「
……」
起き上がると、ザバッと水が落ちて。
毎回思うけれど、なぜ濡れないのだろうか。
もしかしたら、この水が憶質で出来ているからかもしれない。
「丹恒、さすがに苦しくない?」
「いや。意外と気持ちがいい」
「そうか〜」
寄りかかっている俺と違い、丹恒は右半身を水に沈めている。
この人は、水のあるところを好む気がする。
寝床にしているエリアの床も、水面のように揺れているし、羅浮でもたまに鱗淵境にふらっと向かう。ほとんど無意識みたいだけど。
古海のほとりで何をするでもなくただ眺めている。そんな姿も数回。
「丹恒」
名前を呼ぶと、上半身だけ起こして俺を見上げてくる。
そんな姿を見て、全身を駆け巡る不思議な感情。
きっと、〝愛しい〟と〝好き〟だと思う。
「キスしていい?」
「ん」
水音を立てて体を起こし、俺の首に腕を回して。
呼吸をすると体中の血液が巡り、心臓に戻って来るように。
丹恒に触れてキスをすると、愛しいと好きという感情が体の全身をめぐりまた戻ってきて。
「穹」
首に回した腕が背中に回ってきて。
丹恒は俺の名前を呼びながら、胸に顔を埋めてくる。
「丹恒?」
「お前の心臓の音を聞いている」
と、嬉しそうに微笑みを浮かべ。
それが愛しくて、胸がいっぱいになって。抱きしめ返す。
ああ。心臓がうるさい。耳の奥が、鼓動でうるさい。
「暉長石号のプールでも、貸切る?」
あわよくば、丹恒の水着姿が見たいという下心。
「それもいいな。二人きりか?」
「丹恒が望むなら」
頬を撫でると、気持ちよさそうに目を細め。
「それなら、水着を買わないといけないな」
「俺が選んでいい?」
「ああ。お前が選んでいい」
「じゃあ、デートしようよ」
「そうだな。ピノコニーでいいのか?」
「うん。これからもう一回夢境に行くんでもいいかな?」
「構わない」
体を離して手を繋ぎ、ドリームプールに体を横たえ。
店で互いに選んだ水着を購入し、暉長石号を貸切る日を決めて。
「はあ」
水着に着替え、ぷかぷかと浮く丹恒。
「丹恒、耳。尻尾も出てる」
「お前しかいないからいいだろう」
気が緩んでいるのか、耳の変化だけ溶けていて。尻尾も出ていると指摘すると微笑みながら水の中に沈んでいって。
「わっ」
大きく水しぶきをあげながら出てきた彼は、完全に飲月になっていた。
「丹恒」
危うくスラーダをプールの中に零すところだった。
睨む俺を見て楽しそうに笑っている。
楽しそうにしているのはいいことだが、俺がいるのを忘れないで欲しい。
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