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けろか
2024-10-26 23:01:21
1564文字
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竹くくワンドロワンライ「バレる」
付き合ってる室町竹くくの朝チュンお話。
事後描写ありです!
障子の外はまだ暗い。夜と朝の境目を探すような微睡に、隣で寝息が漏れた。
顔を横に向けると、八左ヱ門の乱れた前髪が枕に影を落としている。さっきまでの熱が少しずつ引いていく肌と、それでも残る体温の名残が、二人で過ごした時間を今も確かに刻んでいた。
触れたい衝動を抑えきれず、そっと指先を伸ばす。彼の眉から鼻筋へとそっと描くように。いつもは強い意志を湛えているこの顔が、今はこんなにも柔らかい。指先に触れる産毛の感触にすら、胸の奥が痺れた。あぁ、この人は自分のものなのだと思うと、嬉しくて仕方がない。
「ん、ん
……
へーすけ」
どきっと胸が跳ねた。八左ヱ門が起きたのかと思ったのと
――
名前を呼ばれた嬉しさからだ。鼓動が急に早まり、ささやかな静けさが一瞬で揺さぶられる。けれど、次の瞬間に彼の口から漏れた声はふにゃふにゃとかすかに寝惚けて、どこか焦点の定まらない響きだった。どうやらまだ夢の中らしいほっと安堵の息が漏れ、肩の力が抜けていく。
「すき
……
」
届いて欲しいと願いながらも小さく呟いて、いつもの儀式を始めた。
「兵助の黒くてふわふわの髪が好き。冷静沈着かとおもえばすごく分かりやすく顔に出るところもすき。相手のことを、俺のことを思いやってくれるところが好き。
――
まあ、豆腐に関してはやり過ぎなところもあるけど
……
とにかく、ぜんぶ好き!」
八左ヱ門が語る「好き」の言葉のひとつひとつが、兵助の心をゆっくりと溶かしていく。兵助だって同じくらいの好きを持っているのに、自分で口にしようと思うとやっぱり恥ずかしい気持ちが混ざってしまうのだ。顔を熱くして、視線を逸らすのがいつものことだった。
素直に想いを伝えられない性分だ。だからこそ、日中に八左ヱ門から受け取った分の好きを、愛を、夜、この穏やかな
――
激しく愛し合ったあとの、この時間にそっと返す。それが兵助の日課であり儀式だった。
「八左ヱ門の、後輩想いなところが好き、ぴょんって元気に跳ねる前髪が好き。真っ直ぐで、思い立ったらすぐに行動する、その熱血なところが好き、いつも、太陽みたいに照らしてくれるところも好き
……
」
囁くうちに、抑え込んでいた想いが堰を切ったようにあふれ、身を乗り出してそっと彼の唇に触れた。八左ヱ門の唇は柔らかく、ひんやりとした空気の中で少しだけ先ほどの熱を残すように温かみを帯びている。ふにふにと、柔らかいものと柔らかいものが触れ合い兵助の心を甘く揺らし、唇に触れているという事実が心の奥で静かに震えた。その瞬間、ふいに灰茶色の瞳と目が合った。
――
目が、合った?
驚きに丸くなった己の黒い瞳を向かい合う双眸に捉える。理解した瞬間、兵助の心臓が一気に跳ね上がり、顔中が熱くなるのを感じた。
「わあああ!」
「うぉ!兵助、しーっ、見回りきちゃうって」
「お、起きてたのか、聞いてたのか、いつから
……
」
情けないくらい慌てる兵助とは対照的に、余裕といった様子の八左ヱ門の唇がわずかにほころび、喜びが隠しきれない様子が見てとれる。一層兵助の顔が熱くなる。おでこのてっぺんまで熱い。
「うーん
……
『好き』って言い始めたあたりから?」
「さいしょから
……
」
「そう、最初から。ふふ、兵助、おれ、うれしー!」
八左ヱ門はそう弾けるように笑うやいなや、兵助の耳元に顔をそっと寄せた。
――
俺も、さっきの兵助の
……
なところ、すっげーえろくて大好き!
と、甘く濃厚な愛の言葉を小声でささやいた。「お返し!」と柔らかな声が耳に絡みつき、先ほど唇で味わった柔らかい感触を己の耳に感じる。甘い吐息が触れるたび、おでこのてっぺんから身体中までもが熱くなっていく。まるで百倍にも膨れ上がった愛情の波に飲まれるようで、兵助はただ、悶絶するしかなかった。
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