三毛田
2024-11-01 21:40:43
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98 08. 他に何もいらないから

98日目 君さえいればそれで

 彼が幸せになれるのであれば、俺の命だって差し出すのは惜しくない。
 俺の手で幸せにしたいというのが本音だが、叶わなくても悔いはなく。
 丹恒が幸せであるのならば、他に何もいらない。と、胸を歯って言えたらいいのに。
 今の俺にはちょっとだけ勇気が足りない。
「俺の幸せに、穹は必要不可欠だ」
 漫画を読んでいた手が止まる。
 コンソールを操作していた丹恒は、手を止めてこちらへ向き直り。
「えっと、急にどうしたんだ?」
 焦った。
 俺の密かな願い事がバレたのかと思ったけど、そうじゃいみたいでホッとする。
「ふとそう思ったんだ。今までは自分が幸せになる未来は描けなかった。でも、お前と出会ったことで、少しだけ前向きに考えられるようになって。だからこそ、お前が、穹がいないと意味がないと」
 アーカイブ端末の電源を切ったというか、スリープモードにして俺の前まで来て。
「穹、好きだ。お前が俺に未来へと進むための勇気をくれた」
 押し倒された。
 ドッドッドッと、心臓がうるさくて。
 服の上からでもわかるほど俺より低い温度の指が、胸を撫でて。それから、そこに顔を寄せてくる。
 もしかして、これって夢? でも、俺の胸に顔を寄せている丹恒は、きちんと存在している。
「だ、抱きしめても?」
「好きにしていい」
 恐る恐る背中に腕を回して抱きしめ。
 背中側から、鼓動が伝わってくる。丹恒も緊張してるんだ。
「それで、穹。答えは?」
 むに。と、想像よりも柔らかな頬を俺の胸に押し付けて。
「可愛い」
 そんな言葉が、自然と口から出た。
「穹」
 不満そうな声と表情。
「俺も丹恒が好き」
 抱きしめて、髪を撫でると嬉しそうに目を細め。
「キスをしたい」
「もう!?」
「恋人になったのならば、すぐするものじゃないのか」
 不思議そうな表情で、少しだけ胸から顔を上げながら。
「わかったよ。キスしよう」
 俺の言葉に、嬉しそうに目を輝かせ。
「ぐえっ」
 顔を固定されて、キスされる。首が変な音を立てたけど、気にしてなそうだ。ちょっと気にして。あなたの恋人ですよ。
 まあ、唇が柔らかくて、俺も悪い気はしなかったから許してあげる。
「幸せだ」
 ふふ。と嬉しそうに笑い。でも、俺の上から退くつもりはないらしい。
 重いとは思わないでも、胸の上から動いて首元に顔を埋めるのは正直止めて欲しいと思う。
「丹恒、思ってるより俺のこと好きじゃん」
「知らなかったか?」
「知らなかった。嬉しいけどね」
 抱きしめると、頬ずりしてくる。
 これだと、猫じゃん。