Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
しちろ
2023-05-07 19:43:00
2639文字
Public
LOM・連載主人公の短編
Clear cache
Export ePub
七十三年後の大魔法使い
聖剣LOM。七十三年後、バド、コロナ、エメロード。宝石泥棒編第2話『こころのあるばしょ』の未来の話。pixiv投稿作品。2,700字。
「う~ん」
行儀悪く片頬杖をつきながら、緑のローブ姿の青年が難しい顔でガラス瓶をかさかさと振っている。
その様を見て彼の双子の姉
――
コロナは訝しげな顔をした。
正確には、ガラス瓶に閉じ込められた、燃えさしを。
「バド、それって
……
?」
「父さんと母さんの遺したメモ。なんとか読めないかなーと思ってさ」
「お父さんとお母さんのって
……
まさか、あの日の?」
二人が命を落とした実験事故。
バドは瓶を見つめたまま、そう、とうなずく。
しかし読むもなにも、瓶の中の遺品は黒く焼けた紙の燃えカスでしかない。
「とっといたの? それ」
「警察に片づけられちゃう前に、現場でかき集めておいたんだよ。我ながらえらいねー、ガキの頃のおれ。見ての通り触るだけでボロボロ崩れてくるような状態でさ、今日まで保たせるの苦労したんだぜ」
玻璃瓶内部の保存性を高めるために貼られた護符は、腐食を可能な限り遅らせ環境を調整する高度な魔法が込められたものだ。ただ、封の仕方がいい加減で少々曲がっているあたりは術者の適当な性格を表わしてはいる。
バドは片目をつぶり、中をじいっと覗く。
甚大な魔力を有する世界一の魔法使いだからこそ、かすかに
――
本当にかすかに感じられるマナの気配。それが通常の魔法式とは異なる何かであることを、バドは見抜いていた。ただ、それが何かまでは今の彼にはわからない。彼には分らない
――
要するに、ファ・ディールの他の誰一人としてわかる者はいないだろう。
「もうちょっとだけでも燃え残しといてくれりゃあ、こんなに苦労しないのにさぁ。まったくドミナの自称大魔法使いサマは最期の最期まで要領悪いんだから」
今や誰もが認める偉大な魔法使い様は、その名にまったくそぐわない軽い調子でぐちぐち言う。
なにしろ父の座右の銘が『三十六計逃げるに如かず』だ。
英雄として死んでしまうより、弱虫のままでも生きていたい
……
な~んて言っていたくせに、真っ先に死んでりゃ世話がない。
要領が悪いと言えば、バドの師もそうだった。
英雄の名にふさわしく
――
いや、その名以上に偉大な功績を多く残したし誰よりも尊敬はしているが、その一方で大人のくせに子どもみたいに目をキラキラさせて、どこまでも駆けていく困った人だった。好奇心旺盛で子どもっぽくて純粋で。そういう意味では師と両親はよく似ていた。
ドンドン!
少し乱暴にドアが叩かれ、バドが時計をちらり見て首をすくめた。
「あ、やべ」
「ちょっとぉ、バド。約束の時間すぎてるんですケド?」
許可を得るより早くガチャリと開き、バドの相棒が現れる。剣を腰に差した珠魅の剣士だ。
「ごめんごめん、準備はできてる」
「まったくもう、あなたのルーズなところはいつまで経っても治らないわね。そこはお師匠様を見習いなさいよ」
「へいへい」
天下の魔法使いも勝気なパートナーにはちょっと弱い。もう、と腰を手に当てる相棒に、悪いと頭に手をあてる。
「で、二人とも今度はどこへ行くつもり?」
バドもその相棒も、今や双子の師か下手したらそれ以上の探検家だ。しかも折々できちんと帰宅した師と違って、放っておくといつまで経っても帰ってこない。だからコロナは、二人が旅立つ前には必ずこうしてくぎを刺しておく。
放浪癖のある弟はえーとと指を立てて数えだした。
「ミンダス遺跡とレイリスと
……
あと、デュマ砂漠で新しい遺跡が立て続けに二つ見つかったからそれ」
「全部一度に行くの? 二人とも相変わらずタフねぇ」
「昔、師匠に散々鍛えられたからな~。まさかあのしごきがこうして役に立つとは」
しみじみ
……
といった風に腕組みしたバドだが実際、魔法の研究にはフィールドワークは欠かせず、彼が身に着けた戦士並みの体力は大いに役立っていた。
バドはガラス瓶を大事にしまうと、外套を羽織り荷物を担ぐ。期待を胸に旅に向かう彼の横顔は父を、そして少しだけ、在りし日の師を思わせる。表向き、どんな軽口や悪口を言ってみせたところで、親と師の教えが今のバドを形作っていることは誰よりもバド自身が理解していた。
「父さんと母さんの研究、絶対すごい発見だったと思うんだ。おれが必ず解明して、ドミナのハインを本物の大魔法使いにしてみせるぜ。なんたっておれは」
ガイアの予言『七十三年後』を迎えた青年は。七十三年前のいつかの悪ガキだったころみたいに、ケケケと笑ってみせた。
「ファ・ディール一の大魔法使い、バド様だからな」
『七十三年後の大魔法使い』 おわり
【73年後の妄想】
●バド
最近名の売れてきた魔法使い。しばしば大魔法使いとうそぶき、実際それだけの腕はあるが時々詰めが甘い。基本的に子どもの頃のまま成長した感じ。勉強熱心で書斎にこもりっきりになったかと思えば、魔法の旅に飛び出す鉄砲玉。好奇心旺盛でいらんことしい
……
だけど、本当にヤバいことには鋭くアンテナ張っていたりもする。なんだかんだ父や師匠の教えを大事にしており、しっかり図太く生きるのが信条。
あと73年後じゃないけど、本編の主人公と同い年くらいになったときに「この歳(若さ)で師匠こんなことやったの!?」みたいな衝撃を受けてほしいと思う。
●コロナ
マイホームを預かる美人姉かつ最強のホームセキュリティ。家事万能でしっかり者、笑顔は可愛い言うことなし。モテモテだけど、今んところ彼女のハートを射止めた男性はいないらしい。もともと好きな人がいて、それを超える男が現れていないんじゃないかとも噂がある。
タイム(コロナを好きな学生)が魔法学園の研究者とかになってて、たまに学園に顔出したバドに「お前まだ片思いしてんのかよ?」とかからかわれてりゃ面白いのになんて妄想が広がりますね。
●バドの相棒の珠魅の剣士
魔法剣士を目指していた翠のあの子。魔法も習得したけれど、シンプルに剣で殴ってるほうが性に合ってる気もする? バリバリ戦うの、バリバリ! 苦手な座学はバドにお任せよ。好奇心旺盛でバドを超えるいらんことしい。大丈夫か、このコンビ。間違った成長を遂げた愛弟子に師匠のおぼんは嘆いている。自由人過ぎてヌヌザック先生やルーベンス騎士長の頭痛の種とかになっててほしい。
ハイン夫婦のしていた研究は、LOMには存在しない回復呪文だといいなあと思っています。そしてバドにはいつか師匠を超えてほしい。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内