しちろ
2023-05-08 20:34:35
5075文字
Public HOM
 

ナイトソウルズ@19年後

HoM。ED後、旅に出たナイトソウルズが19年後の3世界に到着した話。PT:ホークアイ、アンジェラ、ケヴィン。5,000字。

 次元のはざまを東へ西へ。
 アニスの力を追ってどこへでも。次元のはざまを航行するナイトソウルズ。

「おーい、なんか見えてきたぜ~」

 操舵輪を握るキュカが伝声管から呼びかけた。
 ユリエル、ジェレミア、ロジェ、テケリ。聞きつけた仲間たちがわらわらとブリッジに集まってくる。
「ありがたい、そろそろ物資の補給時でしたから。さて、今度はどんな世界でしょうね」
「あまり期待はしないほうがいいな。あたしは、こないだみたいなのはごめんだぞ」
「スパッツの人が突撃してきたアレだろ? 確かにあのジャングルは参ったな……
「そうでありますか? テケリはご飯がおいしければ何でもいいでありますね」
「俺は、贅沢は言わねえぜ。美味い酒とめくるめく美女との出会いさえあれば……っと、着陸するぜ」
 人目に付きにくそうな場所を探し、高度を落としたナイトソウルズは、キュカの慣れた操縦で着陸する。
 降りたそこは、どこかの山の中腹らしい。上方に堅固そうな城が見えている。
「あれは、ものすごく見覚えが……
 眩しい日差しを遮るように手を翳し、キュカが遥か山の頂を眺めやる。同じく見上げていたほかの四人も、同様の感想を抱いていた。
……ローラント城ですね」
 ユリエルが言うまでもない。


「こんな形で母国に戻ってくるとはな……
 ちびたタバコをもみ消しながら、信じらんねえとキュカがぼやいている。
 近くにあった漁港で調べたところ、ここはロジェたちがいた時代の十九年後の世界らしい。ということはナイトソウルズに在籍していた仲間たちは普通に健在だろうし、なんなら各国の王や女王として世界を担っている頃だろう。
 そして、懐かしい面々がいるとすれば、鋼の精神力の彼らも少しは悩む。
「会うか? 止めるか?」
 例えばここ、ローラントならアルマやジョスタに会えそうだ。
 しかし隊長のユリエルは首を横に振った。
「私たちは本来、いるべきではない過去の人間です。この世界は二十年近く、我々抜きで歴史を刻んでいる。そこへ変に干渉するような真似をするのは得策ではないでしょう」
 他のメンバーも、ユリエルとほぼ同意見だ。それ以外の知り合いにしても、死んだと思っていた亡国の連中が二十年前の姿で現れたりしたら、卒倒するかもしれない。
「歳喰ったアルマの顔見るのも、ちょいと面白そうだったけどな。……いい男見つかったんかな、あいつ」
「キュカさん、余計なこと言ってると、アルマさんにはっ倒されるでありますよ。大体、キュカさんもアルマさんも、いつまで経っても結婚できないのはお互いさまで……
「テケリ、地味にお前のほうが失礼じゃねえか。悪かったな、モテなくて」
「アイタタタタ、痛い! キュカさん、痛いであります!」
 実際、十九年経ってアルマがどうしてるかなんてわからないのだが。
 いつも通りのキュカとテケリのやり取りを背景に、他の三人はとっとと意見をまとめにかかっている。
「別に知り合いに限らず、ペダン人ってだけでも、あまり人からよくは思われないだろうからな。目立つ行動は避けて、アニスに連なる力がないか探すか」
「だな」
 ロジェにジェレミアがうなずく。ペダンは十九年前、各国に侵攻し多くの人を殺した。記憶に残る者は多いはずだ。
 めぼしい情報を集め終え、ペダン一行が漁港をあとにしようとした時だ。
「やぁ、変わった格好の御一行様だね」
「ん?」
 背後から声がかけられ、五人が振り返る。若い男だ。
 すらりとした容姿の青年だった。琥珀色をした切れ長の目が印象深く、紫がかった長い髪をひとつにまとめている。
 彼は一行のうちジェレミアに目を止めると、にこっと微笑んだ。
「おっと美しいお嬢さん、あなたのような方と、こんなところで会えるとは。よかったら今度、オレと一緒に食事でも」
「なんだ、貴様。あたしにケンカ売ってるのか。名を名乗れ」
「オレとしたことが、失礼。オレはホークアイ」
「ホ……!?」
 一行の何人かは、確実に声を上げた。ユリエルなどはおくびにも出さなかったが、とりあえず、キュカとテケリの声はでかかった。
 ホークアイは軽く手を振ると、話を続ける。
「すまない、ナンパは本題じゃないんだ。オレたち、各地を旅をしていてね。察するに君たちも外から来たようだから、変わった話でも聞けないかと思ってさ」
「なるほど、情報交換ですか」
 そんなホークアイとユリエルのやり取りを聞きながら、キュカがロジェに耳打ちする。
……まさか、ホークアイってあれか? ファルコンと、あの、イケメンだけど影の薄いダンナの息子か」
「サンドアローな」
「ロジェ、よく覚えているでありますね」
 言いつつ、ペダンの面々はホークアイの後方がとっても気になっていた。
 腕組みして立っている、赤いレオタードに身を包んだ、ナイスバディな美女。
「ん? なによ?」
 美女が、色気を感じる仕草で髪をかきあげる。
 ……こちらも知り合いに似ている。めちゃくちゃ似ている。
「あんた、もしかしてヴァ」
 言いかけたジェレミアの口を、ユリエルが笑顔で塞いだ。
「申し遅れましたね。私はユリエル、こっちはジェレミア。我々は名を知られていない、小さな島国出身の者です。あなた方も見たところ、この国の方ではないようですね。しかも、それぞれに故郷が違うようだ」
「あんた、よくわかったわね。私はアルテナ出身のアンジェラ」
「オレはナバール。砂漠の国から」
「オイラ、ケヴィン。ビーストキングダムから、きた」
 五人はそれぞれ、彼らに親の顔を重ねていた。ヴァルダ&リチャードとファルコン&サンドアロー。国も見た目も、完全一致。
……じゃあ、やっぱりお前ら」
 一瞬間を置き。
 ぶほっ! 思わず吹き出したキュカの口を、今度は後ろからロジェが羽交い絞めにして塞いだ。
「どうしたんだ? 何かおかしいことでもあったかい」
「いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ」
 愛想笑いをしながら、ロジェはキュカを隅っこへ引きずっていく。
 十分に距離をとったところで、ロジェが親友を怒った。
「キュカ! 不審すぎるから! それに失礼だし!」
「だってよぉ、親がファルコンとヴァルダとリチャードだぜ!? こんなチャラい息子とド派手な娘に育ってるとか思わねーじゃん! ぶははははは!」
「キュカ、笑いすぎだろ……!」
 あと、ヴァルダがキュカの爆笑ぶりを見たら、たぶんブチギレる。少々引っ込み思案な氷の魔女は、キレさせると最凶に怖い。
「ロジェ、お前だって説得力ねえよ! なんだかんだ笑ってんじゃねーかよ!」
「い、いや……ごめん」
 ホークアイもアンジェラも、真面目な親のイメージとはだいぶ違う。どういう育て方をしたのかは不明だが。
 笑うやら怒るやら忙しい二人の元にテケリが近寄って来て、こそっと言った。
「あの金髪の子は、ガウザーさんの息子さんでありますよね……たぶん……
 あんまり、というよりぜんぜん似てないけど……
「そう……なん、だろうなあ……たぶん……
 同意はしたものの、キュカは自信なさそうだ。
 ケヴィンはほかの二人と雰囲気が違い、とてもいい子そうなのだが、あの一人だけ劇画みたいな作画している獣人王の息子がこんな優しそうに育っているとか、それはそれで面白い。
「さっきから、なにをこそこそ喋ってるんだい?」
「おっと!」
 いつの間にかホークアイが近づいてきていた。気配なんて一切感じなかったし……
「やはり血筋か……
「ん、なにがだ?」
 ニコニコとぼけて見えるが、やはりナバールの盗賊。油断ならねえ息子らしい。
 キュカが慌てて話題を逸らす。
「そ、そうだ! もしかしてお前たち、付き合っていたりするのか?」
 キュカ……。ロジェは呆れている。
 どういう話の流れだが意味が分からないが、まあ確かに、ホークアイとアンジェラはけっこうな美男美女だ。
 言われて、ホークアイとアンジェラは顔を見合わせた。
「いや、全然?」
「そうねえ、彼がいい男なのは認めるけど、全然タイプじゃないし」
……
 我が道を行く二人らしい。
 キュカは尤もらしい顔つきでケヴィンの背中をぱしぱし叩いた。
「ケヴィン、なんていうか……がんばれよ」
「なんでだ?」
「なんか……うまく言えねえけど、苦労してそうで……
「オイラ、そんなこと少しもないぞ。ホークアイもアンジェラも、とってもいいやつ」
「なら、いいけどよ……
 なかなか強烈キャラっぽそうな仲間と旅する息子を、オヤジの獣人王は、なんと言っているのだろうか。
 まだ少年と言っていい、ナイトソウルズの面々よりかなり若そうなホークアイは、歳に似合わぬ大人びた顔で笑った。
「手間を取らせたね。偶然会ったが、楽しい時間だったぜ。こういうのも旅の醍醐味ってやつかもな」
「私たちもしばらく、各地を旅する予定です。あなた方とは、またどこかでお会いするかもしれませんね」
「そうかい、今度会ったらみんなで酒でも飲もうぜ。また、情報交換も兼ねてさ」
「おう、それはいいな。楽しみにしているぜ」
 キュカが拳をあげると、ホークアイも拳を作りそれに応えた。なるほど、ファルコンの息子だ。
「ジェレミアも、今度はよろしくな。キミが好きなだけ、オレがおごるぜ?」
「せっかくのところ悪いが、あたしもお前はタイプじゃないな」
「あらら、それは残念……
 かくしてナイトソウルズ一行はホークアイたちに別れを告げ、アニスの残り香を追って、十九年後の世界へ旅立った。


「時が経ち、戦線を共にした仲間たちの子が、また仲間となって旅をしている……縁とは不思議なものですねえ」
 ナイトソウルズのブリッジで、ユリエルがしみじみと言っている。
「隊長、そんな感慨に耽るほど、あんた歳喰ってねえからな」
「それはそうなんですが、彼らの子どもたちだと思うと……
 ペダン一行は育った故郷も世界も後にして、遥かな旅に出た。そのことに後悔はないが、二度と会えない仲間たちへの想いを忘れたことはない。
「ケヴィンはオヤジにぜんぜん似てなかったけどな」
 そもそもあれ、本当にガウザーの息子か?
 キュカの疑問にユリエルが答える。
「ガウザーもああ見えて細かな気遣いをする人ですからね。きっと我が子に可愛いペットなど与えて、命の大切さを教えたのですよ」
 わんちゃんとか猫ちゃんとかハムスターとか。
「ぜってえ、ねえと思うぜ……
 適当なことを言うユリエルに、キュカがツッコミを入れている。見た目も中身も似てないし、本当にケヴィンだけは違うかもしれない。
 しかし、息子なら息子で疑問が残る。ガウザー氏……お相手はいったい誰だ。
「まさか、お前じゃねえよな。ジェレミア」
「なんでそうなる。あたしがいつどうやってあいつの子どもを産むんだ」
「いや、けっこういい雰囲気だったりしただろ。月読の塔で仲良くじゃれてたじぇねえか」
「下僕の件か? だったらあれは、あたしがあいつをいたぶっていただけだ」
 こぇぇな、お前……とキュカが言うのを聞き流し、ジェレミアはガウザーの焦り顔を思い出している。予告なしにあいつに会いに行ってやり、「久しぶりだな、下僕が会いに来てやったぞ」とか言うのは楽しそうだ。
「しかし、そうか、めでてぇ。あのガウザーさんも立派に恋愛したんだな」
「キュカさんはまだでありますけどね」
「うるせえぞ、テケリ! こっちはまだ旅立って一年も経ってねえっつーの!」
「アイタタタタ、痛い! 痛いであります!」
 操舵輪を握るロジェが、十九年後の大空を見つめながら呟く。
「成長した甥とか姪に、お年玉あげたくなる気持ちって、こういう感じなのかな」
「ロジェ、お前まだ二十歳過ぎたばかりだろ……
「まあ、そうなんだけどさ」
 実際、ロジェたちがこの世界に残っていれば、ホークアイたちは甥や姪くらいの年齢のはずである。
 かつての仲間の子どもたちに、こんな形で会うことになろうとは。
 不思議な感慨に包まれながら、一行は次なる地へ旅立った。

 なお、また違う場所で、わがまま放題に育った司祭の孫や、優等生の父とはまるで逆の暴れん坊に育った剣士、唯一しっかり育ったジョスタの娘などに会い、ペダン一行が爆笑したり感慨にふけったりするのは、後日の話である。