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しちろ
2023-07-18 05:04:06
1242文字
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聖剣3
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きみと約束
聖剣3。ケヴィシャル。一緒に花火を見る話。1200字。
「はなび、はなび! みえないでち!」
芋の子を洗うような夏祭りの夜。背の高い大人たちに挟まれて、シャルロットがぴょんぴょん跳ねている。
世界が平和を取り戻したこともあり、今年の花火はいっそう見事だ。大輪の華がひとつ打ちあがるたび、周囲からは歓声が上がっている。けれども、シャルロットには花火の賑やかな音が届くだけ。この小さな体では、どうがんばったところでちっとも見えない。
「なんとか、シャルロットも
……
わっ!?」
「これなら見えるか?」
弾む身体が、ふわっと宙に浮いた。
何事かと思う間もなくみるみる視界が高くなり、気がつけばシャルロットはケヴィンに肩車されていた。
「す、すごいでち! いつもはシャルロットをみおろしているものどもの、あたまのてっぺんがよぉ~くみえるでち!」
いろんな髪色をした人の波、街中に灯される祭りの明かり。打ちあがる花火が誰よりも近く見える。小さな彼女にはまるで別世界だった。
とんでもない物言いはさておいて、興奮のあまり頬を桃色に染め、ひとしきり大はしゃぎしたシャルロットだが、はたと我にかえった。
「
……
なぁんて、よろこぶとおもったら、おおまちがいでち! シャルロットは、はなもはじらう15さい! もう、かたぐるまされてよろこぶようなおこさまじゃないんでち~!」
「う~、わかった、わかったよ!」
騒ぐシャルロットに髪をぐしゃぐしゃにされて、ケヴィンは慌てて彼女を下ろす。シャルロットは子ども扱いされるのが嫌いだ。厚意でしたつもりが、微妙に彼女のプライドを傷つけてしまったらしい。
どうしようかなと頬をかいたケヴィンは、あっと声を上げた。
「そうだ!」言って、シャルロットの手を取った。「シャルロット、ついてきて!」
「どこいくでちか?」
星屑をちりばめた夜空に、花火の音が鳴り響いている。
戸惑うシャルロットの手を引き、ケヴィンは人混みを器用に抜けた。路地へ入り、街の裏手に回ると、誰もいない小さな丘の上に彼女を案内する。広葉樹に覆われた丘の、この場所だけは木々の枝葉が開けていて、夜の空が綺麗に切りとられていた。
「わああ! はなびがよくみえるでち!」
「ここ、オイラの秘密の場所。やっぱり、ここならよく見える」
しだれ柳、小菊、牡丹。空を彩る大輪の花々。丸い夜空に花火が次々打ちあがる。ふたりじめなんてぜいたくでちね、と彼女らしいセリフを口にしながら、シャルロットは空の芸術に魅入っていた。
ここに連れてきてあげて良かった。
一緒に空を見上げるケヴィンの手に、ふいに柔らかいものが触れた。
「あのね、ケヴィンしゃん」シャルロットの手が、ケヴィンのそれに重ねられていた。「らいねんは、ここではじめからふたりでみるでちよ」
彼女が照れたときにする表情。そっぽを向いたまま、ふっくりふくらませた頬が、少し桃色に染まっていた。
ケヴィンはちょっと笑って、「うん、約束だ」
小さな手を握り返し、彼女と来年の約束をした。
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