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NEO
2019-09-08 13:57:34
4160文字
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秘密の会合
炭善&カナアオ前提の善逸とアオイちゃんです。
・秘密の会合【善逸とアオイ】
炭治郎とカナヲちゃんが合同任務に出掛けた。単独任務から蝶屋敷へ戻ってきたばかりの俺は疲労困憊していて、ぼんやりした頭でそれを出掛ける寸前の炭治郎本人から聞いた。疲れすぎて見送ることもできなかったけど、汚れを落とすための風呂に浸かりながら、なんだか最近あの二人で任務に出ることが多いのが気になった。俺の嫉妬から来る、気のせいだろうか?伊之助に聞いてみようにも、戦い好きな猪頭は任務に出突っ張りで帰ってこない。心なしか、炭治郎がカナヲちゃんと組めるよう、単独任務を余分に引き受けて配慮している節もある。いや、幾らなんでも考えすぎ
……
こりゃ相当疲れてるな、俺。早く何か腹に入れて寝ちまおう、そう決めてふらつく頭を抱え台所へと物色しに行った。
「はい、これ、善逸さんのお食事です」
差し出された盆には握飯と漬物、お茶が揃っていて、つまみ食いする気満々だった俺は毒気を抜かれた。少女はきっちり二つ結びの髪を揺らし、腰に手を当て強気な視線で睨めつける。
「盗るのはご法度ですよ!しのぶ様にも云われてるんですからね、善逸さんの栄養状態の管理をしっかりするようにと」
あのしのぶさんが、そんなことを?あっさり見抜かれている悪心に戦きつつ、ありがたくご飯を頂戴する。温かい。炊きたての飯だ。わざゝ炊いてくれたのかなぁ。思わず涙ぐむ。
「ちょっと!泣くほどのことは云ってないと思いますけど!?」
「ううん、違うの、あんまり嬉しくて
…
」
「なっ
……
そ、そんなことくらいで泣かないでください!!」
「うん、ごめんね。ありがとね、アオイちゃん」
俺が泣き虫だと知っているはずだけれど、アオイちゃんはすぐに心配してくれる優しい娘だ。言い方はちょっとキツくて、怖くって、何回も泣かされたけどね、俺。いい娘なんだよ、本当に。縁側に移動して、お日様の下でゆっくり味わいながらご飯を食べていると、片付けを終えたであろうアオイちゃんがストン、と横に座した。
「あの!少し
……
お話ししていいですか」
彼女の遠慮がちな言い回しに、俺は驚いて口に米を目一杯頬張ったまま固まった。こんなこと、滅多にない。いつも忙しく立ち働いているアオイちゃんは、俺に目をくれることなど一切なかった。遊郭から戻ってきた後、態度が軟化してきてはいたが、こんなに近くで語り合ったことなど勿論ない。まぁ炭治郎が一緒の時なら話は別だけれども。
「えっ
……
と、炭治郎いないけど、俺でいいの?」
「はい。むしろ炭治郎さんがいたら困りますから」
ごく、思わず喉が鳴ってしまったのは致し方ないことだ。人好きする炭治郎の側にいるからこそ、そのお零れに与れるのだ、という明確な自覚が俺にはある。でなければ女の子たちは逃げていくばかりだもの。炭治郎は謂わば、女の子たち蝶々を引き寄せる花の蜜だ。俺は花にくっついてる油虫ってとこだな。わギャッてんよ。
「で、話って
……
?」
「
………
炭治郎さんのことなんですけど!」
はァ━━ッなるほどね!!炭治郎の話題ですか?!そりゃ本人に相談できねぇわな!だからって俺なら巧く話ができるとも限りませんけどね妬ましい!!!
「善逸さんは
……
彼のこと、どう思いますか?」
「ひぐっ
…
う、
……
うん、優しくて
…
強くて
…
いい奴だと
…
オモイマス
……
」
ここで嘘がつければ楽なんだろうけど、炭治郎に世話になってる身としては偽り難い。というか、そんなのすぐバレるだろうし。蝶屋敷で面倒を見てもらっている間、アオイちゃんは俺たちのことを隈無く観察できたはず。ならば嘘なんてつくだけ無駄で、アオイちゃんが知りたいのは、『俺から見た炭治郎』に問題がないかどうか、ということなのだろう。カナヲちゃんのみならず、アオイちゃんの興味まで惹いてるっての?とんでもねぇ炭治郎だ。
「ギリィ
……
堅物でこ真面目だけどね
…
!!」
せめてこのくらいは云わせてもらってもいいだろう。すげぇ我慢したわ。俺にしてはよくやった。
「そうですか
…
やっぱり、そうですよね。炭治郎さん、いい人なんですよね
…
」
アオイちゃんが落胆したように溜め息をついたので、おや、と思う。炭治郎がいい奴だとだめなの?ちょっと混乱した俺は、さりげなく聞いてみた。
「アオイちゃんも、同じように思ってるんじゃないの?」
「ええ、まぁ。
……
だからこそ、私
……
」
云い淀んでしまった彼女に、掛ける言葉を見つけられない俺は大人しく握飯を口に放り込んだ。これが最後の一欠片。少し物足りない腹具合だけど、我慢しよう。炭治郎の握ったやつなら塩加減抜群で、食べ応えもあって、俺好みなんだけど
…
女の子の握ってくれた優しい味に文句なんて云っては罰が当たる。こんなこと考えるなんて、俺、やっぱ疲れてるんだな。早めに休んだ方が良さそうだ。
「炭治郎さんに頼まれたんですよ、私。貴方のご飯を用意してくれと。きっと、疲れて帰ってくるからって」
「え?炭治郎が?」
「貴方のことよく考えてくれてますよね」
「
………
そう、だね」
そんな素振りはちっとも見せてなかったから、労られていることに全く気付かなかった。
…
もしかして、今までにもこんなことがあったのだろうか?俺が気付かなかっただけで、炭治郎の奴、いつの間にか俺のこと助けてくれてたのかな
…
(云って~~云ってよ!なんで何も云わねぇの?御礼くらい云わせてくれたっていいじゃないの)
そうしなくてもいいように口を噤んでいたんだろうなぁと如実に解る。俺が気を遣わなくて済むように。炭治郎、優しすぎじゃない?俺なんかの為にさ。
「いい奴すぎる」
「でしょう。私、到底敵いませんよ」
「!?あ、あお、アオイちゃん、まさか」
「勘違いしないでくださいね。私、善逸さんに特別視されたいわけじゃないので」
「あ、ハイ」
こんな時までアオイちゃんは辛辣だ。余計な期待は瞬時に粉砕されて、冷静な理性が甦る。俺のことじゃなくて、炭治郎に敵いたいって思うなら、それはつまり━━
「カナヲちゃん、かな?」
「
……
善逸さんって、炭治郎さんが好きでしょう」
「えぇええそれ今聞いちゃうの!?!」
「隠さないで結構です!見てれば分かります。私と同じだから」
「え」
「私、
……
カナヲが好きだから」
「
………
あぁ、
……
そっか」
俺が、密かに想いを寄せるようにアオイちゃんも、忍ぶ恋をしているのだと明かしてくれた。それは、俺が彼女に一番近い立場だったから。
「カナヲは
……
炭治郎さんが好きだと思います」
はっきりと、自身に思い知らせるようにアオイちゃんは云いきった。なんて強いんだろう。俺、俺は、怖くて、とても口に出せなかった。始めから夢も希望もあったもんじゃない想いだというのに、口に出さなければまだ期待していられるような気になれたから。
「そう
……
なんだ。うん
…
炭治郎も
……
」
言葉少なに同意する。彼女の強さに励まされ、敗北を認める。勝ち目のない勝負をしていただけだけど。これは、失恋を自覚する儀式だ。
「カナヲは良い子ですよ。炭治郎さん、見る目が確かです。私、炭治郎さんならカナヲを任せてもいいって思って。ずっとカナヲを守っていくのは私だと思ってたけど、でも
……
カナヲが、炭治郎さんを選ぶなら、私、
…
わたし、
……
喜んで
…
」
「アオイちゃんは偉い!」
「っ、ちょっと、茶化すのはやめてください」
「本気でそう思うんだもの。俺なんて妬ましくてならないよ。カナヲちゃんに好かれる炭治郎が妬ましいし、アオイちゃんにそこまで想わせるカナヲちゃんも妬ましいし、そんなに人を好きになれるアオイちゃんのことも妬ましい。ね?応援できるアオイちゃんは物凄く偉いんだよ!!」
心からそう思ったから力説したのに、アオイちゃんは憤慨した。
「貴方ねぇ、どうしていつもみたいに泣かないんですか!?そんな
…
風に
……
私のこと、励ましてくれなくて、いいんです
……
っ」
「え?」
「お願い
……
一緒に泣いて、
……
私、泣きたい
…
」
今度こそ本気で心底驚いた。アオイちゃんが、あの強気でしっかり者で滅多に弱音を吐かないアオイちゃんが、俺の目の前で今にも涙を溢しそうになっている。しかも、それをしたいから一緒に泣いてくれと頼んでいる
……
俺なんかに。俺、泣き虫で良かったと思ったの、初めてだ。
「うん
……
じゃ、一緒に泣こっか」
「う、うぅう、ウオオオオン!!!」
「うふふ、雄々しいなぁ、アオイちゃん
…
こんなに一生懸命な女の子に気付かないなんて、カナヲちゃん損したねぇ
…
グスッ」
「い、いいの
…
いや、カナヲのわるくちやだ
…
っ!」
「うん、
…
ごめんね
…
うん、カナヲちゃんは良い子だもんね
…
たんじろがずるいんだ
…
全部持ってっちゃって」
カナヲちゃんも、アオイちゃんの恋も、俺のちっぽけな期待も。
「ばーかばーかたんじろのでこ真面目
……
アオイちゃんは、優しいね、俺、心狭い
…
」
「ぜ、ぜんいっ、さん、やさし
…
ウオオオオン」
「ウエッヒグッ
……
ウゥ、ばか、ばかだね
……
」
二人して大泣きした午後、俺は任務の疲れもあってそのまま眠ってしまい、泣き止んだアオイちゃんが毛布を掛けて寝かせてくれていたのだと後から知った。彼女は泣いて、泣いて、上手に吹っ切れたようだ。毛布を返して御礼を云った時、泣き腫らした目許も気にならない爽やかな笑顔で「此方こそお世話になりました!」なんて、頭を下げられたくらいだから。
その日から俺たちは、度々二人だけで話すことが増えた。特に炭治郎とカナヲちゃんが二人で任務に出た時には、必ずといっていいほど二人で時間を作ってお喋りした。話題は勿論あの二人について。とはいえ、恨み辛み妬み嫉みを云うよりは、互いにあの二人の思い出話や自慢をするだけで満足していた。二人がいないからこそ、二人について自由に思いの丈を語れる。そんな時間が持てる、話し相手がいてくれる、それが俺たちの精神安定に物凄く役立った。今では二人の任務を心待ちにするくらいだ。アオイちゃんが気兼ねなく話してくれるのが嬉しいし、俺も、遠慮なく炭治郎の噂話をできるのがとても愉しいのだった。
★俺たちの戦いはこれからだ!!!たんじろ&カナヲ編へ続く───!(※嘘予告です)
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