ちこと
2016-07-30 21:22:33
770文字
Public poke小説・SS
 

無題

2016年映画絵チャにお邪魔した際に書いた短文です。本編中のサトシとボルケニオン。

 うとうとと、サトシの首が揺れる。おれも起きてるよ、とは言ったものの、それなりに溜まっていた疲れのおかげで、睡魔がゆっくりと襲ってきていた。
 やがて、がくん、と大きく首がおちた。うしろに反り返り、はずみで落っこちて、そして、輪っかが光る。
「あ」
 最初に気づいたのはどちらだったか、サトシがぎくりと反応したときには、もうふたりの間には、見えないはずの鎖がぴぃんと張られていた。
「おわぁっ!!」
 ぎゅうん、ごちん。もう今日何度見たかも知れない光景に、ひとり難をのがれたピカチュウはため息をつく。
「いっ……てぇ~」
『お前、夜くらい静かにできねぇのか……
「うるさいなぁ、おれだって好きでやってるわけじゃないさ」
 腰だけでなく頭までぶつけて、全身がひりひりするのをこらえながら、サトシはボルケニオンに口をとがらせた。
 ふぅ、と息をついて、もといた位置に戻ろうとする。起きあがろうとして、ふいに上げた目線のさきが、ふと夜空をかすめた。
……ははっ」
 そのまま体重を、うしろに預ける。
『おい、なんだよ、おっかかるんじゃねえ』
「いいじゃんか。ほら、見ろって」
 指さして、ボルケニオンの視線を空へと導く。
「きょう、星がきれいだぜ」
…………
 ボルケニオンのからだは硬くて、だけどなんだかあたたかい。だからサトシは背中を預けて、そのまま、後頭部までぽす、とかれに乗せた。
「だろ?」
…………まぁ、悪くねえな』
 素直じゃないなあ、と苦笑して、サトシはピカチュウに手を伸ばす。待ちわびたように飛びこむ相棒を、サトシはいつものように抱きしめた。
「いっしょに見ようぜ、ボルケニオン」
「ぴっか!」
 その言葉に応えることはせず、ボルケニオンはただ、目の先できらめく星々と、脚につたわる熱とを、じんじんと感じていた。