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片瀬真
2022-03-16 22:08:26
2646文字
Public
PCたちの小話
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ホワイトデーの話:守城と担当編集
守城と担当編集、宮武良の話。
守城視点。ホワイトデーのお返しを考える。
長い片想いから数年。
いつかの旅行で告白をして貰って、なし崩しで恋人という間柄を手に入れた。
でも、それではいけないと心のどこかで思っていて、昨年の冬。
年末にほど近い季節に改めて告白をすることができ、その際にやっと「結婚を前提にお付き合いを」ということが出来て。
それから、初めてのバレンタインデーがやって来た。
日本では女性が男性にというのが一般的だけど、海外では男性から贈るところもあるそうだし何か贈ろうとしている内に結局出来ないままで。
僕の方はと言えば、ちゃっかり手作りチョコを貰ったりして。
食べずに保管しようと思ったけど、それは流石にやめておけと止められて、勿体無いなと思いつつも有り難く食べてしっかり感想を送っておいた。それはそれで幸せなイベントとして記憶して新しい。
「
……
で、だよ」
そして、今に至る。
時はホワイトデー一週間前。僕の目の前には、担当編集の宮武良くんが居る。
お互いに喫茶店の片隅で打ち合わせをしていて、それがひと段落付いたので話題を切り替えた。
行儀が悪いがテーブルに両肘をつき、眼鏡の上から掌で顔を覆う。僕は今、真剣に悩んでいた。
「なんですか先生、そのポーズ」
対しての宮武良くんは打ち合わせ資料を早々に仕舞いこみつつ、素知らぬ顔で珈琲を啜っていた。
「悩んでるんだけど、相談してもいいかな」
「彼女さんのことですか? 大方ホワイトデーのお返し何が良いとかそういうことでしょう」
「え、なんで分かるの」
「分かりますよ。俺は作品の打ち合わせに来てるんですけど? ラブロマンスでも書きたいなら、それはそれで話を通しますが」
「
……
ええ
……
そんなに露骨に分かるのか
……
」
「いや
……
その話しかしてないでしょう。お返しさっさと決めてそれから打ち合わせした方が早い気がするので、目星付けてるラインナップをはい、どうぞ」
スティックシュガーを握り込んだ手を、まるでマイクのように向けられた。
少し視線を上げて顔を見たら、もう顔が笑っている。
「
……
宮武良くん、言っておくけど僕は真剣に悩んでいるだよ
……
」
「わかってますよ。それで、何がいいと思ってるんですか?」
「
……
ば、薔薇とか」
「却下」
「なんで!?」
「そういうのはプロポーズでもする時にどうぞ。多分、
……
ええと、優良さんでしたっけ? 話を聞く限り、先生が一生懸命考えたならいいって言いそうですけど。初めて貰ったバレンタインデーのお返しに薔薇の花とか贈ったら重たくないですか?」
「
……
で、でも、結婚を前提のお付き合いだし」
「
……
おっとそれは初耳。いやでも、それは改めてに取って置いた方がいいですって。先生がロマンチストなのは知ってるでしょうし、今回は別ので行きましょう」
間でせき止めて聞きたいことが多かったけど、我慢して話を続けた。
しかし、別のって何だろう。アクセサリーとかだと分からないから、もう少し調べる時間が欲しいしな
……
。日常的につけて欲しいものも良いけど、そういうのは誕生日プレゼントにしたいし
……
。洋服、は、好みがわからないし、それこそ重たいのでは
……
。
ぐるぐると考え始めてよく分からなくなってきたので、頭が痛くなって来た。
米神を片手で押さえつつ、口を付けないままだった珈琲を一口飲んだ。
一部始終を見ていた宮武良くんは、珈琲を飲み下すところまで見たあと、大きなため息をひとつ吐いて打ち合わせ中は傍らに置くだけだったスマートフォンを弄り始めた。
画面の上で指をすいすいと滑らせながら、口を開く。
「先生、お返しに使う予算は?」
「え?」
「予算です。幾らぐらいを想定してますか」
「え、でも手作りチョコを貰ったんだから値段なんて
……
」
「そういうこと聞いてるんじゃないんですけど
……
。取りあえずじゃあ、三千円くらいとして。食べ物がいいですか、物の方がいいですか」
「た、食べ物、がいいかな」
「彼女さんは、紅茶派ですか? それとも珈琲の方がお好きで? 甘いものは得意ですか?」
問われるままに答えていったら、あっという間にプレゼント候補が決まっていった。
幾つかピックアップしたものを僕のスマホに送って貰ったので、それらを眺めてみる。
「ホワイトデーなんで、まあ無難にクッキーとかがいいかなーと俺は思う訳ですが。先生多分、意味とか気にする人でしょう?」
「まあ、そうだね」
「じゃあ、クッキーは駄目だなー。マシュマロも避けましょうか。チョコレート入りのものなら良いらしいですけど、キャンディーかマカロン、キャラメルとかも良いみたいですね」
教えてもらったサイトを見ながら、宮武良くんの手際の良さに舌を巻く。
「宮武良くん、仕事早いよね」
「そりゃ、その方がプライベートの時間確保できますからね。あ、これは美味しそうだな」
画面から目を離さずにいう彼が選んだ物に関心を向けてみた。
そうだ、そう言えば彼も幼馴染みの女の子が居るって言っていたな。
「きみも誰かにあげるのかい?」
「え? あげますよ。可愛い幼馴染みに美味しいお菓子をあげるのが趣味なんです、俺」
「
……
へー、特別ホワイトデーだからという訳でも無く?」
「そうですね。あ、聞きたいですか? 持ち歩き重視で小さめのお菓子をあげるんですけど、頬張ってるところとか可愛いんですよね。子供の時から変わらないから、つい美味しいもの食べさせたくなっちゃって」
満面の笑顔で返されるが、アドバイスをしてくれた礼だと思って聞かせて貰う事にする。
そうして、一頻りホワイトデーのお返しについて話をして、方向性を決めた後に改めて打ち合わせを始めたのだった。
え? 決めたもの?
迷ったから、マカロンとキャラメルにしたんだ。優良さんが意味合いまで興味があるかはわからないけど、これくらいなら負担にもならないかなって。
※ホワイトデーのお返しの意味をいろいろ。
マカロン:特別な人
キャラメル:安心、ホッとする
チョコが入ったマシュマロ:女性からもらった気持ち(チョコ)を男性の純白な愛(マシュマロ)で包んでお返しをする
マシュマロだけだと嫌いになるそうですよ。
宮武良はちなみに、キャンディーを贈ります。彼は意味合いとか気にしないけどね!
キャンディーの意味は大好き。
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