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ちこと
2024-10-29 21:59:25
1370文字
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poke小説・SS
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歩数を重ねて
2021年のともだち記念日に書いたサト+ピカ短文です。アカシアの影響を受けた頃です。
かち、と小気味良い音が鳴る。
手のひらにおさまるくらいのちいさな液晶のなかで、数字がひとつ増えている。
「やっちゃうよね、それ」
と、コハルが苦笑した。
サトシの手のひらには、ちいさな機械が乗っている。それをかるく振るたびに、かち、かち、と音がして、液晶画面の数字が増えてゆく。
コハルの母親が物置から見つけたという、歩数計だった。
「歩数を数えるものなのに、つい振りたくなっちゃうんだよね」
「なんかこれ、振ると気持ちいいな」
そう言うと、今度はゴウが「使い方、そうじゃないって」と苦笑する。
「自分が何歩歩いたかを測るものなんだから」
「何歩歩いたか、かぁ」
振るのをやめ、手のひらでころころともてあそぶ。すると、膝の上からちいさな両手が伸びてきた。
はい、と渡すと、ピカチュウはちいさな機械を両手で持ち、しげしげと眺めてみせる。
「ぴーか?」
大きく上下に、かち、かち、かち。
「やっぱ、やりたくなっちゃうよなぁ」
「ぴかちゅ」
小気味良い音と軽い振り心地に満足したのか、ピカチュウはサトシへ機械を差し出した。液晶に映る数字は、先ほどよりずいぶんと増えている。
「ははっ。ピカチュウ、いっぱい歩いたなぁ」
「ぴかっちゅ!」
目が合って、なんだか楽しくなり、ふたりで微笑む。
ゴウとコハルが顔を見合わせ、視界のはしでかるく笑んだように見えた。
歩数計を返すと、コハルはそのまま、制服のスカートにちいさな機械をくくりつけた。
「コハル、それ使うのか?」
「うん。せっかくだし、自分がいつもどのくらい歩いてるのか知りたいなぁって」
「どのくらい歩いてるのか、
……
かぁ」
何気なく呟くと、コハルは大きな目をぱちくりとまばたかせ、サトシと、サトシの腕のなかにいるピカチュウを見つめた。
「ふたりも、きっといっぱい歩いたんだよね」
「え?」
「たしかに。いろんなとこ旅したんだろ? 全部数えてたら、きっとすごい数字になるんだろうな」
「いくつになるんだろう。想像つかないね、イーブイ」
「ぶいっ」
ゴウとコハル、それにイーブイの声を聞きながら、サトシは腕のなかの相棒に目をやる。すると、茶色いぴかぴかの目とばちりとかち合った。
何歩くらい。どのくらい。
ピカチュウと、歩いた数。
「
……
わすれちゃったなぁ」
「ぴーか、ちゅう」
歩数を重ねた先で見たものや、出会ったひと、ポケモン、感じたこと。
それならいくらでも思い出せるのに、どのくらい歩いたのか、と問われたら、ぜんぜんまったくわからなくなる。
数えきれないほどに足跡を重ねたのだ。
ふたりで、一緒に。
「な、ピカチュウ」
忘れてしまった歩数に思いを馳せたら、となりにいてくれる相棒のことが、なんだかいとおしくてたまらなくなった。
名前を呼ばれて、ピカチュウの耳がぴくんとはねる。
そしてサトシが次の言葉を紡ぐよりも先に、黄色のからだが勢いよく、サトシの腕のなかへ飛びこんできた。
「ぴかぴ、ぴかちゅう!」
その声を聴いたら、サトシはピカチュウを抱き締めるしかなくなって、「うん」とひとこと、呟いた。
――
ありがとな。
そう言いたかったのだけど、伝わっただろうか。
いつも一緒に歩いてくれて、ありがとう、と。
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