toko-honey
2024-01-08 14:46:49
2200文字
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恋人のいる生活2【相談】

レオン×タクミ。お試しで付き合うレオタクのお話。1日1話の連載で全7話です。
Japanese Only
#leokumiweek2024

 タクミの人生で初めての恋人ができた。本物ではない。そういう設定にしてみようかと話し合って、タクミはレオンと仮の恋人同士になった。ついさっきのことだ。
「付き合うことにするっていうのはいいけど、具体的にはどんなことをするんだ」
 提案に乗った後、タクミはレオンに質問した。
 色恋沙汰は意図的に避けてきたから薄い知識しかない。かわいい女の子と手を繋いだりするくらいしか思いつかなかった。実際に目の前にいるのは、かわいいという評価を手放しで下すにはやや抵抗のある同年代の男だ。顔が綺麗なのだけは間違いないが。
「具体的、ね。本物の恋人同士ならキスしたりするけど」
「冗談だよな」
「冗談だよ」
 タクミが眉を寄せると、レオンは笑顔でそう言った。
「タクミ王子は恋人としてみたいことはないの」
「手を繋ぐとか、かな」
 彼と握手したばかりの右手を見る。握手は手を繋ぐうちに入るのだろうか。
「他には?」
 うーんと考えてみる。こうしたいとかああしたいとかいう希望がぱっと出てこない。恋人を作ろうという発想そのものがなかったのだ。手を繋ぐのだって、恋人同士と聞いて連想しただけのものだ。特にしたいというわけではない。
「駄目だ。全然出てこない」
「恋愛初心者ってわけだね」
 馬鹿にしたような物言いだったが反論する気は起きなかった。経験値も知識もないせいでほんのりとしたイメージしか持っていないのは事実だ。
「あ、そういえば僕、巡回の途中だったんだ」
 仕事の途中だったことを不意に思い出す。この後巡回の結果をカムイに報告しなければならない。異常はなかったけれど、それならそうと伝えなければ。あまりゆっくり話している時間はなさそうだった。
「僕行かなくちゃ。相談はまた今度……、と言っても、いい考えが浮かぶか怪しいけど」
「まあいいよ、僕に任せなよ。どんなことをするか考えておくよ」
 頼んだよ、と言ってレオンと別れ、タクミは巡回の続きに戻った。
 付き合うといったって、ここは戦争のための拠点だし、特別面白いものがあるわけでもない。それにしばらくは戦いの準備を整えるのに時間を取られる。実際にレオンと何かをするのは数日後になるだろう。それまでに、じっくり考えてみようと思った。

 それから数日経った朝、食堂で朝食を食べ終わったころにレオンが話しかけてきた。
「少し外を歩かないか。この前の相談事の続きをしたいんだ」
 ああ、と承知してタクミはレオンと連れ立って表に出た。人が少ないところを求めて城壁の上に移動する。並んで通路を歩きながらレオンが尋ねてきた。
「恋人としてみたいこと、あれから何か思いついた?」
 タクミは首を横に振った。
「本を読むとか弓の稽古をするくらいしか思いつかなくて。でもこれって、一緒にしたいことっていうより、僕がしたいことだよな。相手が楽しんでくれなきゃ意味ないんじゃないかと思って。そうすると一人じゃ全然思いつかないんだ」
「結構真面目に考えたんだね」
 感心したように言われる。
「恋愛っていっても、対人関係には変わりないだろ。相手がある以上、独りよがりじゃ意味がないと思ったんだ」
「正しいね。じゃあまずは相談しようか、どんなことをするか」
 レオンが立ち止まったのでタクミもその隣に立った。
「まずは一緒に夕食を食べようか」
「夕食? 食堂で?」
「うん、隣に座って一緒に食べるんだ。それから、その後は僕の部屋に来ないか」
「わかった。でも部屋で二人で何するんだ。戦略を練ったりとか?」
「そういうのもいいけど、チェスはどう? エリーゼが一式持ってきてるんだ。一緒に遊ばないか。息抜きしようよ」
「チェスってあの、暗夜の盤上遊戯?」
「そう、それ。白夜の将棋っていうのに似てるんだろう? 君も楽しめると思う」
 食堂で一緒に食事をして、部屋でチェス。レオンの提案したプランは思ったよりも普通だった。なんだか拍子抜けする。彼と一緒に食事をするのも、彼の部屋に入るのも、すでに経験済みだ。チェスをするのは初めてだから楽しみには違いないが、別に恋人になったからといってわざわざするようなこととも思えない。
「チェスは嫌かい?」
 返事をしないタクミにレオンが尋ねてきた。
「あ、ううん。そうじゃないんだ。チェスは楽しそうだと思う。ぜひ教えて欲しい。でもそれってさ、友達のままでもできることだよね。恋人らしい付き合いなのかなって、考えちゃって」
「恋人らしいって、どこかにデートに出かけるとか?」
 デートという単語を聞いて胸の辺りがじわっと熱くなる。デート。まさに恋人同士にふさわしい響きだった。タクミがしたことのないもの。できないと思っていたものだ。
「そう、そういうの。例えば……、湖畔にお弁当を食べに行くとか」
 カミラに誘われたことを思い出す。あのときは特に考えずに一緒に出かけたが、もしあれが恋人同士で行ったのならば立派なデートといえるだろう。
「なんだ、やりたいことあるんじゃないか」
「べっ、別にそういうわけじゃ」
「いずれそういうのもやってみようか。どこに出かけるか考えなきゃね。ひとまず今日は拠点内デートでいいかな」
「う、うん」
 そうか、デートって拠点内でもできるんだ。
 思わず感心したが、口に出したら笑われそうだったのでうなずくだけにした。