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みずあめ
2024-11-01 17:38:21
2708文字
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brmy
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神麗
ハロウィンいちゃいちゃ
ハロウィンの渋谷なんかぜってー行かねー。その日はシフト休みにしてある。
俺の仕事の後、麗の仕事の前にちょっとだけ会えない?と聞いた俺に、麗はそう答えた。
なんて好都合なんだろう。そう思った内心は顔に出さず、それじゃあ仕事が終わった後で麗の部屋遊びに行ってもいい?と聞いてみる。断られても無理矢理に理由付けをして絶対に行こうと思っていた俺は、ちょっとの間の後「おまえだけなら」と言った麗に思わず目を見開いて「いいの?」と聞き返してしまった。
「よかねーよ。けどわざわざうるさい外に出るよりおまえがこっち来る方がマシ」
「
……
ありがとう、麗。それじゃあ仕事終わったら連絡するね。食べたいものあったら買っていくからそれまでに考えておいて」
「別に何もいらねえ」
会うこと自体を嫌がられることが、うんと減った。むしろ麗も俺との時間を作ろうとしてくれている気がする。
今までなら「なんでわざわざ会いに来るんだよ」くらいの言葉は当然のように出てきていたのに、「俺が麗に会いたいからだよ」って何度も伝えていたらその文句は言われなくなった。たぶん、俺にそう言われると麗は照れちゃうから、だったら最初から言わないってことにしたんだと思う。麗に会いたいんだよって、何回でも伝えたいのにな。
いつもより賑やかではちゃめちゃなハロウィンの営業を終え、打ち上げ飲みを今日だけは断ってまっすぐ麗のところへ向かった。ワクワクする気持ちでインターホンを押し、駆け出してしまいそうなのを抑えて足踏みをする。扉を開けた麗はいつも通りむすっとしてたけど俺が「ただいま!」と元気に言うと目を丸くして、ちょっと笑いながら「おまえの家じゃねえよ」と言い返してくれた。
部屋の中に入った俺は両手に持った袋を麗に差し出した。片方には事務所にみんなが持ち寄ったお菓子の中から麗が食べられそうなものを選んで入れてきて、もう片方には打ち上げで食べる用に多めに用意されていた食事を持っていきなと言われてタッパーに入れてきたのが入っていた。
「なにこれ」
「みんなが麗にって。ここ、お祭りごとが好きな人が多いよな。今日の店とかすごかったよ」
「
……
うるさそ」
「あはは! でもめっちゃ楽しかったよ。麗も来ればよかったのに」
「誰が行くか。外もうるせえのに中もうるせえのかよ。バカばっかだな」
「もーそんなこと言って。
……
あ、そうだ、麗」
「あ?」
キッチンに食べ物を置いて、二人分のお茶をテーブルに並べて、麗がソファーに体を沈めたところで俺は緩む口角を誤魔化すことなくその正面にしゃがみ込んで麗を見上げた。綺麗な丸い瞳に、俺だけが映ってるのが好き。
「トリックオアトリート」
にっこり笑ってそう言うと、麗は数秒固まった後、チッと舌打ちをして立ち上がり俺を押し退けてキッチンへ向かった。俺もすぐに立ち上がりその後を追いかける。
「さっき俺が持ってきたお菓子はナシだよ」
「うるせ。
……
ん」
冷蔵庫を開けて何かを取り出した麗はぶっきらぼうにそれを掴んだ手を俺の胸の前に突きつけた。まさか、なにか用意してくれてたの? 驚いて両手で受け取ったのは手のひらに乗るくらいの紙袋。開けていい?と聞くと麗はそっぽを向いたまま好きにしろと呟いた。
「なんだろう
……
あ、え、
……
ドーナツ、だ」
「わざわざハロウィンに会いたいなんて、どう考えてもくだらないこと言ってくるって分かりやすすぎんだよ」
「
……
わざわざドーナツ買ってきてくれたの?」
「近く通ったからついでに買っただけだわ。勘違いすんな」
「だって」
だって、今日はハロウィンで、渋谷の街は一日中お祭り騒ぎで、麗はきっと家から一歩も出ないんだろうと思っていた。近くを通ったなんて、嘘でしょう。お菓子ならなんでもいいのに、俺の好きなドーナツを用意してくれていたんだ。
「
……
麗〜!」
「っ!? 飛びつくなアホ!」
「ありがとう麗。すっごい嬉しい」
「あーハイハイ、よかったな。早く離れろ」
「麗は言わないの?」
「は? なにを?」
「トリックオアトリート。まあ言われたとしても、俺は事務所からもらってきたお菓子しかないんだけど。それでいい?」
「
……
おまえがさっきそれはナシっつったんだろ」
「でも俺が持ってきたわけだし」
「自分で用意してねえくせに」
「そうだけど。
……
それで? 麗は言うの?」
抱きしめた腕の中で俯く麗の髪を耳にかけた。顔を覗き込めばチラッと視線を上げた麗と目が合う。調子乗んなって怒ってよ。じゃないと俺、麗にいっぱい甘えちゃうよ。
「
……
トリック、オア、トリート」
「ごめんね、お菓子ない」
「
……
くそ」
小さく呟いたあと、麗は舌打ちをして俺の服の胸元をぎゅっと掴んだ。引き寄せられて数センチ近づいた俺の顔に麗の顔が近づいてくる。目を見開いた俺を見つめたまま麗は俺たちの距離をゼロにして、キス、ではなく、俺の鼻の頭をがぶっと噛んだ。「えっ!?」と声を上げた俺を見てニヤリと笑う麗が可愛くて、噛まれた鼻が痛くて、心臓がすっごくドキドキしてる。
「これで満足かよ浮かれ野郎。ハロウィンなんてクソどうでもいいもんに付き合わせやがって」
「
……
キスされると思ったのに」
「ハッ、お菓子がなけりゃイタズラなんだろ」
「
……
麗、トリックオアトリート」
「あ? さっきやっただろうが」
「うん。もうお菓子持ってないよね?」
「あるわけねえだろ」
「じゃあイタズラだ」
「は!?」
すぐに逃げようとした麗を俺が逃がすわけなんてなくて、キッチンの隅に追いやって壁と俺の腕の間に閉じ込めた。俺の影の中でキッと睨んでくるけれどそれがいつもの怒ってるだけの瞳じゃないこと、俺には分かっちゃうんだよ。
「イタズラ、なにがいい?」
「
……
なんもすんな」
「それじゃイタズラにならないじゃん」
「お菓子はもうやっただろうが!」
「一回しか言っちゃダメなんてルール聞いたことないよ」
「
……
じゃあこっちだってもう一回言ってもいいんだな?」
「うん。次はどんなイタズラしてくれるの?」
「っ、
……
ざけんな、オレばっか損してんじゃねえか」
「そう? 麗も楽しいでしょ?」
「ねえわ、ボケ
……
!」
「ふ」
どうしてこんなに可愛いんだろう。睨みつけてくる瞳を見つめたまま、俺は背中を丸めて麗の唇にちゅっとキスをした。避けないし押し退けないんだもん、つまり、そういうことでしょ?
もう一度優しく唇を重ねて、麗がそっと顎を上げたのを合図に舌を伸ばす。麗とのキスは痺れるくらい甘くて気持ちいい。今年のハロウィンはお菓子とイタズラ、両方とも俺のものみたいだ。
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