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しちろ
2024-03-05 14:39:17
1408文字
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聖剣3
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還らぬ日々、遠い記憶
ワンドロワンライ参加作品。アンジェラとフランマ。
「アンタまた、そんな本読んでるの?」
「アンジェラ王女」
アルテナ王宮にある図書館。
人目につかない隅っこの席で勉学に励んでいたフランマは、聞き慣れた声に顔を上げた。
いつの間にやら王女であるアンジェラが、両手を腰に当てて彼をのぞき込んでいる。
「ええとなになに、『古代精霊魔法概論』? こっちは『マナの発展と魔法技術の進化』
……
まぁた、無駄に難しいのを」
フランマの横に積み上げられた本の山を見て、アンジェラは嫌そうに顔をしかめた。
そうですかね、とフランマは情けなく眉を下げて小首をかしげる。
「読むのは楽しいですよ。誰に何と言われようと、私はこれしかできませんから」
「そうかしら? 根詰めて読みきったところで、実際には火の粉ひとつ起こせやしないくせに」
「
……
。
……
でも、学ぶのも、楽しいですよ」
「楽しくないわよ。暗記ばかりしたところで、要らない知識ばっかり増えて頭でっかちになるだけだわ」
筆記や座学だけなら、フランマの成績は上位に食い込む。だがいざ実践となるとからきしで、そして魔法を使えない魔導士の地位は限りなく低い。腕利きの魔導士ならいざ知らず、使えもしない術のために脳みそを酷使するなんてよくやるわ、とアンジェラは思っている。
アルテナでも珍しい、落ちこぼれの魔法使い。この王国で
――
しかも王立魔法研究所などという一流機関で学びながらまともに魔法を使えないのは、アンジェラとフランマの二人だけだった。
「王女は、私などが読書しても無駄な努力だと思いますか」
そこまでは言ってないけどさ。アンジェラは口をつんととがらせた。
「私とアンタの違いって言ったら、努力家かそうじゃないかってことね。私は魔法なんてとっくに諦めてるけど、精霊だとかマナの女神サマとやらがアンタの頑張りに対して微笑まないのはつくづく気の毒だと思うわ」
努力は報われるだとか、信じれば夢は叶うだとか。そんなの嘘っぱちだとアンジェラは思う。そうでなければ、人の何倍もがんばっているフランマが魔法を使えないのはおかしいだろう。
フランマはアンジェラの毒舌に嫌な顔一つせず、どころか困り顔になった。
「アンジェラ王女は、私などよりよほど努力されているでしょう。いえ、この城の誰よりも魔法に真剣なことは私が知っていますよ」
アンジェラが片眉を上げる。
「
……
なんでアンタが、そんなこと言えるのよ」
「先日の夜、図書室でお見かけしましたので」
研究所の消灯時間などとっくに過ぎた夜。
アンジェラは誰もいない図書室で一人、魔導書を読み込んでいた。
何冊も、何冊も。繰り返し読んでは指を振り、呪文を唱えて何も起こらず、机に臥せた。
王女であるアンジェラは、魔法を使えず思い悩む姿など、臣下に見せられなかったから。
嫌なところを見られたと思ったアンジェラに、フランマは淡く笑った。
「他の誰にも言ってはいませんよ。あの夜見た光景は、私の胸だけに収めておきます」
「
……
当たり前でしょ」
すねた顔で言いながら、アンジェラはフランマの隣の椅子をひいた。ほかの誰にも見えない、図書館の隅っこの席。ここなら王女がいることも分からない。
「王女?」
「アンタだって、ずっと一人で勉強してるのも気が滅入るでしょ。たまには付き合ってあげるわよ」
フランマの横に腰かけながら、アンジェラは本の山から一冊手に取った。
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