涼華
2024-10-27 08:38:42
2227文字
Public 実装前幻覚
 

すてきなじごく

ダングレ未満、実装前の狂気その5、生き地獄で生きる血鬼おじと一般人テのはなし

 ゆるされてはいけない。ぴしりと鞭を一度打ちつける。
 ゆるされてはいけない。痛みがはしる背中に再度鞭を打ちつける。
 ゆるされてはいけない。腹の減るにおいが漂いはじめたそこにまた鞭を打ちつける。
 ゆるされてはいけない。ゆるされてはいけない。俺は皆の罪をゆるすけど、俺だけは決してゆるされてはいけない。皆の罪を受け入れて、ゆるして、代わりに罰を受けなければいけない。けれども父母様は俺に罰をくださらないから自分の背を鞭打ち罰を与える。
 ゆるされてはいけない。例えどれほど傷が傷んでも
 ゆるされてはいけない。例えどれほど心が傷んでも。
 ゆるされてはいけない。この空腹が消えるまで、俺はゆるされてはいけない。



■□■



〈ゆるさなくてもいいんじゃない?〉
「はぁ?」
 骨が見えるほど抉れた背中は牛の血をかけられるとぐちゅぐちゅと音を立てながら再生していく。居候先である時計頭の人間の職場で出る廃棄品であるというそれは僅かに飢えを満たしてくれた。
 人間の血ではないから父母様はそれほど酷くは怒りはしないだろうが禁血の約束を破ったことに変わりない。後からまた鞭を打ち反省しないと。痛みを与えて詫びないと。
〈君はゆるされたくないんだろう?〉
……うん」
〈ならそれでいいじゃない。罪を受け入れて、自分に罰を与えて、それで生きていく。それが君の在り方だろう?〉
 生き地獄でもそれなりに楽しく生きていけるよ、きっと、多分。そんなことを言った時計頭は血とで汚れたシャツの残骸をひっぺがし、ビニール袋に詰め込んで口を縛る。同族 にんげんすら喰らう美食の街では血で汚れた衣服なんて珍しくない。ツヴァイ協会に捕まらない程度に皆が食事を楽しむ中で血鬼はそれほど目立たない。言われてみればここは地獄みたいなもの、生き地獄。
……あんたを眷族に出来ないのが本当に惜しいな」
〈あれ、勝手に眷族を作るのは“悪いこと”じゃなかったの?〉
「悪いことだから、そんなこと考えた俺はあんたが死んだらもっともっと罰を受けるよ」
 そんなことを言って自嘲混じりの笑みを浮かべる。あんたを眷族にして、永遠に縛り付けてしまおうなんて考える俺は大罪人だ。ゆるされちゃ、救われちゃいけない。
 俺には死んだあんたの後を追う勇気なんてないから、せめてあんたに抱いた恋心 つみを抱えて生き続けるよ。隣にあんたがいなくても、背を打ちつける度にあんたのことを思い出す。血鬼は忘却が苦手な生き物だから、死ぬまで俺を傷つける。死ぬまであんたを想い続ける。それは空腹が永遠に満たされないことよりずっとずっと辛い。けれどそれはきっと素敵なこと、素敵な地獄だ。あんたが隣にいないのが残念だけど。
「なあ。本当に地獄があるんなら、俺が来るまで待っててくれよ」
〈ええ?私も地獄行き?〉
「血鬼匿って天国なんてもんに行けると思ってんのか?」
まあいいよ。君と一緒なら退屈しないね〉
 色んな地獄を渡り歩いて、色んな苦しみを味わう。今度はこのひとも一緒に。俺は絶対にゆるされないし、このひともまたゆるされない。この世がこれだけ残酷なんだからこの世界を楽しんだこのひとだってきっとゆるされない。

「そうだ、追加で背中を打たないと。また血をもらっちまった」
〈口から飲んでないならセーフじゃない?〉
「そうかな?」
〈どうせ明日もお腹が空いて我慢出来なくて鞭打ちするんだし、その時まとめてやりなよ。掃除も服の処分も面倒だし〉
「あんたさあ
 あっけらかんとそんなことを言ってのけた人間は座り込んだままの俺に手を差し伸べる。手を伸ばすと血をかけられても治りきっていない傷が引き攣りずきずきと痛んだ。ぎこちない動きで立ち上がって素直に手を引かれたまま後をついていく。行き先は、浴室。消毒の前、傷口に水をかけられるのは泣き喚いて逃げ出したくなるくらい恐ろしいけれど、それもまあ罰だと思えば耐えられないこともない。最早罪を償いたいのか罰を受けたいだけなのかわからなくなってきている。ああもうこれじゃあ天国なんて行けっこない。

 血鬼の俺は癒えない病を患ったまま罪を重ねて生き続ける。人間の彼は生き地獄と称したこの街でのらりくらりと生きて死ぬ。どうせ同じ地獄ならひとりよりふたりで過ごしたい。
「もし俺が我慢出来なくてあんたを血袋にしちまったらカラカラに干からびるまでの間俺を鞭打たせるよ」
〈流石にそれは嫌だから一気に吸い尽くすか我慢して〉
吸わせてはくれるんだ」
〈少しでも君の空腹を満たして死ねるならいいよ〉
……あんた、本当に酷い男だな」










グレゴール
若干正気を取り戻したすがた
色々あってラ•マンチャランドから連れ出され散々な目に遭った末に23区に流れついて一般人テに拾われた
拾われてからは人間の血を飲んでいないのではらぺこ
これからも自分をゆるせないしゆるしたくないまま生き地獄を生きていく
誘惑に負けずこのまま同居を続けられるかは神のみそしる

ダンテ
23区屠殺業者のすがた
管理人テと同じく柔和で穏やかだけど都市の人間なのでそこそこドライだし23区民なので色々とお察し
友人が血液料理好きだからと言って職場で出たさまざまな動物の血をもらってくる
同居人に喰い殺されてもまあいいかなくらいには好感度は高い

これで付き合ってないんだぜこいつら