ちこと
2015-05-30 21:49:56
1178文字
Public poke小説・SS
 

おはようのヒーロー

ルチャ+サトです。唐突に始まっておわります。

「ちゃぶ……ちゃぶ、ちゃ」
 呼ばれたような気がして、サトシはふ、と目を開ける。
 目の前に極彩色の翼が広がって、だれに呼ばれていたのかを瞬時に理解した。
……ルチャ、ブル?」
「ちゃぶ!」
 目を瞬かせながら、きょとんとした顔になる。頭はまだぼんやりとしていて、状況が掴めない。
 ただ、背中に温かい手が添えられていることは、なんとなく感じていた。
 ルチャブルが、サトシを抱き起こしてくれている。
「あれ……どうしたんだっけ」
「るちゃるちゃ、ちゃぶ」
「あ、そっか、みんなとはぐれて……
 仲間と合流すべく森をさまよっていたら、足もと不注意のうえ、タマゲタケたちを驚かせてしまったことを思い出す。
「あれ、“きのこのほうし”か……
「るちゃ」
「で、おれは寝ちゃったんだな」
「ちゃぶちゃぶ」
 相槌をうつようにルチャブルは頷く。
 しかし、あれ、とサトシは気づく。みんなとはぐれたとき、ルチャブルとも離れ離れになっていたはずだった。
 それについて尋ねようと、ルチャブルの方を見る。思いのほかすぐそばに顔があって、ぎょっと驚いてしまった。
 そっか、おれ、まだルチャブルに抱えられてるんだ。
 体のサイズは、サトシのほうがひとまわりもふたまわりも大きいはずだ。抱えにくいことこのうえないだろうに、ルチャブルの逞しい腕は、サトシの背をしっかりと支えている。
 下半身を地べたに投げ出したままのサトシは、ルチャブルにその身を預けるままになっていた。
……る、ルチャブル」
「ちゃぶ?」
「重いだろ? おれはもう大丈夫だよ、さんきゅ」
 言いながら、サトシは自分で体を起こそうとする。
 だけどルチャブルは、なぜだかそれには応じない。
 手をサトシの肩にまで回し、ぎゅ、と体ごと近づけた。
「る……ルチャブル?」
「ちゃぶちゃ、ちゃーぶ」
 名前を呼ばれたと思ったので、そっとルチャブルの顔を覗きこむ。
 黄金いろの瞳と目が合った。
 ルチャブルは、サトシを見つめて、ふ、と口角をあげる。
 彼の意図は、完全にははかりかねる。
 けれど、その笑みは、すとん、とサトシの心に落ちてきた。
 何ともなしに、サトシは思ってしまう。

 ――――あーあ、やっぱりかっこいいなあ、こいつ。

 森のなか、独りで寝こけていたサトシを探し出し、そっと抱き起こしたであろう……そんなルチャブルの様子が、サトシの目にも浮かぶようだった。
 サトシよりもひとまわりもふたまわりも小さな体は、サトシの体をしっかと支えて離さない。
 守られる側になるのは歯がゆいのだけれど、あまりに彼がきらきらと見えて、余計なことを言う気が失せてしまう。

 今日のルチャブルは、おれのヒーローだなあ。

 思ったことをそのまま彼に伝えると、「るちゃ!」と自慢げに笑ってくれた。