riririnf
2024-10-26 09:48:13
1632文字
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Silence

魔人任務第四章第四幕ネタバレ捏造小説。
最後に旅人とヌヴィレットが会話している際にフリーナが通り過ぎたシーンについて捏造。
雰囲気で呼んでください。

……フリーナ?」
 暗い目で此方を一瞥して去っていく、か弱い神。
 旅人とパイモンと話を続けるものの、彼女のことが頭から離れない。
「ところで、私はこれから少し急ぎの用事を片付けなければならない」
 結局ヌヴィレットは二人に別れを告げて、彼女を追いかけた。
 降りしきる雨に溶ける感情が絶えず訴えてくる。
 辛い、悲しい、寂しい、助けて。
「フリーナ殿」
 振り向くフリーナの色違いの青い瞳が揺れている。何処を見ているのか定まらぬ暗い瞳が、ヌヴィレットを映す。
 瞬間、揺らぎは消え失せた。
「どうしたんだい、ヌヴィレット。もう急用とやらは終わったのかい」
 その声は、いつもの通り。
 雨に溶ける叫びも聴こえなくなった。

 静寂が満ちる。

 ……君が、それを望むなら。
……ああ」
 追求などしない。
 帰るぞ、と口に出そうとして、自身が彼女に手を伸ばしていたことに、はじめて気付く。
 この手をどうしようとしていたのか。この手の行先は何処だというのか。
 ヌヴィレットは所在ない手を下げた。
 迫る災厄の足音に目を瞑る。
 今は、まだ。

 沈黙。 

 ──君の、望むままに。

◇◆◇◆

 退出する召使と、見送り役にご指名された旅人とパイモンを見送って少し経ち。
 流石にもう召使は去っただろう、とフリーナがエピクレシス歌劇場を出ると、旅人達とヌヴィレットがルキナの泉の前で何やら話し込んでいた。
……
 旅人とパイモン。中々戻ってこないと思ったら、ヌヴィレットと話していたの。
 ヌヴィレット。僕を置いて何処に行っのたかと思ったら、こんなところで油を売っていたの。
 ……結局、僕は独り。
 こちらは召使にこっぴどく追及され、散々な思いをしたというのに。
 フリーナは理不尽な憤りを吐息に込めて吐き出しながら、その場を立ち去った。
……ハ」
 彼らの姿が見えなくなると、漏れ出るのは自己への嘲り。
 当然だ。皆、フリーナのことを神だと思っているのだから。
 迫る災厄への対策を求められこそすれ、助けるだとか、そんな思考になる訳がない。寧ろ、そんな風に思われてはいけない。

 行先もなくふらふらと歩き続ける。

 もう疲れたよ。なんであんなに詰られないといけないんだ。僕だって頑張ってる。500年ずっと、ずっと、予言の為だけに生きている。これ以上どうしたらいいの。
 分からない。怖い。これからどうなるの。
 疲れた。誰か、誰か、たすけて──。

「フリーナ殿」
 聞き慣れた声に、振り返る。
「どうしたんだい、ヌヴィレット。もう急用とやらは終わったのかい」

 心は静寂。

 当たり前だ。僕は水神なのだから。雑音なんて不要。悩み事など、ある筈もない。
……ああ」
 ヌヴィレットは追及しない。いつも通りの、大変有難い反応。
 だから気付いていない振りをする。差し出されかけた彼の手を。
 帰るぞ、とヌヴィレットが背を向ける。
 その頼もしい背中に縋って、全てを吐き出せてしまえたら。
 いや、優しい彼のことだから、理由なんて言わなくても、黙って背中を貸してくれるかも。
 今度は自身が手を伸ばしていたことに気付く。
 彼を利用している。
 その優しさを、強さを。
 彼を、都合のいい存在にしている。

 ああ、ヌヴィレット。キミはいつになったら、僕に本当のサプライズを与えてくれるんだい?
 盛大な、劇のような、全てを終わらせる美しい審判。
 ずっと待ちわびている閉幕を与えてくれるのは、キミなんだろう?
 キミが、幕を降ろしてくれたなら。
 その時は全部話すから。
 ずっと騙していてごめんね、って謝って、二人の間に隠し事はなくなって。
 その内こんなこともあったね、って笑い話に変えて、僕ら新しい関係を築いていけるかも?
 …………なんてね。
 フリーナはそっと手を下げた。

 沈黙。

 ──僕らの関係は、これが正解。