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NEO
2017-04-20 00:17:01
3096文字
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団栗と卵(善逸と炭治郎)
何が起こったかよくわからないが善逸どんぐりと炭治郎たまごの童話風小話です。
~~~
▼善逸どんぐりと炭治郎たまご
どんぐり ころころ 都会の子
蝶のお姉さんに拾われて喜んでたら
水のお兄さんに渡されてがっかりだよね
渋々懐で嘆いてたら転がり落とされて
あわや粉微塵かと思いきや落ち葉の布団に無事着地
だけど此処は何処なんだ?
木立に囲まれた山中じゃないの
俺はね、生粋の都会っ子だからさ
こんなド田舎で生きられない
都会に帰りたい 此処から逃げ出したい
ねぇ どうしたらいいの?助けてよ
誰か━━━ッ!!
「静かにしろ!森の生き物に迷惑だろう!!」
ゴチン!!!
強烈な頭突きを喰らって、一瞬気が遠くなりかけた。なに?何なの?敵襲?!やめて!食べないで!俺なんか食べても美味しくないよ!ちっちゃくて固い都会生まれのしがない木の実ですから!!
「なんだ、お前はこの辺のどんぐりじゃないのか?大丈夫か?」
「おでこが痛いよ~~」
「それは悪かったよ」
慰めてくれる優しさがあるなら、頭突きをかます前に一声掛けてくれればいいものを、と相手を見て驚いた。二度見した。だって卵ですし。どう見ても丸くて白い
…
卵?!どーゆーことこれ?!俺、卵に頭突きされたの?よく割れなかったなこの卵?!石頭かよ!卵のくせに?!?
「そうだ。俺は、炭治郎たまごだ」
「名前まであんの?!無理設定がすぎるでしょ!!まぁ俺も善逸どんぐりなんですけどね!!!」
「善逸はずっと泣いていたな。どうしたんだ?」
炭治郎たまごは主人公に必須のスルースキルをきっちり身に付けてる。俺は突っ込みをグッと我慢して、物語を進展させるべく、炭治郎に話を合わせた。
「迷子なんだよ。俺は都会から来たの。無口な誘拐犯に拐われた揚げ句、此処に落とされて置いてかれたの!」
「それは大変だったな。だけど喚いて騒音になるのは駄目だ」
「好きで騒いでたわけじゃないからね?!帰りたいだけだから!!」
「分かった、分かったから、静かにしろ。猪に喰われたいのか?」
ひっ!と思わず息を飲む。この辺りは暴れ猪の縄張りで、見つかったが最後、生きて帰ったものはいない
……
と炭治郎たまごは顔?を背けて教えてくれた。
「特に、お前のようなツヤツヤどんぐりはあいつの好物だ」
「え━━━ッ?!聞いてないよそんなの!!やだ!死んでしまう!!」
「落ち着け、善逸。だから気付かれないように静かにするんだ」
「フゥ━━━ン
……
?!?」
無理。いや無理でしょ、これ。九分九厘死んだわ俺。来世は人に生まれて可愛い長髪の女の子とキャッキャウフフしたいです神様よろしくね
…
「善逸、まだ大丈夫だ。素敵なぼうしもちゃんとかぶっているぞ」
「都会っ子を証明する唯一のオシャレ!生きてた!!」
「
………
」
炭治郎たまごは空気を読むこともたまにはあった。
「俺が麓の町まで送っていくよ。そうしたら誰かの荷物に紛れて、また都会まで帰ればいい」
「それだ!ありがとう、炭治郎たまご~!!麓まで俺を守って!!!」
「分かったから
…
ほら、この水苔で水分補給しろ。涙で萎むぞ」
「うぅっ、ありがとう、本当にありがとうな、炭治郎
…
」
どんぐりに水分補給が必要なわけあるかい、などという無粋な正論は、この際鬼舞辻一家の餌食とさせて頂きたい。
元気になった善逸どんぐりは、炭治郎たまごに引っ付き虫のように纏いつきながら、山を転がり下っていった。波瀾万丈な道中だった。
烏の群れに囲まれた雀を、虐められたと勘違いして突入していこうとする炭治郎たまごを、鳥たちの心音から仲間同士だと察した善逸どんぐりが、必死に説明して引き止めたり。
四角四面な性格を悩んでいる炭治郎たまごだったので「いや心配すんなよお前本当に丸いよ」(外見的に)と善逸どんぐりが励ましまくったり。
遠くに誘拐犯の去っていく後ろ姿を見つけた善逸どんぐりが、怒ってビョーンと跳ね回るのを「でもお蔭でお前と出会えたから、俺は嬉しいよ」などと天然タラシで炭治郎たまごが宥めたり。
猪に見つかって命運が尽きた
…
と覚悟をしたが、炭治郎たまごが一言、
「お前はこの山の主だろう!自分より小さな俺たちに牙を剥くのか?」
と無意識に煽り、ちょっと頭の弱そうな猪を、
「はん!喰わないね、喰わないね!俺より弱いやつは気に入らねぇ」
とプンゝスカゝさせながらも何とかやり過ごしたのには、思わず善逸どんぐりも目?を見張った。このたまご、やりおるわ。
炭治郎はもうずいぶん長い間、たまごとして生きている、と明かしてくれた。本来なら孵るはずのたまごは、孵化することなく、捨て置かれ、仕方なくたまごのまま生きていく道を選んだのだという。
絶望したり、嘆いたりしないで、前へ進んでいくところが、炭治郎らしいなと思った。こいつは立ち止まらない。どんな時も、何があっても、諦めずに進んでゆくのだろうな、と、なんだか羨ましいような、少し寂しいような気持ちにもなった。
麓の町までもう少し。あとひと転がりというところで、炭治郎は善逸を振り返った。
「さぁ、あそこが町だ。もう
……
一人で行けるな?」
「
……
うん、ありがと
……
でも
……
炭治郎も一緒に
……
」
「俺は行けない。都会は、俺の暮らすところじゃないよ」
孵らないたまごはふるりと左右に頭を振った。どんぐりは小刻みにふるゝと震えた。悲しい匂い。哀しい音。寂しい匂い。淋しい音
…
「だけどね、俺は
…
炭治郎、俺は
……
!」
ぐしゃ!!!
とん、とん、コロコロ。町の方から飛んできた毬が、炭治郎の真上に落ちた。ワァ、ワァ、バタバタ。遊んでいた女の子は、毬を拾い上げると町の方へ戻って行った。善逸は微動だにしなかった。女の子の袖に潜り込む、絶好の機会だったというのに。
たまごは潰れていた。元々孵らないたまごだったから、命が宿っていなかったといえば、それまでだ。けれどたまごは炭治郎だった。炭治郎は善逸に優しくしてくれた
……
炭治郎には、魂があったのだ。
善逸は動かなかった。何もかもがまっさらになってしまった。都会へ帰りたい気持ち。誘拐犯への怒り。猪への恐怖。町への希望。炭治郎との記憶
…
炭治郎の言葉
…
炭治郎の
……
どんぐりは泣いていた。そうとも知らず、静かに泣いていた。帰れないことよりも、帰ってこないものを思って。こんなことならさっさと諦めればよかった。俺はただのどんぐりで。都会だろうが田舎だろうがさして暮らしに変わりない。なにより、この森が好きになってきていた。連れられて、案内されて、色んなものを見て、出会って、味わって、楽しんで。お前がいたから。お前となら、田舎暮らしも悪くないなって思えていた。でも、お前がいなければ意味がない。俺も、潰れてしまえばよかった
……
━━━生きろ、善逸
「っ
…
、 炭治郎!?」
━━━俺も、生きるよ。土に還って。この山となって
「
………
そっか
……
」
声は、そこかしこから聴こえてくる。風の音、木々の軋み、そよぐ枝葉、地中からも。孵ることのなかったたまごは、漸く自然に還ったのだ。
どんぐりは喜んで土に潜り込んだ。割れたたまごの温もりが残る柔らかな大地に身を沈め、ゆっくり、穏やかに眠り始める。
━━━善逸?行かないのか?
「俺はどんぐりだもの。此処で育つよ。お前と一緒にね」
居場所を見つけたどんぐりは、たまごの栄養を分けてもらって、森で一番立派な樫に育つことだろう。でもそれはもう少し先の話。長い、長い時が経ち
……
山が彼等を受け入れる、その日まで。
どんぐりは、たまごの暖かさに包まれて、心安らかに夢を見ている。
おしまい
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