うイメージしかなかったけどな。
でも、確かに昔読んだ漫画や映画にそんな話もあったかもしれない。

「うん、そう。だからさー」

真矢はニンマリと笑うと、バサリと大きくマントを翻しながら一歩距離を詰めてきた。
そのまま宇崎の身体をその胸の中に包み込むと、

「魔法使いさん、俺と永遠を共に生きてくれる?」

そう言って、ゆっくりと傾きながら真矢の顔が近づいてくる。
息を呑んだ宇崎は、驚きながらも頬を染めて瞳を閉じた。
しかし予想に反して唇は塞がれることなく。代わりにガブリと首筋を噛まれる感覚に、慌てて目を開く。

えっ、と困惑する声。
それに構うことなく、そのままチュウチュウと首筋を吸い始める真矢。
やがてハッと我に返った宇崎は、慌てて真矢を押しのけた。

「おっまえ……何すんだーーーー!!!!!」

直後、超特大の怒号が響き渡る。
その中で、真矢は宇崎の首筋に残った痕を満面の笑みで眺めていた。
それはさながら、悪戯が成功した子供のような満足げな表情だった。



Trick yet Treat.
(お菓子はいいから悪戯させて)