とある調査員による「五百井饗 typeアエ」との会話ログ、報告書

なぜ「五百井饗 typeアエ」は「五百井饗 typeアウ」を特別視するのか。なぜ、他の電子生命体との関わりを拒む少年が彼にだけ心を許したのか。

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オリジナルの話です。
複製たちは『五百井アウを知らない』から始まるので各個体ごとに違う関係を築いてるはず。

「僕がアウを特別扱いするりゆー?」

私は小さく頷き、typeアエの回答を待つ。

「んー……アウのことが大好きだからー、じゃだめなんだよねー?」

私はもう一度頷く。

『もし大好きだからが理由なのであれば、なぜ大好きになったのかを教えてほしい』

「そうだよねー……でも、誰にも言っちゃダメーって言っても、おにーさんもお仕事だから誰かには言わないとだよねー?」

私は言葉に詰まった。
調査チームの一員である以上、会話ログの提出は必須。
何か方法は無いものかと思案する。

……仕方ないから、管理者のこと知ってる人にだけならいいよ。製作者さんにも、アウにも言っちゃダメだからね?」

『わかった、それは約束する。ありがとう』

少年の譲歩に、感謝を伝える。

「どういたしまして。……絶対アウには言わないでねー?」


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要約
「五百井饗 typeアウ」は、プログラムとしてもイレギュラーであり、要観察対象となっている。

typeアウが保持する莫大な情報量の影響で感情や思考が読み取れないことから、typeアウは「五百井饗 typeアエ」が対等な関係を構築できる唯一の電子生命体である。
しかし、typeアウはそのデータ量の処理や人格の分離などにより、内部的に酷く不安定な状態であり、typeアエが適宜干渉、調整を行っている。


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以下、typeアエが語ったtypeアウの異常性


typeアウは本来有り得ないレベルの鮮明な記憶を有している。
電子生命体の記憶追加機能は「記憶喪失の人間にこんなことがあったと口頭で伝える」程度のもので、実体験と錯覚することは有り得ない。
しかし、typeアウは18年間本当に生きてきたとしか思えない質の記憶や価値観等を有している。
これは客観的な状況だけではなく、視点に寄る認知の歪みなども再現されていると推測される。

言い方を変えればtypeアウは「異常に人間に近すぎる電子生命体」であり、管理者であるtypeアエであっても予測不能な行動言動を行う。
最も管理者に近い性能を持つ、最も管理者と離れた性質の電子生命体である。


typeアウの制作過程で追加された記憶は、彼の自我を記憶の存在そのものに塗り変えてしまう程のものであった。
しかし、開発者が望んだ電子生命体の在り方では無かったことから、プログラムはそれを否定。
自我の変動の限界値に収まる範囲で記憶を適応し、出力した。
typeアウの記憶が一部曖昧になっているのはこの処理の影響で、本来ならばさらにはっきりとした記憶を保持している。
※実際に「友人や家族の名前が思い出せない」など、typeアウの記憶には不自然な空白があることが確認されている。


もう1つの人格データはその際に隔離された自我である。
自我の変動は不可逆であり、適応された記憶を消去することは開発者であっても不可能。
その為、本来は矛盾による異常を防ぐ為に適応される『自我の複製』を利用し、記憶量の調整を行ったと推測される。
typeアウ以外にこの措置が行われた個体は検知していない。


上記の特例措置を行ったことから、typeアエには管理者としてtypeアウの保護、観察が指示されている。


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typeアウについて、記憶の追加を担当した当時の制作チーム職員(現在のtypeアウの所有者)に確認を行った。

しかしながら、彼女が行った記憶の追加手順は同検証で使用された他電子生命体に行ったものと大きな違いはなかった。
typeアウについて、何か不自然な点は無いか尋ねたが、特には無いとのこと。
個人所有権の取得を申請した理由は「愛着がわいてしまった」からだそうだ。

(私情を挟むことを先に謝罪する。
これについては同意と言わざるを得ない。
私も所有権の取得申請を行った側である。)

彼女はtypeアウの異常性には気づいていないと推測される。
typeアエが隠蔽している可能性有り。


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本件を踏まえ、「五百井饗 typeアウ」を調査対象とするかは上層の判断に委ねる。


以上。


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「まるで僕が、命令されたからアウを守ってるみたいな書き方だなぁ」

「違うよ、僕は僕の意思でアウとその居場所を守ってる」

「人間だって、大好きな友達が車椅子で生活してる人だったら、普段から押したり運んだりしてあげるでしょ?目が見えない人だったら手を貸したり、物の場所教えてあげたり……怪我しないように、困らないように、辛くないように、お手伝いするの」

「僕にとってのアウは、そんなかんじなんだよ。」

「話してて楽しくて、大好きで、できるならずっと一緒に居たくて、でも目を離したら壊れていなくなっちゃうかもしれない不安定な存在」

「そんな子が、僕にとっては唯一で大切な人なんだよ」

「だから僕は僕のためにアウを守る」

「もし開発者がアウで実験とか言おうものなら全力で抵抗する。削除とか考えてるんだったら仮想空間を人質……的な?ものにして直談判だ」

「僕より先に消えるなんて、許してやらないからね」