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しちろ
2024-10-16 13:02:11
3735文字
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コラボLOM小説(ごちゃLOM)
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ジュンくんとシオン 4.5
火悠さん、yoshidaさんとのコラボLOM小説、第4話の後日談。二人が喋ってるだけです。ジュンくんの裏設定的な話。
規格外の巨大バドフラワーを、ジュンが退治した翌日。
ジュンが弟子たちの目を避けて武器部屋に行くと、またしても先客がいた。毒から回復したシオンである。ラフな麻の服を着て、入り口に背を向け、黙々と作業している。
(な、なんでいつも、このタイミングで
……
)
シオンに見つからないうちに、こっそり引き返そうとしたジュンだったが、
「ジュンくん。この部屋に用事じゃないの?」
先にシオンに声をかけられて、そうもいかなくなった。というか、なぜジュンだとわかった。背中に目でもついてるのか。
ジュンは慌てて平静を装った。
「あ、えっと
……
もう、大丈夫なの? 昨日の今日で、そんなに動いてて」
「うん。時間経ってすっかり元通りだし」
シオンは振り向きもせず、鍛冶台の前に陣取って楽器を仕立てている。ここ、武器作成部屋なのだが。
「忙しいとこ、邪魔しちゃったかな。あ、あのね。楽器作るなら、向かいの部屋が楽器制作専用になってるんだ。よければ、そっちのほうが作業しやすいよ」
「そう」
一応の返事はしたものの、シオンは腰を上げる気はないらしい。作業は止めず、どうせもうすぐ調整終わるから、と続けて言った。
正直、ジュンは困ってしまった。ここで急に立ち去るのは変だろう。しかし、シオンの目があるのに部屋に入ることはできず、さりとて立ち去ることもできなくて、ジュンは落ち着きなく手をもぞもぞさせた。
「また、折ったの?」
シオンが、ぼそりと言った。
「え」
「大剣」
ジュンはぎくりとした。
冷水を浴びせられたようになりながら、後ろ手に隠したものにこそっと目をやる。大剣だ。正確には、折れた刀身と、残った柄の部分とに分かれてしまった大剣の残骸である。そもそも後ろを向いているシオンからは、そんなジュンの姿も、そしてジュンの持つがらくたも見えないはずだが、ジュンにはすべて彼に見透かされているように思えた。
「見てた。昨日の、リュオン街道の時」
びくりとした。この剣はまさに、その戦闘中に折ってしまったものである。昨日のシオンは正気を失っていて、到底まともな状態ではなかった。だから、彼に申し訳ないと思いつつ少し安堵もしていたジュンだったが、まさか、覚えていたのか。
シオンは、鍛冶部屋の隅にあるガラクタ入れを、背中越しに親指で指した。
「そこの、折れた武器の山。すべてにシークレットパワーがついてる。それも、計算されたかのように同じやつ。だから『偶然宿った』はないし、そもそも素材になってる隕石はすごく硬くて粘りもあるから、衝撃を受けたところでそうそう壊れるものじゃない。あなたは武器の強度がいまいちだと言ったけれど、見た限り刀鍛冶の練度が悪いとも思わない。勝手に割れたにしては、破損の仕方も不自然だった」
シオンが、淡々とした声音で並べるのを、ジュンは青ざめながら聞いていた。
「あれ全部、あなたが自分で折ったんだろう? 武器をすぐ壊す人ってのは、まあわりといるけど、頑丈な隕石製の大剣を枯れ枝みたいにぽきぽき折る人がいるとはね。少しだけ、驚いた」
ジュンは完全に言葉を失った。昨日、たまたま目撃したからではない。シオンには最初から見抜かれていたのだ。
一通りシオンが話し終わると、乾いた沈黙がジュンにずっしりとのしかかった。これだけしゃべっても、シオンは一度もジュンのほうを見ない。彼の向こうから、かたかたと楽器をいじくる音だけがしていた。
無言の背中が、怖かった。
人から嫌われること。他者からの拒絶。それが、ジュンがもっとも恐れ、怯えていたことだった。
ジュンは自分の持つ力が嫌いだった。並外れた力も、AF使いの能力も。
家族が壊れた原因になったからである。
やんちゃだった性格は疎まれ、AF使いの能力は気味悪がられた。父にも母に捨てられて、一人になったジュンは、人並み外れた能力は極力伏せ、温厚な笑顔の仮面をかぶって、粗野な貌を入念に覆い隠すようになっていった。他者へも、そして自分にも。現在、それを知るのはごく親しいわずかな仲間だけだ。
絶対に、今のシオンのようにだけは、されたくなかった。だから、必死で隠していたのに。
「いいんじゃないの。人より力が強くたって」
「え?」
シオンがぽつりと言った。
思わずジュンは、白くなっていた顔を上げた。
作業の音は、相変わらず止んでいない。
せっせと手を動かしながら、シオンはいつもの抑揚のない口調でこう言った。
「他人に見せない顔、見せたくない顔なんてきっと、誰でも持っている。あなたが強いから救えた人間や救われた人間だってたくさんいるだろう。俺もそう。だから、もしあれこれ言うやつがいたなら、勝手に言わせておけばいい。もちろん、あなたが他人に黙っていてほしいというなら黙っているし、忘れてほしいのなら、見なかったことにする。ただ、俺は少なくとも、それであなたに対する見方は変わらない」
「見方?」
「バカみたいにお節介で無駄にゴリラで、スライム相手にハート喘ぎしてる人」
ジュンが想像しなかった返事だった。
最初固まったジュンだったが、理解するにつれてだんだん顔が赤くなり、しまいには困りきって笑ってしまった。
シオンは黙々と手製の木琴をいじっている。ジュンの並外れた力や、他人には隠している裏の貌のことなど、シオンはこれっぽっちも気にしていないようだった。
「ありがとう。でも、できたら他の人にはナイショにはしてほしいかな
……
ごめんね」
「
……
そう」
シオンへの罪悪感はあった。だが、嘘はつけなかった。シオンの気持ちはありがたく嬉しいけれど、長年秘密にしてきた事柄を公にする勇気までは、ジュンはまだ持てない。
「俺は?」
「シオン君は
……
」
ちょっと、迷ってから答えた。「君が見たまんまで、いいかな」
シオンはやや間を置いてからやはり、そう、と短く返事した。言動があまりに淡泊なせいで腹に一物ある感じにも見えるのだが、どうやら単純にこれが彼のテンポらしい。
「一つ、条件があるんだけど」
「条件
……
?」
シオンが初めて、ジュンを向いた。
「
……
昨日の、俺の醜態を忘れてくれるなら」
そう言うシオンは、いつになく不本意そうな表情に見えた。
ジュンは思わず笑った。
「いいよ、約束する」
シオンは少しの間、ジュンの顔を見ていた。
しかし結局何も言わずに、無言で楽器に向き直った。相変わらず、なにを考えているか分かりにくい少年だ。だが、ジュンはもう不安には思わなかった。
「そうだ。作ってた楽器がそろそろ完成しそうなんだけど」
シオンが、傍らに置かれてあったマレットを取り上げた。
マリンバの鍵盤を、ポンと叩く。すると、どこかで聞いたことがあるようなないような、かわいらしいメロディが鳴りはじめた。
「風呂が沸いたときの曲、どっちにしようかずっと悩んでて。とうとう最後まで決めきれなくて、気分で好きな方に切り替えられるようにしてみたんだけど」
シオンが別の鍵盤をポンと鳴らすと、今度はパッヘルベルのカノンが鳴りはじめた。
どちらの曲も、なぜかものすごく絶妙に風呂が沸いてそうだが
……
どうしてそう思ってしまうのか、そしてこの楽器がどういう仕組みかは果てしなく謎である。そしておそらくこの少年、高い技術力の使いどころを完全に間違えている
……
。
「そ、そうなんだ
……
。細かいところまで凝ってくれてありがとね」
シオン君は、深く考えているようで天然なだけなのかもしれない
……
。
ジュンはちらっと思った。
とりあえず、シオンにとっては、ジュンの裏面よりも、お風呂の曲を二社どちらのメーカー基準にするかのほうがよほど問題らしかった。
※※※
◆ジュンくんとシオン。ちょっと裏設定◆
ジュン
子どもの頃、AF使いの能力が原因で家庭崩壊し、親に捨てられている。
現在のマイホームは、孤独になってしまった彼が、ポストに導かれてたどり着いた場所。
元は雑で少し荒っぽい性格だったが、人に嫌われたくないあまり、AF使いの能力や並外れた力は隠すようになり、よく言えば誰にでも優しい、悪く言えば八方美人な性格を手に入れた。現在の彼の持つ明るさや包容力は嘘ではないが、自分も結局は親のような、愛情のない人間なのでは、との不安もひそかに抱えている。
ジュンの本来の力量を知るのは、恋人のユノやレディパールなどわずかな仲間のみ。また、親友の瑠璃にだけは、元の性格である素に近い顔を見せている。
文中のシークレットパワー、大剣に『神々の黄昏』、サブ武器の片手剣に『破壊神』をつけている。
シオン
物心ついた時からマイホームで一人暮らし。特別な生い立ちや生まれは背負っていない。本来の性格は思慮深く受容的。女主(のちの相方)が見たらひくらいの純粋培養ぶりだったが、周回するうち世間ずれしてすっかりひねくれた。旅を止めた理由はAF使いの能力を失くした(イメージする力がなくなった)から。今でも根っこの性格は変わっておらず、態度の悪さのわりには面倒見がよく責任感が強い。
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