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雪成はす子
2024-10-31 19:56:54
2985文字
Public
🐧🐬
グラブジャムンの夢に溺れて
🐧🐬🔞
現パロ、獏(夢を食べる怪異)が見た🐧🐬の夢の話
付き合ってませんが両片思いな感じ。コメディです
『うんめぇ~ペンギン、おかわり!!』
『分かってるよ。ほんと食いしん坊だなぁシャチは』
『ありがと!ペンギン大好き!!』
『ああ、俺も大好きだよ、シャチ』
もぐもぐとご飯を食べながら幸せそうに笑う赤毛のお兄さんと、その赤毛のお兄さんに大盛りのご飯をよそう帽子を目深に被ったお兄さん。
見るからに幸せそうな様子のその二人を、おれは『外』からじっと眺めていた。
久しぶりにこんな幸せそうな夢を見たなぁ、とおれは独り言ちる。
そう、おれは夢を食べて生きる『獏』だ。人の夢をほんの少しだけ覗いて、その人の夢をほんの少しだけ食べる。
目が覚めた瞬間にそれまで見ていた夢を忘れたりするのはおれの仕業だ。人間の命を喰らうやつもいるが、おれ達『獏』はそんな野蛮な事はしない。
ほんの少し、ほんの少しだけ夢を食べる。それだけの生き物だ。
―――
それにしても、本当に美味しそうに食べるなぁ。
赤毛のお兄さんはあつあつに蕩けたチーズがたっぷり乗ったピザを頬張り、みょーんとチーズを伸ばしている。はふはふと頬張りながら、その顔のなんと幸せな事か。
幸せな夢は、食べるこっちも幸せになるから好きだ。最近はやれリストラされたおじさんの悪夢やら彼氏を友人に取られた女の怨嗟に満ちた夢やらが続いてちょっと胸焼けがしていたのだ。
でもこのお兄さんの夢ならきっと、暫くぶりに満腹になれるかもしれない。
おれはぱん、と両手を合わせ、それから赤毛のお兄さんをちらりと見やる。
こんなに幸せな夢を見せてくれて有難う、と感謝と敬意を込めて。
「いただきます」
大学での講義中に、うつらうつらと船を漕いでいるシャチが気になった。
「シャチ、寝不足か?」
「ううん、寝不足じゃあねえんだけど
……
何だろ、頭がぼうっとするかも」
サングラスの奥の瞳は何処か虚ろだ。今日の講義はもう休んだ方がいいと言えば、シャチはぼんやりしながらもこくんと頷いた。
シャチの事が気になって、俺も午後の講義は休講する事にした。シャチのアパートまでシャチを送り、ベッドまで運んでやる。とろとろと目蓋が下りて、ほっと一息ついた、その時。
「そういえば
……
今日、凄く幸せな夢見てた筈なんだよね
……
」
「憶えてないのか?」
「なんか、起きたら忘れてて
……
よくある事なのに、なんか、今日はやたらその事が寂しかったなって」
「
……
そっか。じゃあ、シャチが今度こそ幸せな夢が見れるよう、おまじないしよっか」
ちゅ、と額に、それから目蓋に口付ける。ふにゃふにゃと笑うシャチはやっぱり可愛い。
「それじゃあシャチ、おやすみ」
昨晩はついつい食べ過ぎてしまった。
赤毛のお兄さんの夢があまりにも美味しくて、いつもは色んな人からちょっとずつ食べるようにしているのについつい食が進んですっかり食べきってしまった。
しまった、と思った時にはもう遅かった。
ほんの少し夢を食べるのはともかく、全部食べてしまうのはマナー違反だ。少しだけなら人間の体には影響は無いが、全部食べたらその人間は数日は倦怠感に苛まれる事になる。
そうなってしまうのはいけない事だって分かっているのに、それでもあのお兄さんの夢が美味しすぎて手が止まらなかった。あんなにも幸福に包まれた夢は久々で、一口食べた時のあの幸福感は暫く忘れられそうもない。また食べたいと思っていたのだが、あの様子では暫く夢は見ないだろう。食べ過ぎれば夢は枯渇してしまう、だから食べ過ぎないようにしていたのに。
赤毛のお兄さんがまた夢を見れるようになるまで、およそ一か月って所か。なら、一月後くらいにまたあのお兄さんの夢を食べに行こう。おれはそう決めた。
「となると今日はどうしよう
……
この帽子のお兄さんの夢にしようかな」
あの赤毛のお兄さんの夢にも出ていた、『PENGUIN』と書かれた帽子を被ったお兄さん。あの人の夢と、あともう二、三人ほどの夢を今日は食べさせて貰おう。
おれは帽子のお兄さんの寝室を覗き、夢を覗いた。
『あン
……
ペンギン、きもちいい
……
』
『気持ちいいか?シャチは乳首弱いもんなぁ』
『うん
……
ちくび、きもちぃ
……
やぁんっ♡』
…………
えっ????
待ってごめんちょっと待ってこれどうなってんの!?
あの赤毛のお兄さんが、帽子のお兄さんに組み敷かれて甘い声で啼いている。
乳首を指で摘まれ、弾かれてお兄さんの乳首はぷっくりと腫れ上がっていた。
赤毛のお兄さんが、うるうるとした瞳で帽子のお兄さんを見上げている。
……
ってちょっと待って。サングラスはかけていたけどあの赤毛のお兄さんこんなに目が大きくなかったよね。というか少女漫画みたいにキラキラのフィルターかかってるんだけど、帽子のお兄さんから見たらあの赤毛のお兄さんはこう見えてるって事????
体の方はちゃんと赤毛のお兄さんそのままに、しっかりと筋肉の盛り上がった逞しい体つきだ。でも顔の方がちょっと少女漫画みたいなエフェクトが掛かってなんかやたら睫毛長かったりしてる。いやアンバランス過ぎない?と思わず突っ込んでしまう。
帽子のお兄さんが舌で腹筋を辿ると、赤毛のお兄さんの体がびくびくと跳ねる。
ボトムを剥かれ、赤毛のお兄さんはいよいよ全裸になった。しっかりと感じている証拠とばかりに赤毛のお兄さんの立派なモノがぴんと反り返っている。
……
ごめん、やっぱり突っ込んでいい?というか突っ込まずにいられないんだけど。
あの、大きさは充分に立派なのにすんごいベビーピンクなんだけど。いや待って赤毛のお兄さんあんな風に思われてるの?うーんちょっと可哀想。しかもすんごいツヤテカしてるんだけどグロスかなんか塗ってあるの???
よくよく見たらぷっくりと膨れたお兄さんの乳首もベビーピンクだった。仮にも成人済みのお兄さんなのに、まるで生まれたての赤ちゃんみたいな色してる。まさかその時からお兄さんの乳首に関する情報が刷新されてないなんて事
……
ないよね?ないよな?
おれの混乱を他所に夢はそのまま進んでいて、赤毛のお兄さんは帽子のお兄さんに激しく揺さぶられてやぁんやぁんと啼いている。いやAVみたいな喘ぎ方だな!あの生まれたての乳首といいさてはまだ手を出していないな!?しかも所々あり得ない所も多いし、お兄さん絶対童貞じゃん。なのにこんな解像度の高い夢を産出してるの???童貞の妄想力凄すぎない???
……
駄目だ。多分これ以上は手を出してはいけない奴だ。というかこれ食べたら絶対胸焼けするわ。
おれはかぶりを振り、お兄さんの夢を閉じた。これ以上はあまりにも、あまりにも目に毒だ。
食べなくても分かる。甘ったるすぎて胸焼けする味だ。世界一甘いスイーツを食べる悪夢を見た人の夢を食べた時にも感じたあの甘ったるさ。この夢はきっと、あの夢を凌駕するくらい甘いに違いない。
仕方ない、次の得物を探そう
―――
そう思いながら立ち去ろうとした、その時。
「待てよ」
不意にかけられた制止の声に、おれは思わず立ち止まる。
振り返った先では、先程まで眠っていたお兄さんがじっとこちらを見ていた。
人間には見えない筈のおれの姿をはっきりと捉え
―――
にっこりと、それは綺麗な笑顔をこちらに向けたのだった。
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