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しちろ
2024-07-25 19:24:53
2038文字
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聖剣2
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森とあなたが教えてくれたこと
ワンライ。ポポイ、ランディ、プリム。
「四季の森。綺麗なところだろ?」
真っ先に森の小道に飛び込んで、ポポイは得意げに胸を反らした。
それはパンドーラ王国より遥か北。人間には容易にたどり着けない、大陸の台地にある。
妖精と精霊が住む、不思議な不思議な四季の森。桜咲く春から力強い緑の夏、鮮やかに紅葉する秋、真っ白な雪が降り積もる冬。マナの奇跡か女神の御業か、すべての季節が存在するこの森は、妖精族の自慢なのだという。
四季の森をポポイに案内されながら、プリムはうっとり吐息を漏らす。
「こんな場所があるなんて夢みたいね。この一か所で、一年全部巡れるなんて」
「だろ? オイラたち妖精の子どもは、春の森で花見をして、夏の森で水浴び。お腹が減ったら秋の森で木の実を拾って、冬の森で雪ダルマを作って遊ぶんだ。で、疲れたらまた春に戻って、身体中にお日様を浴びながら昼寝するのさ」
ポポイは楽しげに語りながら、森の中心を指さした。
「そこにモーグリの村があるだろ? 妖精族とも仲良しでさ。子ども同士でかくれんぼしたり追いかけっこするんだ。モーグリってフカフカしてるだろ? お日様を浴びると、それがもっとフカフカになるんだよ。昼寝するとき、オイラ、そのお腹を触らせてもらうのが好きだった」
懐かしそうに言って、ポポイは言葉を切った。頭の耳が、しゅんと下がる。
「でも、もう、どれもできなくなっちゃったな」
ポポイの語る森の姿は、今はもうない。急激なマナの減少により四季の森は魔物で溢れ、荒らされ、モーグリたちは村の外に出られなくなった。
そしてポポイの故郷
――
妖精の村は、魔物によって無残に破壊されてしまった。今や妖精族は、盲いた長老と最年少のポポイしか残されていない。
「この森、白い聖獣がたくさん飛んでるだろ? 警戒心が強くて、なかなか地上まで降りてきてはくれないんだけど。あんな風に、オイラたちも空が飛べたらよかったのにな。そしたら、せめて」
たとえ村は壊れても、仲間たちだけは逃げおおせたかもしれなかった。生きていたかも、しれなかったのに。
叶わぬ願いを心で思い、ポポイは奥歯を噛んでぐっとこらえる。森の景色がじわりとにじむ。
しかし、ポポイはこみ上げるモノの代わりに笑顔を作ると、誤魔化すように頭を搔いた。
「
……
ごめん、辛気臭くなっちゃったな! オイラは大丈夫! 子分に心配かけるとか、親分の言うことじゃねえや」
威勢よく言い放ち、いつものちょっと不遜な顔でケラケラ笑う。おチビちゃん
……
と小声で呟いて、プリムが心配そうな顔をした。
「ポポイ、手」
それまで黙っていたランディが、ポポイの前に握った手を差し出した。
「ん?」
反射的にポポイが手を上向ける。
ランディが手を開き、するとたちまちポポイの小さなてのひらが、零れんばかりの果実と木の実でいっぱいになった。
「わ、わ! アンちゃん、いつの間に!」
「僕も村にいたころ、よく森で時間をつぶしたから。こういうの拾うの得意なんだ」
ポポイと違って、とても自慢にはならないけどね。そう言ってランディは、はにかんで笑う。
ポポイはランディをぽかんと見上げ、続いて、山盛りの秋の実りをまじまじと見つめた。林檎に葡萄、栗、馬酔木、無花果などなど。この兄ちゃん、普通に見えて時々謎
……
というか、たった一握りの手の中に、どうしてこれだけ持っていたのやら
……
。まるで魔法だ。
ポポイは果実の山を穴のあくほど見つめた後、まとめてポイっと口の中に放り込んだ。
「えっ、ポポイ!?」
「おチビちゃん!?」
驚いたランディとプリムが、身をかがめてポポイをのぞき込む。どんな大口の持ち主でも、常人には到底無理な芸当だ。
「
……
味は、前と変わんないや」
焦る二人をしり目に、ポポイは涼しい顔で果物も木の実も一緒くたにかみ砕き、それからごくんと飲み込んだ。ぷはーと満足げに息を吐き、ランディとプリムに向けてニヤッと笑う。
「アンちゃんもおネエちゃんも、そんな顔すんなよな。オイラ、まだ、妖精の仲間も村もこの森も、諦めたわけじゃないんだぜ。なにしろオイラには、リッパな子分が二人もいるんだしな」
ま、勇者とか言うには、ちょっと頼りないけどさ。
小生意気な口ぶりで言いながら、ポポイはくるりとうしろを向き、目元をぐいっと袖で拭う。
懐かしい記憶のままに森の果実は甘く、酸っぱく、木の実は香ばしく
――
そして今の自分には、新たに出会った仲間がいる。今度こそ視界が、溢れ出る何かでぼやけてきた。
「次に遊びに来る時は、二人も一緒だかんな! オイラのストレス、限界までたまってんだかんな。オイラの気の済むまで付き合ってもらうぜ、覚悟しとけよ!」
精一杯の気勢を張って、大きく両腕を振り、四季の森をずんずん進む小さな背中。
ランディとプリムは顔を見合わせてから、その背に向かって優しく笑いかけた。
「もちろん、ポポイの/おチビちゃんの好きなだけ」
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