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しちろ
2024-07-25 19:10:55
1871文字
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聖剣3
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王女様のハグ
ワンライ。アンジェラデュランホークアイ。
「
……
やった」
見た? 見た
……
わよね?
アンジェラは、信じられないという顔でデュランとホークアイを振り返った。
ウィスプと契約して、ついに覚えた、初めての魔法。ロッドから放ったホーリーボールが敵を撃ち、そして、屠った。
たしかに見たぜ、とうなずくデュランと、やったじゃん♪とウインクするホークアイ。
こわばっていたアンジェラの表情が、みるみる満面の喜色で彩られる。
「やった、やったわ! 私、とうとう使えたのよ!」
アンジェラは奇跡を起こしたロッドを握りしめ、ぴょんぴょん跳びはねる。そして、次々と仲間に抱きついた。
「うわっぷ!」
「わっ、アンジェラ!」
勢いよく飛びつかれて、デュランとホークアイがそれぞれに声を上げる。
レオタード姿の美女に抱きつかれた十七歳男子たちのお気持ちたるや
……
であるが、当のアンジェラときたら、もう、その辺のサボテンでもラビでも抱きついて、片っ端からキスしたいくらいの気分だった。なにしろ、生まれて初めての、待望の待望の待望の、待望の初魔法だったのだ。今だったらあの、超超超超~むかつく紅蓮の魔導師にすらハグして投げキッスできる気がする。
……
いや、さすがにそれは無理だけど!
顔を赤くしたデュランが、なぜかアンジェラから目をそらしながら苦言を呈した。
「お前なあ、誰彼構わず抱きつくんじゃねえよ。仮にも女なんだし、しかも一国の王女なんだろうが。その
……
慎みとかよ」
デュランは意外と細かいというかお兄ちゃん気質なのか、王城とかと違って町には危ない奴もいるし勘違いとかされたら
……
などとブツブツ言っている。
「あっ、言っとくけどよ、オレは勘違いしてるわけじゃねえぜ? そういう変な奴も世の中にはいるからよ
……
」
「えっ、なに? デュラン。なんか言った?」
デュランの小言だか独り言だかよくわからない台詞だが、どちらにしろ浮かれきっているアンジェラは聞いていない。かわりに上機嫌のホークアイが答えた。
「なぁに言い訳してるんだよ、フォルセナの剣士殿」
別に言い訳してねえよと言うデュランだが、自ら墓穴を掘っていくスタイルであることに彼自身は気づいていない。
ホークアイは目を閉じ、ふぁさ、と長髪を細長い指で梳きあげる。
「彼女のハグなら、オレはいつでもオッケーだぜ? 健やかなるときも病める時も迷わずこの胸の中に飛び込んできてほしいというか、美女とのスキンシップは二十四時間年中無休で大歓迎さ」
「お前はお前でサイテーだよな
……
」
デュランの目には、なんか、ホークアイが口元に薔薇をくわえているのが見えた気がした。なお、現時点でのホークアイのクラスはシーフである。
「デュラン、キミはあの喜びように水を差すってのかい? それこそ野暮ってもんだぜ? レディの喜びや悲しみや涙を黙って受け止めるのは、男の役目ってもんだろ」
「
……
お前、この先もそんなノリでいると、本命ができたときに困ると思うぜ」
「そうかい? 朴念仁のキミに恋愛指南されるとは思わなかったけどなぁ」
「誰が朴念仁だ、誰が」
にやにや笑うホークアイだが、そんな彼のナンパ成功率が決して高くない(どころか限りなく低い)ことには、デュランはすでに気がついている。
ホークアイはふいに表情を改め、ちょっと肩をすくめた。
「でも、デュランの懸念ももっともだと思うぜ。彼女、派手そうな感じに見えるけど、あの警戒心のなさってやっぱり、温室育ちの王女様ってことだろうし」
「だな。一度、ビシッと言っとくか」
もとが並外れて美しく、目立つ容姿のアンジェラである。いつ不埒な輩に目を付けられないとも限らない。アンジェラが落ち着いたところで、節度を持った行動をするように忠告することで二人は一致した。
だが。
「失礼しちゃうわね。私だって、誰でもハグしていいなんて思っていないわよ」
……
どうやら、彼女のほうが何枚も上手らしかった。
目を点にするデュランとホークアイ。
アンジェラは優美に笑いかけ、投げキッスをする。それも、健全な青少年を大いに勘違いさせそうな、こんな言葉とともに。
「ましてや年頃の男の人に。ね?」
アンジェラが去った後、デュランはへなへなとその場にしゃがみ込んだ。勢い任せのハグはまだいい。だが、今度の台詞こそ、どうとらえたらいいのだ。
「あいつ
……
わざとやってねえか
……
」
「さぁ、ねえ?」
意味深な言動にデュランはますます混迷を深め、そんな彼を見てホークアイはまたしてもにやにや笑うのであった。
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