NEO
2021-02-17 23:46:13
1861文字
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真心の方程式

キメツ学園の炭善。
第46回お題【理系・文系】

 真心の方程式





『ごめん、善逸。今は会えない』

 学期末における定期考査、その、試験期間直前の出来事だ。

 俺も炭治郎も頭の出来はどっこいだった(況や伊之助をや、だ)から、定期テストの度、俺たちは決まってなけなしの頭を突き合わせて、引っ掛け問題や意地悪難問を羅列する教師共と戦う支度を備えていた。それなのに突然どうしたことか、今回は共闘できない、孤軍奮闘よろしく、と先手を打たれて音信不通となってしまったのだ───炭治郎との連絡線が。

(おいおいおい見捨てるんじゃないよ仮にもお前の恋人をぅ〜)

 握り締めたスマホから軋む音が聞こえた気がして漸く力を緩めると、音の発生源は己の歯軋りだと分かった。
 恋人?えっ恋人だよね、俺ら?そこ疑わしくなってきちゃうんだけどどーゆーこと、これ?好きだっつったのお前じゃん!春も夏も秋も底意地の悪い教師陣の卑劣な紙切れを一緒に破ってきたじゃん!お前そーゆー態度だと泣くよ俺。
 再三の言い訳プリーズ要求も、怒髪天突く憤怒スタンプの嵐も、炭治郎の心には届かなかった。既読も付かない。完敗。

(いいもんね〜伊之助と二人っきりで勉強しちゃうもんね!)

 頭に血が上りカッカとしていた俺は、早速俺たち共通の友人、伊之助を探しに行った。二人でめくるめくランデヴーテストウィークを過ごしてやる、伊之助と共に良い点取って冷たくあしらった恋人を見返してやる!!と……息巻いていた時期が俺にもありました。
 見つからね〜!伊之助を探すのが一苦労〜〜!!靴箱に靴があったから、校内からは出てないはずなのにどこにいるの〜?それからなんでお前は教科書もノートも机の中に入れっぱなしなのー?道理でいつも赤点くんと仲良しなはずだよ〜
 花壇で団子虫と戦っていた伊之助を発見した俺は、ともかく持ってきたしわくちゃ教科書や恐怖のノート(白紙かもしれないかと思うと震えが止まらねぇわ)を奴の鞄に突っ込んで、一刻も早く帰って勉強しろと喚き立てた。お世話になってるひささんを泣かせてもええんかい?!との脅しが効いて、伊之助は裸足で校門から走り出ていった。親代わりのひささんが大好きな伊之助だ、これで5点くらいは多めに取ってくれるだろう。また靴忘れていきやがったな。何日目だよお前。

 親孝行な猪突猛進野郎は俺の手に負えなかった。ならばと図書館へ向かう。知り合いがいて、一緒に勉強させてくれるかもしれない。扉を静かに開くと予想的中で、そこには玄弥がいた。彼の兄はこの学園の数学教師だし、もしかしたらヤマを張ってもらえるかも!と意気揚々向かおうとしたところで、もう一人別の人物の声を聞いた。

(………炭治郎だ)

 話し声は物静かだが、極めて親密なものだった。時折含み笑いも聞こえた。思わず扉から外へ出る。俺の居場所はなかった。

(あそこにいたのは、俺だったのに………)

 そう、前回までは。どうして俺ではなくなったのか。怒らせたか?嫌がらせたか?確かに俺は泣き虫でよく喚くし騒ぐし煩いかもしれない。でもそんなの知ってたろ、炭治郎?愛想が尽きた?………俺にも、面と向かって云えないくらいに、

(それでも俺は、お前だけだよ)

 恋心を置き去りにして、ふらつく足取りでその場を去った。振り向くこともできない。さっきまで怒っていたはずなのに。やけに冷静な思考が自宅に引き込もって独りで勉強すればいいと囁く。炭治郎と、出会う前のように。

 俺は、昔のように逃げ出したのだった。

 ◆

 試験期間最終日、放課後晴々とした面持ちの伊之助が現れ、パムゝと俺の背を叩いて「元気出せよ!」と励ましてくれた。そんなにひどい顔してたかな?巧く眠れなかったから、徹夜でテスト勉強しちゃったもんね頭が痛い。もう帰って寝よう。
 ぴろん。間抜けな着信音で通知を知らせるスマホ。開くとあれだけ焦がれた相手からの連絡。

(今更なんだよ?俺はな、めちゃくちゃ頑張って勉強したからな!お前なんかに負けねぇから!少なくとも数学は!!過去最高点取れた自信あっからねざまーみろバカ炭治郎ぉ………、)

 ガタン。

 席を立つ。渾身のダッシュ。今までで一番本気出して走る。画面に浮かぶ一つの真心を握りしめて。ウィッヒヒ、こんなことのために頑張ってたのかよ、炭治郎?今行くよ!



x²+(y-∛x²)²=1



20210217_NEO@20neo14
第46回お題【理系・文系】
#炭善版夜の描き書き一本勝負