くるり
2024-10-29 04:31:00
2928文字
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依存

自分の為だけに書いたやつです。自分が見たくて書いただけのやつなので自己解釈強め。
眠眠気限界状態で書いたのでグダグダ
正気に戻った時に直せるとこだけ直していきます。

真っ暗で、天も地も無く歩く地面も無いような何も無い空間にポツンと1人立っていた。
フラフラと足が自然と前に歩き出す。前も後ろも右も左も分からないのに何故か俺は自分が進むべき場所を知っていた。しばらくずっと何も変わらない虚無の空間を歩いていけば遠くにポツンと小さな何かが見えた。近付いていくに連れ、それは段々と大きくなっていき人の形を成し始める。
とうとうそれを見下ろすことが出来るまでに傍に寄れば、それは体育座りの体制で蹲っていて、外見は自分とそっくりな姿形をしている。

「主人」

そう呼べは、固く閉じられていた主人の目がすうっと開かれる。まるで寝起きかのように呆けた顔が、呼ばれた声に反応して俺の方を見上げ、目が合うと途端に花開く様に朗らかな笑顔を彩った。

「智将!」

嬉しそうに満面の笑みを浮かべて俺の名前を呼ぶ主人に、きゅうっと目を細める。身体から余計な力が抜けて軽くなったような気がする。そのまま自然に膝の力を抜いて主人と同じ目線になるようにしゃがみこんで顔を覗き込めば、主人はニコニコとご機嫌な笑顔のままこてんと小さく首を傾げて同じようにこちらを見つめ返してきた。

結局、最終的に“要圭”の主人格は智将、要圭である己になってしまった。それがどうしてなのか、何故主人じゃなくて自分だったのかは今でもよく分からない。でも主人は眠るように己の意識の深く深くに沈み込んで、俺は主人という人格が居た事すら忘れてしまった。そうやって“要圭”は一人の存在に戻ってしまった。まるで最初から他の人格なんて存在していなかったみたいに。
でも主人という存在が智将に何の影響も残さなかったかといえば全くそんな事はなかった。寧ろ影響はありまくりで、多分、主人という人格が眠ったと言うよりは主人の人格を智将の人格が吸収したという方が合っているのかもしれない。細かいことは自分でもよく分からないが。
しかし自分の心は随分と弱くなってしまったらしく、主人という存在が居なくなった事で心の支えが1つ無くなり、自分でも訳のわかぬまま精神がぐらつくことが度々出てきた。そしてその度に俺は無意識下で主人を求め、己の身体が眠っている間に潜在意識の中で深く深くに眠る主人を呼び覚ました。
あぁ、なんて自分勝手なんだろうか。どうせ俺はまた目が覚めれば主人の事も、今ここで主人と会った事すら忘れてしまうのだろうに。
主人はそんな俺の事はきっと全部分かってる。だって主人も俺と同じ要圭だから。だけど、主人は俺の事を責めたりしない。
同じ身体の中に2つの人格があった時と変わらずふざけて、おちゃらけて、ずっとニコニコと明け透けた笑顔を俺に向けてくる。その笑顔を見ていると嫌なこととか苦しかった感情が全部吹き飛んで、どうしても許せない自分の嫌いな部分を肯定された様な気持ちになる。その時だけ俺は自分自身の事を心の底から愛せる様な気がする。

「今日はどうしたん?なんか嫌なことでもあった?」

困った様に眉を寄せてにっと口に笑みを浮かべてこちらの様子を伺ってくる主人の質問には何も答えず、只々俺は主人の方に自分の身体を寄せて体重をかけた。俺のそんな反応に主人は「え〜、無視〜?」と唇を尖らせてつまらなそうな表情をつくるが、その実内心では特に気にした様子も無さげだ。
一言も発さずにただ傍に居るだけの俺を余所に主人は一方的に話しを始める。ずっと眠っていたはずなのに俺を介して情報を得ているのか、俺の人格が中心になって生きていた時の情報は知っているようだ。はるちゃんは相変わらずだねとかヤマちゃんが元気そうで良かったとか、そんな事をずっと1人でペラペラ喋っている。

「主人」

不意に名前を呼べば、まだ話の途中だったであろう主人がぴたりと話すのを止めた。そして「ん〜?」とこちらに顔を向ける。

「ハグしてくれ」

手を広げてそう強請れば、ぱちくりと大きく目を見開いて瞬きを1つした後、嬉しそうに目を細めて「おう!良いぜ!」と元気よく返事をしてそのまま抱きついてきた。主人の手が背中に回って全身を抱き締められる。俺も同じように主人の背中に手を回して主人を抱き締めた。不思議と主人の温もりが体に伝わってくる、実体など無いはずなのに。
その温かさが心地よくて、俺はすぐ横にある主人の顔に頬擦りをする。主人の片手が頭に伸びてきてゆっくりと撫でられる。あぁ、とても気持ちがいい。
こんなに近くで抱きしめているのに主人が現実には存在してないなんてとても信じられない。けど、きっと目を覚ませばいつも通り。俺は主人が居たことなんて忘れて、この温もりも心地良さも忘れてまた1人寂しい部屋で朝を迎えるんだろう。だけど昨日の夜寝付いた時とは違う、不思議と疲れの取れた身体と昨日までぽっかりと空いてた心の穴が満たされた様な感覚に首を傾げて。そして自分が何を求めていたのかも分からないままにまた明日を生きるのだ。

「主人」

「うん」

名前を呼べば俺を抱きしめている腕に力が加わる。分かっている、主人だって本当はきっともどかしい。でも俺にも主人にもどうする事も出来ないから。自分の事なのにままならないなんて可笑しいよな。

でも、本当は、きっと心の奥では俺はこの現状に満足しているんだ。
だって、もう前のように表に出ることが出来ずとも主人は確かに自分の中に存在しているから。そして悲しくなった時、辛くなった時、全部が嫌になって、それでも誰にも自分の心の内を晒せないで苦しんでる時に何時でも寄り添ってくれるんだ。俺を否定しないで、わざわざ言葉にせずとも俺の気持ち全て汲み取って、裏表のない笑顔で全部を受け止めてくれる。だって主人はそういう人間だから。そうだよ、主人はそういう奴なんだ。
俺の、俺の為の、俺だけの主人だ。
あぁ、最高で最悪だ。俺はいつからこんな浅ましい人間になったんだろう。まだ主人が主人格だった頃はこんな感情湧いたことすらなかったのに。周りに影響されて今まで閉じ込めてた色んな感情を解放していったら、こんなどうしようもない貪欲さまで出てきてしまった。こんな、最悪だ、本当に、くだらねぇ。
俺の人生は葉流火に捧げようと決めたのに、なんでこんな事になったんだ。
それもこれも元はといえば主人のせいで、でも主人も俺だから結局は自分のせいか。はは、くだらない。

忘れたくないよ。やっと俺は俺の事を愛せたんだ。目を背けてた自分のかつて感じていたくだらない感情とか、欲望だとか、葉流火の為に人生を捧げようと思って目を背け、それでも消しきれずにずっと心の中で燻っていたものを客観視して、初めて俺はそれらを愛おしいって受け入れる事が出来た。俺はやっと俺自身に目を向けることが出来た。ようやく自分の中に大切な物を見つけられたのに。
この温もりを忘れてしまうなんて、この安堵を手放してしまうなんて、とても悲しい。

主人、主人はそのままでいてくれ。ずっと変わらずここに居てくれよ。俺の中の、大事で大切で愛おしい存在。俺が大好きな俺の一部分。

主人が居てくれたから俺はやっと上手く息が出来るようになったんだ。