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しちろ
2023-07-18 21:42:07
1422文字
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聖剣3
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一撃
ゴドハン・ニンマス・パラディンの男子パVS死を喰らう男。ワンライ参加作品。1400字。
指をそろえて立て、ホークアイが素早く印を切る。
「土遁!」
鋭い掛け声とともに地面が激しく隆起した。巻き起こる砂煙が辺りを覆い、死神の視界を見る間に遮る。
「ケヴィン、行け!」
地に片手をつくホークアイの脇を、紅色の衣をまとった狼が疾風のごとく駆け抜ける。
「おおおおっ!」
バンテージされた素足で地を蹴り、さらにデュランが斜めに掲げたシールドを蹴り上げると、獣
――
ケヴィンは砂煙の中心に向かい高く跳躍する。練りこまれた闘気を含んだ熱い呼気が、わずかに開いた口元から漏れ出た。
「死を喰らう男
……
オイラ、お前だけは許さない!」
金色の瞳を燃え上がらせ、紅色の獣は怒りと牙をむき出しに、中空より躍りかかる。
死を喰らう男。ケヴィンを騙し、世界中に多くの死と災厄を振りまいた男。
命をさんざん弄んだ。愚弄した。人も動物も、敵も味方も関係なく、ただ自分の欲望を満たすためだけに無数の魂を奪い、飲み込んだ。
『カール! カール!』
『親友の命を自らの手で奪ってしまった』というのは結果的にはケヴィンの早とちりだったが、カールの件で彼は思い知ることになった。命の重み、大事な存在を失うことの苦しみ、悲しみ。祖国を発ったケヴィンは、各地で同じ苦しみを抱く人々を目の当たりにした。
『神獣がよみがえれば、世界は死体だらけ! まさしく魂の食べ放題ですヨ!』
おどけた衣装に身を包み、軽薄な言動で人々を操りながら、この男はどれだけの悲劇を振りまいてきたというのか。下卑た笑みを浮かべ、己が喰らってきた魂の一つ一つに、どれほど価値があるのかなど一顧だにすることなく。
「キヒィ、この、クソガキ
……
!」
死を喰らう男に迫る拳。死神は毒づくが、もはや逃れようもない。四方を土の檻に囲まれ、逃げ場を失った死を喰らう男は、ケヴィンの制裁を受け入れるよりなかった。怒りと闘気と重力と。多くを乗せた拳聖の拳がめりこみ、死神の顔は原型を失うまでに大きくひしゃげた。
「こノ、クソ、が」
再度の毒づきも、そこまでだった。
砕けた顔を中心に死神の身体は崩れていき、塵となって消え去っていく。
と、ほぼ同時に砂煙が晴れ、紅色の武闘着が現れる。狼から見慣れた少年の姿に戻りながら、ケヴィンは静かに地面を見つめていた。怒りに任せに振るわれたようにも思える拳は、しかし血に濡れることはない。聖なる武闘家の拳は流血を良しとしない。
「
……
やったのか?」
駆け寄る仲間二人に、ケヴィンは首を横に振った。
「
……
ううん、倒したけど、あいつ本当には死んでない。きっと、どこかでまだ生きてる」
「
……
そうか」
またいつか、会うかもしれませんネ
……
どこかで、男のそんな嘲笑が聞こえた気がした。死を喰らって生きる男は、死ぬことはない。
無念さをにじませる少年たちの周りで、ふわり。青白い光が無数に浮かんだ。
「ああ、やつに喰われた魂が
……
」
呟いたのはデュランか、ホークアイか。
身体を失うと同時に、死神は喰らった魂を吐き出してしまったらしい。永き呪縛から解き放たれた魂たちは、三人の周りで輪を為し、やがて四方八方へ飛び散っていく。暗い幻の神殿にあってなお、躍動する魂の輝きは美しかった。
「ごめん
……
オイラ、みんなを助けてやれなくて。せめて、待っている人のところへ、帰って
……
」
拳聖の哀悼に、忍者は目を伏せて黙とうし、聖騎士は無言で剣を胸の前に掲げた。
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