NEO
2018-11-21 22:59:23
1027文字
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頑張り屋の君へ

#炭善版夜の描き書き一本勝負、その2
(20181121)



朝一番に登校して風紀委員の仕事をこなし、そこかしこで問題を起こす生徒たちから何撃か食らい、良すぎる耳のせいで音楽の授業が地獄だったり、謂れのない罪で生徒指導の張り手を受けてたり、学園内のカップルを妬んでは自身の精神と評判を痛め付けたりして、大変勿体ないなぁといつも思っている。
購買部でおにぎりを手に入れたのに買えなかった後輩の女の子に譲ってやってしまったり、放課後の校舎裏で雀にパン屑を分けてやっていたり、道に迷ってたおばあさんの道案内をしてあげていたり、公園の野良猫と戯れていたり、すごく口惜しいと何度も考えていた。
今日だって特別な何かがあるわけじゃないけれど、家に帰れば弟妹たちの賑やかな歓声があり、母の心がこもった暖かな手料理や、俺が焼いたパンも幾つかは馳走できるだろうし、何よりその一生懸命な頑張りにちょっとは報いれると思うんですよ。

「我が家の夕食へ招待させてください」
「やだ
「ありがとうございます!此方です!!」
「?!」

一段と強い北風にコートへと身を縮こまらせて、マフラーやマスクで遮りモゴゝ云われても聞き取れません。俺は貴方ほど耳がよくはないので。繋いだ手を引っ張っていく間もくどゝごねていたけど俺はこれからのことを考えるのに忙しかった。さっきまでは今日くらいは労らせて欲しいと思ってた。でも今は。

(お前、暖かすぎて寂しくなるの。やだ)

ほか、ほか。常人より高い体温の俺より温む手。マスクの向こうに上気した頬、潤んだ瞳、俺よりずっと着込んでるのに寒そうに震えて足取りも覚束ない。体温計は電話横の抽斗だったな。竹雄がスポーツドリンクを多目に確保しているから一本貰って、着替えは俺のもので足りるけど、下着は未開封のものがあるか、母さんに聞いてみよう。それと相手の家へ一報しなければ。無断で引き留めては心配するだろうから。

「ご家族に電話してください。挨拶します」
「!?!?」

くらり、倒れそうな挙動にサッと手を差し伸べて腰骨を支える。やはり無理をしているようだ。意識が混濁しているのか不明瞭な呻き声しか聞こえてこない。連絡するのは夜でも構わないだろう。熱すぎる身体を背負って帰途に就く。こんなになるまで頑張れるなんて本当に凄いなぁ。元気になったらもっと話してみたいな。

「一緒に居たら寂しくないと思うんだけどなぁ」

暖め合うのはどうだろうか、と。

▲“熱があるのに”_NEO@20neo14