岬ロカ
2024-11-01 00:01:43
1669文字
Public 設定紹介
 

〈詩人の民〉とは

『群青のミンネザング』における随一(というか唯一)のファンタジー要素である〈詩人の民〉についての設定解説。

1)詩人の民とは?
不思議な「うた」の力を操る人々。古い時代には数多くいたが、時とともに減っていった。遺伝によって誕生することもあれば、突然変異的に生まれることもある。
この〈詩人の民〉のモチーフはノヴァーリスの『青い花』(原題 "Heinrich von Ofterdingen")をはじめとする19世紀のロマン主義の詩人たちがあこがれた古き時代の「詩人」のイメージを、ローファンタジーの要素として取り込んだもの。
例えば、岩波文庫版の『青い花』(青山隆夫訳、1989年)には以下のような「詩人」についての記述が出てくる(pp44-45)。

*「この人たちは、不思議な楽器で妙なる調べをかなでながら、森の神秘の生命である木の幹にひそむ精霊の目をさまさせ、荒れてさびれた地方では、枯れた草木の種に活力を与えて花の咲きみだれる庭園を生みだし、牙をむく野獣をならし、野蛮な人々に秩序と礼儀をおしえ、争いを好まぬ心と平和に暮す術を身につけさせ、さかまく急流をしずかな流れにかえ、心をもたぬ岩石さえも規則正しいリズムに乗って踊らせたものでした。」*

*「人間よりいちだんと高い精霊までも、詩人の魔法のわざに誘われるまま、地上へおりてきては、詩人に未来の秘密を教えたり、あらゆる物事の釣り合いやあるべき配置、さらに数字、植物、もろもろの生物の内にひそむ効能と治癒力の秘密を漏らしたりするので、詩人は予言者であると同時に司祭、立法者であり、また医者でもありましたとか。」*

*「ただ奇妙なことに、この慈しみ深い人たちがかつて存在したことは確かなのに、詩人のわざの方がすたれてしまったのか、それとも自然の方があのやさしい感受性を失ってしまったのか、今となってはその思い出の美しい名残りだけになったのだそうです。」*

現代にまで残る〈詩人の民〉のわずかな末裔とは、すなわち遺伝あるいは突然変異によって古代の不思議な種族への〝先祖返り〟または逆行的な〝進化〟を遂げた人々といえるかもしれない。


2)詩人の民の「力」
彼らの力は「音階」と「ことば」=「詩」によって媒介される。その及ぶ範囲は自然(動物・植物・鉱物)そして人間の精神(あるいは神経)に限られる。
しかしながら特に強い力を持つ者であれば、「音」によって生じた空気の振動を操ることで、生命を持たぬ物体に働きかけることもできるかもしれない。


3)詩人の民の『おさ』たち
〈詩人の民〉には、特に強い力を持つ三人の『長』が存在する。その力は、美しいうたによって聴く者を魅了する〈詩人の民〉たちの中でもとりわけ高次にあり、ほとんど魔法にも等しいと思われるほどの威力を発揮する(ただし、あくまで上記の範囲内ではある)。
彼らは常に代替わりを繰り返し、ある時代の長が亡くなれば、どこかで必ずその後継者が生まれる。『長』自身の意志で別の誰かに引き継ぐこともできるらしい。
三人の『長』はそれぞれ世界の三大洋(太平洋・大西洋・インド洋)がもとになった称号で呼ばれている。これは「発見の時代」(いわゆる大航海時代)のブリタニアの詩人が、彼らを称える詩を三大洋になぞらえてうたったことに由来する。
その三つの称号とは、以下の通り。

①〈パシフィウス〉あるいは〈パシフィア〉
最高・最大の力を持つ、詩人の民の『長の中の長』。男性の場合はパシフィウス、女性ならパシフィアと呼ばれる。
黄金の髪と碧色の瞳を持ち、「調和」「太陽」「海」がその象徴。

②〈アトラス〉
『長』の一人で、必ず男性。白銀色の髪と燃えるような赤い瞳が目印。
「力」「男性性」「大地」の象徴。

③〈インディアナ〉
『長』の一人で、必ず女性。漆黒の髪と瞳の持ち主。
「風」「女性性」「月」がその象徴。

上記のような三人の容姿(主に髪や瞳の色)については、『長』として生まれる者は先天的にこれらの特徴を持ち、また先代の意志によって後天的にそれを受け継いだ者はその時点で同様のものに変化すると言われる。