楓花
2024-11-02 13:50:14
Public GD/真矢うさ 小説
 

推し活(ファンサ)




「あ、ちょっとコンビニ寄っていい?」

店の前を通りがかった時、突然引き留めるように服の袖を引っぱられた。
いいよと頷いて店内に入ると、万尋さんは真っ先にお菓子コーナーへと向かう。
そして何やら棚の上をちらりと見ると、すぐに同じ商品を次々と手に取っていった。

(ハロウイン用かな?)

後ろをついて見ていると、

1.2.3.4……
6個目のお菓子に手が伸びたところで、俺は思わず「そんなに買うの?」と声をかけた。

「対象商品3個でクリアファイル1つ貰えるんだ」
……クリアファイル?」

言われて棚上を見てみれば、確かにクリアファイルが置かれてある。
しかし、

(誰?)

まったく知らない大人数の男性グループ。

「万尋さん、この人達のこと好きなの?」
「妹が好きなんだよ。見つけたらゲットしといてって言われてて」
「へー」
「人気だから結構無くなってるとこ多いみたいなんだよな。あって良かったー」

そんなに人気なんだ。
知らなかったな、とまじまじと眺めていると、

「格好良いよなー」

万尋さんはそう言いながら嬉しそうにクリアファイルを全種類ひとつづつ取っていった。
見つけられてホッとしたのか、その表情は凄く嬉しそうだ。

「前にライブに付き合わされたことあるんだけど、凄い良かったんだよ」
「へー」
「歌もダンスもめちゃくちゃ上手くてさー」
「ふーん」
「途中で客席に降りてきて目の前まで来て、それで投げキッスとかされて。あれはちょっと恥ずかしかったなー」
……

少し頬を紅潮させながら、楽しそうに語る万尋さん。
その顔はキラキラしてて、凄く可愛い。可愛いんだけど――

「万尋さん」
「ん?」

腰を少し屈めて急にずいっと顔を近づけた俺に、怯んだように万尋さんが引いた。
そんな万尋さんに視線を合わせると、俺はニッコリ微笑んで至近距離からちゅっと軽く投げキッスをする。ついでにウインクもひとつ。

「ファンサぐらい、いつでもするから俺だけ見ててよ」

そう言うと、万尋さんは一瞬呆気にとられたような表情を見せたあと、ボッと顔中が真っ赤に染まった。
そして、

「誰がファンだよ!!」

プルプルと震える万尋さんの怒号が店内中に響き渡る。
俺はそれに微笑みながら、(怒るとこ、そこなんだ)と心の中で密かなツッコミを入れたのだった。