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山茶花
2024-10-29 09:48:36
5334文字
Public
[シルデュ]サイト限定(不健全)
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酔いどれハニー fancy you【118SF005】
酔いどれデュースをひたすら甘やかす話。
・「酔いどれダーリン lovin’ you !」と同じ世界線のシルデュです。
・単品でも読了可能。不健全なシーンはないですが、同じ世界線なので同じ場所に置いています。
・年齢操作(シルバー24歳、デュース23歳)です。
・シルデュがナチュラルに同棲しています。
・いろいろ細かい将来捏造などがあります。
・付き合っている、恋人設定です。
以上すべて大丈夫な方はスクロール↓
(さて、家へ帰るか。デュースが待っている)
茨の谷の兵士詰め所で、一通り仕事着を着替え、魔法の鍵を取り出す。この鍵は、俺とデュースが2人で暮らす新居へと繋がる、大事な鍵だ。デュースが薔薇の王国の警察学校で訓練をしていた頃、なかなか会えないことですれ違いが多くなって、それならば、とデュースの卒業次第、一緒に住むことに決めたんだ。
だから、今、俺とデュースはひとつ屋根の下、同じ家に住んでいる。茨の谷と薔薇の王国、本来は遠い国に住む俺たちだが、特定の場所にだけ繋がる空間移動の魔法を籠めた魔法の鍵を作っていただき、それを使い二つの国を毎日行き来している。作るのはたくさんの許可が必要だったが、マレウス様や親父殿が、俺たちのためにと力を貸してくださった。今でも、この鍵を使う度、そのことに感謝している。大切な人の元にすぐに駆け付けられないのは、俺にとって、とても苦しいことだからな。だから、俺の気持ちを汲んでくれたまわりの皆に、常々感謝をしなくては。
もちろん、俺と住むことを受け入れ、今もこうして暮らしてくれるデュースにも、だ。
そんなことを考えて、ふと、そうだ、今日はデュースに土産でも買って帰ろうか、と思った。恋人相手だ、たまには格好つけて花束なんて贈ってみようか。いや、アイツは花より団子な奴だな。花束よりも、その形の飴でも買っていった方が喜ぶかもしれない。
薔薇の王国ほど盛んなわけではないが、茨の谷にも菓子屋などがないわけではない。デュースの好みそうな卵を使ったクッキーやプリンなどをいくつか見繕い、菓子屋特有の四角い箱を持って、魔法の鍵を回した。
ドアをくぐれば、あっという間に薔薇の王国の、俺たちの家の玄関口に着いてしまう。続いて誰も入ってくることがないようにとしっかりドアを閉めて、魔法の鍵をしまえば、これで帰宅は完了だ。
「ただいま、デュース」
「せんぱい?
……
おかえりなさーい」
部屋の奥の方から、デュースの声がする。今日の出迎えは無しだろうか、と奥の部屋へ入ると、いくつかの酒の缶と、ほろ酔いのデュースがそこにいた。テーブルに菓子の箱を置き、デュースの横へ座る。
「飲んでいたのか」
「へへ~。先輩もどうです?」
ほろ酔いとは言ったものの、どうやらデュースは今日、思ったよりも酔っているようだ。一体、何杯飲んだのだろうか。デュースはそこまで酒に弱いわけではなかったはずなのだが。
「いったい何杯飲んだんだ?」
「えーっと
……
わかんない、です」
「まったく
……
。そのくらいにしておけ。酒でお前の顔が赤くなるなど、相当な量を呑んだのだろう」
デュースの手からグラスを奪い、入っていた酒を飲み干す。あー、と残念そうな声をあげてグラスを取り返そうとするデュースを、抱き止めて制した。
「もー、僕まだ平気ですよー」
「明らかにいつもと様子が違うだろう
……
」
酔った雰囲気のデュースに、呆れながら、水を注いできてやるから飲め、と頭を撫でると、撫でてくれた~とデュースは嬉しそうにぽやぽやと笑う。
……
こんな姿でさえ可愛らしいと思うのは、俺の惚れた弱みか。
ひとまず水を注いできてやり、ほら飲めとデュースに渡した。
「んー、冷たい」
「少しは落ち着いたか?」
「せんぱーい」
俺に甘えてくっついてくるデュースの身体を抱くように支えてやりながら頭を撫でる。
「ああ、どうした?」
「先輩、お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
お帰りのちゅー、と言ってデュースは俺の頬にキスをしてくる。
……
まったく、酒の匂いが強いな。どうしてこうなるまで今日は飲んでいたのか
……
。
「何か、嫌なことでもあったのか? 飲んで忘れたいような
……
」
「んー
……
やな夢、見ただけです。うたた寝してたらぁ
……
」
「嫌な夢?」
短い髪に少しだけ埋もれたデュースの耳を撫でるように尋ねると、デュースは不服そうに言った。
「先輩が、どっか行っちゃうんです。白い馬に乗って、白い服着て、僕じゃない、別の奴と
……
」
「そ、それだけ、か?」
もっと何か大きなことがあったんじゃないかと心配していたから、ただ嫌な夢を見ただけだということに拍子抜けしてしまい、そんなことを言ってしまう。だが、それにデュースは気を悪くしたようだ。
「それだけ、じゃないです! 先輩は、今、僕とこうしてくれてるけど、いつ、誰にとられるかなんて、分かったもんじゃないんだから
……
」
デュースは俺の胸に縋りつくように頬をすり寄せる。
「それは
……
俺の言動が、お前を不安にさせている、ということか?」
「ちがいます、僕が勝手に不安なんです、せんぱいは、悪くない。僕が、自分に自信、ないから」
「
……
」
何を言うべきか分からなくて、ただぎゅっと力を込めてデュースを抱きしめてやると、デュースは、ほっと安堵の溜め息をついた。
「せんぱい、綺麗な人も、強い人も、僕の他に、せんぱいのまわりにはいっぱいいますけど。せんぱいには、大事な人、いっぱいいますけど。僕、そんな人たちに、勝てなくても、負けないようにするから
……
一緒にいて
……
」
「
……
馬鹿だな。大切であることに、勝ち負けも何もないだろう。お前が不安になっているような相手と同じように、お前も大切なんだ」
「んん
……
」
なるほど。どうやらデュースが飲んだくれてしまっている原因は、些細な悋気の積み重ねと、日頃隠している不安が原因だったらしい。それが悪夢という形をきっかけに改めて表出してしまい、それを忘れたくて飲んだくれていたのだと。
「困ったな。どうして酒を飲んでしまったんだ? 言葉でお前の不安を除いてやりたくても、明日、お前が忘れてしまうかもしれないのではな」
「忘れないです、僕強いです」
「今日はどうだろうな」
デュースの頭をぽんぽんとあやすように撫でる。年下とはいえ、すぐに意地を張って俺にさえ弱みを隠してしまうデュースが、こうして素直に弱って甘えてくれることは普段あまりないから、新鮮な気持ちだ。
「せんぱい」
「ああ、なんだ? こうしていても、まだ淋しいか?」
「んん
……
」
デュースの身体を優しく抱きしめて、あやすように頭を撫で、身体を揺らす。まるで赤子を寝かしつけているようだな、と心の中で苦笑をした。
「そうだ。甘いものでも食べるか? 腹を満たして、身体を暖めれば、少しは淋しくもなくなるだろう」
ほら、と土産に買ってきたプリンとスプーンをデュースに渡し、少し待っていろ、と告げて寝室からブランケットを取りに行く。
そうして、またデュースを抱くようにして、背中に2人で被るようにしてブランケットを羽織り、デュースの身体を暖める。
「ほら、どうだ?」
「
……
甘くて、暖かい、です」
デュースは嬉しそうに、ゆっくりとプリンを口に運んでいる。それは良かったと頭を撫でてやれば、大人しく受け入れていた。
やがて、プリンを食べ終えたデュースがじっと俺の目を見つめてくる。ねだるような目に、何が欲しいかは分かっているが、あえて聞いてみる。
「何が欲しいんだ?」
「せんぱい、キス」
「なんだ、今日はずいぶん甘えただな? いいだろう、ほら
……
目を閉じろ」
デュースの目を閉じさせて、ゆっくりとくちづけを与えると、もっと、とさらにねだられた。
「分かった、分かった。ちゃんとしてやるから、そう急くな」
そうして、何度もデュースにゆっくりとくちづける。今日は好きなようにさせてやろう。俺は、学生の頃交際をしていた頃から、デュースがこうした不安をこぼす日には、必ずそうしようと決めている。
俺の大切なものは、確かに多い。そうして、デュースだけを特別に扱ったり、優先してやれない場面も、必ずある。それは俺の生き方であり、変えられないことだ。だから、その俺の生き方の割を食ってしまう恋人のことは、ちゃんと扱って、取り戻してやりたいと思っている。
だから、いいんだ。どんなにワガママを言われても、理不尽を言われても。それがあまりに取り返しのつかないことであったり、誰かを傷つけたりするようなことでない、可愛いねだりの範疇である限りは、どんなことでも聞いてやると決めているんだ。
それは、こうして不安を表に出してくる日だけでなく、俺が傍にいられる時間、どんなときでもずっと変わらないことだ。
……
だが、それはコイツは知らなくてもいいことだ。俺が自分の生き方、選べなかった選択肢にわずかでも後悔や責任を感じていると知ったら、それこそコイツの方が、自分が重荷になっていやしないかと、いらない心配を始めてしまうことだろう。
俺は、重荷だっていいんだ。背負うと決めた重荷なら、苦になどなりはしない。
自分の方はそう思っていても、やはり愛すると決めた相手にそのような荷物を背負わせたくないと思うのは、俺のワガママなのだろうか。
「
……
」
デュースはすり、と俺の首元にすり寄ると、眠たそうに目をこすった。
「一度、眠るか?」
「んん
……
やだ」
「嫌なのか」
「せんぱいと、まだいる
……
」
「俺は傍にいる。お前が眠ってしまっても」
「でも、やな夢の続き、見たくない
……
」
「それなら、次、嫌な夢を見たら、助けに行ってやる」
「
……
ほんとですか?」
「ああ、本当だ。だから、眠いなら眠っていい」
俺が眠らせてやろう、とトントンと背中を叩くと、デュースはまだ寝たくないとぐずる子どものように身体をむずがらせた。
「困った子だな。仕方ない、ベッドへ運んでしまおう」
ブランケットにくるんでデュースの身体を抱き上げ、ベッドまで運ぶ。
そっとデュースをベッドに下ろして隣に寝転ぶと、デュースは不満そうに頬を膨らませていた。
「何をふくれているんだ」
膨れているデュースの頬をつつき、ぷに、と潰す。
「せんぱい、僕が寝ちゃってもいいんですか?」
「どういう意味だ?」
「先輩はさみしくないんですか。僕は、さみしかったのに」
「ふっ。お前は、寝顔も可愛らしい。それに、会えない間も俺の夢を見てくれていたのだろう? 淋しくなどあるものか」
「ずるい。せんぱいも、僕の夢みてください」
「分かった、分かった。ほら、デュース」
おいで、と腕を広げ自分の前のスペースを空けると、デュースはもぞもぞと俺の腕の中へと抱かれに来る。
「今日だけですからね」
「ああ、分かっている」
しかし、いったい何が今日だけなのだろうか。まあ、いい。今、アルコールの入ったデュースの考えてることが分からなくても、ひとまず返事はしていたいからな。
「どっかいっちゃ、嫌ですよ」
「行かないから、安心しろ。今日もこうしてお前のもとに帰ってきただろう。それに、お前のために菓子まで買ってきたんだぞ。全部、お前のことを思って、だ」
「
……
ん」
ようやくデュースは納得してくれたようで、とろんと目蓋を落とし始める。
「眠いのか? 眠っていいぞ」
トントン、と身体を叩くと、デュースは不満そうにした。
「ぼく、ちっちゃい子じゃない
……
」
「確かに、今日は幼子のようだな。ふっ。おやすみ、デュース」
額にキスをして、またトントンと身体を叩いてやると、デュースは膨れながらも、だんだんと目蓋を落としていき、やがてすやすやと規則正しい寝息を立て始めた。
それから15分程度、デュースがしっかりと寝付いているか様子を見て、そっと起こさないようにベッドを抜け出す。
そのとき、眠っていて力が抜けているとはいえ、俺の服の裾をぎゅっと握りしめられていたのが分かったので、改めて額にキスをした。
(
……
いつも不安にさせていて、すまないな)
「明日の支度だけしたら、すぐに戻ってくる。少しだけいい子で待っていてくれ」
ささやくように語りかけて、リビングのテーブルを片付けたり、シャワーを浴びたりと所用を済ませた。
それからもう一度、眠るデュースの元へ戻る。デュースは一度寝たら朝までは起きないが、酔いが覚めた頃には起こしてやらなければならない。
うっかり自分まで眠ってしまったときのためにといくらかアラームをかけて、眠るデュースの傍に腰かけた。
「今日は傍にいる、離れないと約束をしたからな」
さて。デュースが起きたら、どんな言葉をかけてやろうか。大切だ、大好きなんだと、恥ずかしがって逃げ出すまで伝え続けてやろうか? 酔いが覚めたデュースはきっと、照れてしまうことだろうな。それでもきっと、喜んで受け止めてくれるはずだ。そんなことを考えながら、夜は更けていった。
*おしまい
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