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森林羊羹
2024-10-28 15:44:46
1931文字
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ktgu
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甘い献身
栄七ケーキバース
「ぼく、知ってるんです。兄さまがフォークだってこと」
突然言い当てられて血の気が引いていく。鼓動も速くなっている気がする。
「なんで、七瀬がそれを知って
……
」
「この前、ぼくが作ったクッキーを食べて甘いって言ったから」
確かに先日、七瀬からクッキーを貰った。食べ物の味を感じなくなってからはなんでもおいしいと言うようにしていた。けど油断したみたいだ。
「あれ、砂糖じゃなくて塩をいれたんです。
……
ねぇ兄さま、いつから味がしなくなったんですか?」
もう隠せない。
「ここに来てからだと思う。七瀬が来る前」
味音痴キャラが定着したのも、三宙が買ってきたまずいらしいドリンクを飲み切ったのがきっかけだった。
「そうですか。
……
ぼくのことおいしそうに見えますか?」
落ち着いてきた心音がまた大きくなる。オレは七瀬がケーキだということを知っている。お互い志献官として再会してから、七瀬から甘いにおいがした。最初こそ気のせいだと思っていた。だけどその匂いは消えることがなく、時間が経つごとに強くなっていき、いつの間にかおいしそうだと感じるようになった。
「
……
やっぱりそうなんですね」
そう言う七瀬の表情は恐怖でも軽蔑でもなく、どこか嬉しそうだった。それから七瀬は近づいてきてオレにキスをした。
「
……
っ!?」
くらりとするような甘いにおいと久々に感じる味、そして七瀬の行動に動揺するオレに構わず七瀬は続ける。
「甘いですか?兄さま」
甘い。でもそれ以上に苦しい。
オレがフォークじゃなければこんなことにはならなかったのに。ずっと七瀬のことを守りたいのに。どうして。なんで。
「大丈夫です。兄さまにはぼくがいるから。何も気にしないで」
そういって七瀬はオレを抱きしめる。濃いバニラのにおいがオレの思考を奪っていった。
一人で買い出しに行った日のこと。渡されたメモに書かれた買い物を済ませ、防衛本部までの通りにある店をぼんやりと眺めながら足を進めていた。その途中で目に入ったのはカルメ焼きの店だった。前に兄さまがおいしいと言っていたし、お土産に買っていったら喜ぶだろう。そう思って店に入る。奥の個室にいるであろう店員に声をかけようとした時、後ろから男が入ってきた。
「きみ、おいしそうだね。これ買ってあげようか」
そういって薄気味悪い笑みを浮かべる男はぼくの手首をつかんだ。
「っ、やめてください!!」
必死の思いで振り切り、店から出て走る。男は後ろから追ってきている。どうしよう。気持ち悪い。誰か、
「七瀬くん?」
声の方を向くと舎利弗さんがいた。男は舎利弗さんがぼくに声をかけたのを見ていなくなった。
「
……
ありがとうございます」
「礼などいらないさ。どうしたんだい?」
舎利弗さんとはあまり話したくないけど、ここで立ち去ろうとしたらめんどくさいことになる。さっき走ったからもう体力も残っていない。今までの流れを話すと、舎利弗さんは真面目な顔をした。
「七瀬くん、ケーキとフォークについては知っているかな?」
「
……
はい。フォークはケーキを捕食するんですよね。フォークは味覚がなくなっちゃうから、味のするケーキを食べるって」
「そうだとも。さっきの男はキミに美味しそうと言って拐おうとしたんだよね。
……
ボクが言いたいことがわかるかい?」
「それって
……
」
ぼくがケーキってことだろう。今までも何回かこういうことがあったのはぼくがケーキだったから。そう考えると納得がいく。
「ともかく、これからの買い出しは誰かと一緒に行くように。栄都くんが行けない日はこのボクが付き合ってあげよう!それにほかのみんなも協力してくれるだろうしね」
「わかりました」
すこし鬱陶しいけど、確かにその通りだ。なるべく兄さまがいる日にぼくも行けばいい。
舎利弗さんに送ってもらって自室に戻る。結局カルメ焼きは買えなかったけど、兄さまと出かけた時にまた行けばいい。ふと、今日の舎利弗さんとの会話を思い出す。
「フォークは味覚がなくなっちゃう」
振り返ると少し引っかかった。そういえば、前から兄さまは好き嫌いがなかった。とはいえ苦いものやまずいものには反応していた気がする。だけど今は浮石さんや宇緑さんに味音痴であることを指摘されることが多い。もしもの可能性が頭をよぎる。でも、ぼくが近くにいても兄さまはいつも通りだ。そんなはずはない。でも、知りたい。兄さまのことはなんでも。
明日、食堂の人に厨房を借りてもいいか聞いてみよう。借りられたらお菓子でもつくって兄さまと一緒に食べよう。それで、もしそうだったとしたら。
ぼくは兄さまに食べられてもいい。
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