三毛田
2024-10-31 20:32:00
1060文字
Public 1000字
 

97 07. 考えるよりも先に

97日目 体が動いていた

 考えるよりも先にとっさに手が出て、彼が怪我をしないように庇う。
 彼の存在が列車にとって貴重な財産であると同時に、俺にとってもかけがえのない大切な人になりつつあって。
 ならば、己よりも優先すべきだと。
「あの時受け止めてくれた丹恒の胸、すごく柔らかかった……いてっ」
 体をくねらせうっとりしながら言うので、思わず頭を叩いてしまったが、仕方ないだろう。
 ほら、他の人の視線も鋭く冷たくなってしまったじゃないか。
「恥ずかしくないの?」
「俺は別に」
「俺に触りながら言うな」
「いけず〜」
 腰に腕を回しながら言うから、冷たくあしらって腕を外させる。
 何やってるんだコイツら。みたいな視線とため息が、地味に突き刺さって。
 俺が悪いわけではないのに。と、一人明るい穹を睨みつけるも、どこ吹く風。
「あ。丹恒でもそんな顔するんだ〜。へぶっ」
「ぶふっ」
「くふっ。こほん。失礼したわ」
 足払いをし、前のめりになったところで頭に肘を入れる。あっさりと地面に沈んだ穹に、寒鴉と御空はこらえきれなかったようで吹き出し。
 二人とも恥ずかしそうにしていたが、彼女たちがそうなったもの、全部穹のせいだ。
「こいつは放っておいていいです」
「うん。そうする。それで、あなたたちには数回に分けて他の囚人が脱走していないかを、確認して欲しい。いたらすぐに玉兆で連絡して。襲ってきたら、殺さない程度に無力化を」
「わかった。御空からは」
「今のところは大丈夫よ。ごめんなさい。せっかくの観光中なのに呼び出して」
「いえ。同盟を組んでるので、これくらいなら」
「そうそう! なのは今手が離せないから、俺たちがやらないと。姫子とヴェルトに怒られちゃう」
 起き上がった穹は、今度は肩に腕を回して。
「気にするなら、今日のご飯代請求してもいい?」
「穹」
「それくらいならお安い御用よ。請求書を回してちょうだい」
「十王司でも負担するから、こっちにも好きなだけ回して」
「じゃあ、お言葉に甘えて。不審物も見つけたら、連絡するから!」
 俺の手を掴むと、元気に歩き出して。
「穹」
「丹恒、少しは緊張解れた?」
「気づいていたのか」
 気づかれないと思っていたのに。
「丹恒に触れればわかるから」
「そうだとしても、あの触れ方は」
「ちょっとふざけていた方が、他の人にもバレないかなって」
……
「ごめんって。ああいう触れ方は、ベッドの上だけにするから」
「別に怒ってはいないが」
「本当?」
「本当だ」
「それなら、よかった」