NEO
2017-05-16 01:00:43
1895文字
Public
 

ルームシェア(炭善)

中途半端です、申し訳ない。

▼前提▼

・ルームシェア
・匂いや音に対して特殊能力のない一般人
・高校時代からの幼馴染み
・大学生×社会人
・炭治郎は恋愛
・善逸は友愛
・研修で地方へ出向するため空白の2ヶ月
・デキテナイ
・元作品:山村どんぐりさん作

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単刀直入に云うと唯ひたすらに後悔していた。
悲しくなることも、寂しくなることも、日々、過ぎてゆく暮らしの全てが虚しくなるであろうとも、始まる前から分かっていて、それなのに、なんということはない、安心して励んでこいと、笑顔で送り出してしまったものだから。心配を掛けたくなくて。確かに応援する気持ちもあって。でも本当は、何処にも行くなと引き留めたかった。此処にいてくれと頼みたかった。しかしそんなことをしたら、自覚のない親切心(それと僅かに怖い研修を受けなくて済むぞという邪な期待)から、自身の都合をねじ曲げてでも、行かねばならない出張を取り止める可能性は限りなく高かった。それは不本意だ。妨げになりたいわけではなかった。分かっている。分かっていた。だからこそ俺は我を通さなかったのだ。これから頑張ろうという気持ちに不安の影を落としたくなかった。暫く会えなくなるのだから、良いところを見せておきたかった下心もある……だけど、けれど……どうにもならないものだ、この、感情という厄介な相方は。俺と長い付き合いなのに、俺の思い通りに動いてくれた例がない。

家業であるパン屋の後継として、何時なんどきも手元を疎かにはしない。中はふっくら、外はパリッと、彼好みにキッチリ焼き上げた二人分の傑作が目の前に並んでいる。香ばしい麦の焼けた匂い。 外気に触れて軽快に割れる皮の音。変わらない出来映えが現実を突き付けてきて胸が苦しい。
「独りじゃ食べきれないな
後悔をポツリと唇から漏らして、これらを一体どう処理したものか、と、竈門炭治郎は今朝も思案に暮れていた。

ルームシェアの相手である我妻善逸は高校時代からの友であったが、歳がひとつ離れていたので、一足先に社会人として世間に出てしまった。勤務地は近場のビジネス街にあるのだが、新人研修と称する釘刺し牙抜き指導が地方にある本社で行われるらしい。きっとそこで新卒は社会の洗礼を受けるんだよぉ俺もう死んじゃう!などと、怯えながらもキッチリ現地へと出向いた彼は、本当に偉いものだと尊敬してしまう。この春漸く大学の最終学年を迎えた俺なんて、早くも始まったレポート地獄に嫌気がさして息抜きの製パン作業に精を出してしまっているというのに。今朝のバケットは特に自信作だった。善逸がよく褒めてくれる綺麗なパンの呼吸音、というやつが、間違いなく軽やかに鳴っていた。きっと美味しく食べてくれただろうに……善逸……今頃、企業の荒波に揉まれているのだろうか?

このたったひとつの差は大きく、厚く、高い障壁となり、善逸と俺を無情な括りできっかり隔てている。昔からそうだ。地元を離れ、都会で学友と同居しながらキャンパスライフを謳歌する彼を、高校生の俺は遠くから眺めているしかなかった。
偶々俺が卒業する頃に彼の同居人が去ったので、これ幸いにと後釜に着けたが、もしそうならなかったら……自分は、どうしていただろう。少なくとも善逸にルームメイトを解消するよう提案はしていたかも知れない。そして改めて俺と暮らしてほしいと、頼み込んでいたかも……そうやって、さぞかし善逸を困らせたことだろう。
(本当に厄介だ)
あの時は切羽詰まっていて、もうとにかく善逸の側へ行かなければと気ばかりが急いていた。同居人の事情や自身の都合はおろか、善逸本人の意思を圧してでも、近くにいなければ、と思い詰めていたのだ。怖くて。本当に恐ろしくて。
儚く。朧気に。繋がりが……善逸との縁が、日を積み重ねるごとに、想い出に変わってゆくようで……耐え難かった。堪えたくなかった。
学内は、火の消えた蝋燭のように頼りなげで心細く、物足りない。同級の伊之助が暴れるのを宥めていても、体育科の冨岡先生の厳しい指導を受けていても、妹の禰豆子が頻繁に俺を訪ねてきても━━━
足りなかった。絶対的に足りなかった。俺はそれを求めていた。必要としていた。欲しいと思った。けれど一体何が足りないのか、分からない。ずっと、ずぅっと考え続けて。心底困り果てた。思い当たらなくて、気付けなくて、悄然と日々が過ぎて行く。年末に里帰りしてきた善逸から同居を解消したと聞いて漸く、そう、初めて、分かったのだ。俺は、彼を探していた。その想いを自覚するのに、はや一年を費やしていた。

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続け