ニャヒートがガオガエンに進化して、ひそかに困ったのは昼寝の場所だった。ニャビーからニャヒートに進化したときとは比べものにならないほどに大きくなった体躯では、屋根の上にのっそり寝そべることも、ソファーにまったり体を預けることも難しいのだ。
その日もよく晴れていたので、ガオガエンはとにかく寝転がりたかった。研究所のそばの草むらにほどよい平地があったので、ごろりと仰向けになる。
両腕を枕に、ガオガエンはのんびりと目を閉じた。お日様がぽかぽかと降りそそぎ、ほんのり涼しい風がそよぐ。絶好の昼寝日和に満足して、ガオガエンは寝入った。
そうしてふと目が覚めたとき、ガオガエンはひとりでなかった。気配を感じて首を傾ける。
ガオガエンの隣に、サトシがごろりと寝転がっていた。同じように腕を枕にして、仰向けのまま寝息を立てている。
一度傾けた首を、ガオガエンはのっそりと元に戻した。そうすると空の太陽の光がまぶしく、両目を半目にする。
くぁ、と大きくあくびをした。まだまだ寝たりない。隣からも起きる気配はしてこない。
だからガオガエンは、そのまま目を閉じるだけでよかった。寝直すにはかんたんなことだった。
けれどもすこし、ほんの、ほんの気まぐれのように、ガオガエンは片肘をついて、ゆっくりと半身を起こした。そのまま頬杖をつく。
かたわらに、サトシがすやすやと寝入っている。そよぐ涼風が、サトシの髪をさわりと揺らして通りすぎてゆく。
そのぼさぼさの髪に、ガオガエンは、空いた方の手を伸ばした。
ぽふ、と手のひらを乗せる。サトシの頭は、ガオガエンには片手のひらで掴めるくらいの大きさだった。
サトシが起きる気配はない。そのまま、ほんのすこし手を動かしてみる。サトシの髪がガオガエンの手のひらをふわふわとくすぐった。
手のひらにぬくもりを覚えて、ガオガエンはゆっくりとまばたいた。
ニャヒートからガオガエンに進化し、大きく変化したことは、体の大きさにとどまらない。
それまでは四つ足で地を駆けていたのに、必要な足は二本になり、あまった分は手として使うことになったのだ。
その新しい手をどう使えばいいのかは、進化した瞬間から、ガオガエンの体が知っていた。だから動かすのに不便はなかったのだが、それにより得られる感覚は、ガオガエンには新鮮で、不思議なものであったのだ。
サトシの頭を、そっと撫でる。
ニャビーだったころ、ニャヒートだったころは、撫でられる心地よさを存分に知っていた。
撫でるというのは、このような心地になるものなのか。
ニャビーを、ニャヒートを撫でていたサトシも、こんな気持ちだったのか。
ガオガエンが感じたことを、サトシが気づくことはなく、ただガオガエンのとなりで、ずっとすやすやと寝こけていた。
その実、ガオガエンに撫でられてからは、よりいっそう心地よく夢を見られていたのだが、そちらはガオガエンの知れることではないのだった。
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