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kaede
2024-10-31 12:07:34
3406文字
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ハロウィンにはお菓子もほしいし悪戯もしたいと言い出した一彩くんに翻弄される燐音くんのはなし
天城兄弟(燐一未満)
⚠️かっこいい燐音くんはいません
⚠️勢いだけで書いたのでまとまりがまったくないですがご容赦ください
「兄さん、今年のハロウィンはお菓子もほしいし悪戯もしたいのだけど、いいかな」
「あ?」
「だから、今年のハロウィンはお菓子もほしいけど悪戯も」
「いや聞こえてっから」
そんなでかい声で言われて聞こえねェわけねェだろ見てみろ周りをここは共有ルームなンだぞみんな一斉にこっちに注目してやがるじゃねェか。
と頭の中では息継ぎなしで一息で言いは(正確に言うなら思考)したが、あんまりにも文字数が多かったせいか出力の途中で詰まって何も出てこない。全然関係ない五十音の最初の一文字目が押し潰されて飛び出ただけだ。いや、単に聞き間違いであれと無駄な足掻きをしただけなのかもしれない。本当に悪手だった。返って現実だとより強く認識させられただけじゃねェか。
別にそれが、嫌ってことは全然ないンだけどよ。むしろまァ、その、なんだ。アレだよ。
……
嬉しいよ。自己主張が苦手以前に、そうすることに何の意味も見出していなかった愛する弟が、自分がしたいことをはっきり表明したんだからよ。しかも、俺からお菓子がほしい、とかわいい要求までしてきた。これが嬉しくないお兄ちゃんがいるわけねェだろ。
嬉しい。嬉しいよ、一彩。
でもな、いくら好物でもいきなり口に押し込まれたらびっくりして咽せるだろ。それと同じだ。
だから、お前の気持ちはわかったから、言うなとは言わねェから、とにかく場所はわきまえような。お兄ちゃんは周りのやつらの生暖かい視線に耐えられねェよ。これならまだうっすら敬遠されてる方が気が楽ってもんだ。つーか最初はそうだったろてめェら。いつからそんな、仲良きことは美しきかな、なんて目で俺っちたちを見る
……
見守るようになったンだ。
「兄さん? もしかしてわかりにくかったかな? つまり兄さんと僕でお菓子と悪戯を等価交換しようという話なんだけど」
むしろわかりづらいだろ。
あー
……
。
……
結局こうなるんだよな。
「
……
わかった」
一彩の頭に置いた手をぽんぽん弾ませる。
「お兄ちゃん、とびっきりのお菓子を用意しとくからよ。おめェの悪戯、楽しみにしてるぜ」
自分の顔が緩みまくってる自覚はあったし、できればこんな顔、弟以外には見せたくなかったが、今の俺はもはや愛する弟のお兄ちゃんでしかないのだから仕方がない。
弟のお願いと俺のプライド、どっちが重要なのかなんて天秤に乗せるまでもねェだろ。
一彩の顔が、ぱぁっという効果音が聞こえないのがおかしいくらいに眩しく輝く。
「ありがとう、兄さん!」
弟にこんな天使みたいな顔されて、それでも通せる意地なんて俺にはねェよ。
「おうよ」
という俺の応答も待たずに飛びついてくる一彩を、しっかり抱き止める。
おいやめろおめェら、これくらいでどよめくンじゃねェよ。こんなの兄弟なら普通だろ、普通。どうやらおめェらは俺が弟を溺愛してるって勘違いしてるみてェだが、こんなの溺愛のうちに入らねェんだよ。
全方位どこから見ても染みひとつない美しい兄弟愛だろ。
あんまりにもかわいい弟のもちもちほっぺにうっかりキスのひとつでもしたくなるのも、広義の兄弟愛だろ。いやまァ、面倒なことになるのは目に見えてるからしねェけどよ。
俺は弟とは違ってわきまえられる人間なんだよ。
とまあそんなことがあって、そんなこんなでハロウィン当日。
「兄さん! トリック・オア・トリート!」
「あ? お、おォ
……
」
ここで?
すでに周りの視線が集中しつつある共有ルームのど真ん中で何の前振りもなくお菓子を要求する一彩に、内心頭を抱えはしたが。
約束は約束だ。
ここじゃなくてもいいだろ、だの、できれば二人きりの場所がよかった、だの。言いてェことは山ほどあったが、俺が周りの反応をいちいち気にしなければいいだけの話で、やましいことがあるわけでもねェ。ただ、ちっとばかし
「兄さん? 聞こえなかったのかな? トリック・オア・トリート
……
あっ、それとも約束を忘れてしまった?」
「あー、ちゃんと聞こえてるし覚えてっから」
お兄ちゃんの思考に割り込んでくるンじゃねェよ。
その、アレだ。お兄ちゃんの威厳の関係で、ちっとばかし都合が悪いっつーだけで。
一彩の頭に手を置いて髪をくしゃくしゃ撫ぜると一彩はたちまち周りに花が咲いてないのがおかしいくらいに顔をほころばせる。まだ今日の目的を一つも果たしてないってのに。
結局、お兄ちゃんって生き物は弟には逆らえないつくりになってンだよ。だってよ、一彩がこんなにもかわいくおねだりしてンだぞ。それに水を差すどころかぶち壊すなんてこと、俺にできるわけねェだろ。
つまり、ちっとばかし俺が耐えればいいだけの話だ。周りの視線は無視だ、無視しろ、天城燐音。
こんなこともあろうかと今日はずっとお菓子を持ち歩いてたしな。
……
とびっきり、じゃなくなっちまったけどよ。
なんせこれはよォ。
ニキにつくらせようとしたら「それは自分で用意しないと意味ないでしょ! 弟さんのためって言うならなおさらっす!」と珍しくガチめに説教垂れられて、仕方なく自分でつくった(言っとくが、ニキがつくった菓子なら失敗はないし確実だと思っただけで、仕方なく=面倒って意味じゃない)
っつー、それはそれは長い注釈がつく割に、かぼちゃのかたちにくり抜いて目と鼻と口をつけて焼いただけの、マジでとびっきりのかけらもない、いたって普通のクッキーだからよ
……
まァ、一彩のことだから文句は言わねェと思うけどよ。でもだからって、俺が納得できるかと言ったらそれはまた別の話だ。ぶっちゃけ、求めてたレベルと実際のレベルのあまりの差に若干失望してっからよ
……
本当はもっとこう、一彩のためにすげェのを用意するつもりだったンだよ。
「
……
ほらよ」
「ありがとう!」
「味の保証はしねェからな」
「え?
……
と言うことは、もしかして兄さんの手づくりなのかな?」
おお
……
!
とかどよめいてンじゃねェよおめェら。見守るな。
俺がつくったと積極的に主張したいわけじゃないが、だからと言って俺の努力を知られないままというのも面白くない。というジレンマの結果、言い訳がましく付け加えた皮肉めいた一言だけで賢い一彩はすべて悟ったらしい。もうこれ以上笑ったら崩れるんじゃないかって心配になるくらいに嬉しそうに笑うもんだから、思わず頬を手で押さえてしまって、慌てて離した。これじゃまるで俺が一彩を溺愛してるみてェだろ。見るな。いや、気にするな。無視しろ。見てみろ、一彩だって別に気にしちゃいねェだろ。こんなの普通だ、普通。
「兄さんは悪戯しなくていいんだよ?」
「いやこれは別に悪戯じゃなくて」
悪戯じゃないなら
……
?
とかざわついてンじゃねェよおめェら。黙ってろ。
「そうなの? まあいいや。それじゃあ、お礼の悪戯をするね!」
律儀に宣言するやつがあるかよ。
そもそも礼はおかしいだろ。
とかなんとかツッコミを入れる間もなく一彩が俺の腕に絡みつく。
腕を下に引っ張られて引き寄せられて頬がふわっとあったかくなって。
ん?
と思った時にはすべて、終わっていた。
一彩の悪戯も、俺の威厳も。
腰を抜かしてその場にへたり込んだ俺の目線に合わせて屈んだ一彩が、心配そうに俺の顔を覗き込む。
「ごめんね。頬にキスしただけでそんなにびっくりするとは思わなくて」
びっくりどころか心臓が止まったわ。
「それとも、嫌だったかな」
「ンなこたねェよ」
「本当?」
「お兄ちゃんが嘘ついたことあったかよ」
いつもついてるよね
……
。
とかツッコんでンじゃねェよおめェら。空気読め。
「その
……
まァ、アレだ。悪戯は大成功ってことだろ」
だからお前は素直に喜べばいい。
という意味合いで一彩の頭に手を置くと、元来素直な一彩はとびっきり素直に喜んで、俺にぎゅうっと抱きついた。
あー
……
。
もういいわ。
一彩の背中に手を回して、ぽんぽん叩きながらとうとう、観念した。
天城燐音は弟を溺愛しているお兄ちゃんです。
これで満足だろ。
だからやめろ拍手で祝福するなおめェら。ありがとな!!
あと頼むから、場所はわきまえような、一彩。
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