endoftheyo
2024-10-24 23:07:09
2680文字
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酒癖の悪い夫婦の話。【桂主♀】

酔って迷惑をかけるタイプの主♀がいたっていいじゃない。私の作品tksgさんに迷惑をかけがち。
キャラ崩壊してたらごめんなさい。





 きっかけは政府の職務に奔走していた桂が久しぶりに連休が取れたので、一緒に酒を飲もうと二人で日が暮れる前から酒盛りを始めたことだった。

 桂が酒が大好きだということは皆が知っている通りだが、私も酒が大好きだ。江戸城の開城までは情勢が悪くどこもかしこも危険が転がっていたので深酒をすることはなかった。しかし、最近は随分とマシになったものだ。
 とはいえ、さすがに出先では桂に殺意を抱くものも多いので私は大酒を飲むことはできない。なので厳重な警備が張り巡らされた私たちの自宅で呑んでいるとタガが外れてしまうことがあるのだ。

 「最近、太った気がして……」と、話すと桂は「そんな風には見えないけどね」と、あまり気にとめてくれなかった。そこから何がどうなったか分からないが、いつの間にか桂が「久しぶりに真剣勝負といこうか!」と言っていて私も「望むところだ!」と誘いに乗ったのだ。

 多分なんだが体が鈍って太ったとか、そんなことないとか、桂も体がたるんだとか、そんなことないとか……そういう流れだったのではないかと思う。何回か前がそうだったから。

 二人で襖も雨戸もバタバタと音を立てながら開けて、その辺に置いてあった草履を履いて表へ出る。そして二人で手入れの行き届いた庭を荒らしながら、文字通り真剣勝負を楽しんだ。

 一切の思考を捨てて、無我夢中で刀を振るう。桂が大上段の構えから真っ直ぐに振り下ろされた刀を己の刃で受けると脳まで痺れた。
 足払いを避けられながら、手裏剣を投げると危うげもなく払い落とされる。
「手裏剣なんていつから隠してたんだい?」
 そう問う桂の息は切れていない。瞳に月が映っているからかもしれないが、目が輝いていて嬉しそうだ。
「いつだって持ってる」
「ふふ、それは怖いね」
 普段はお前を守るためなんだがな。とは口には出さずに次の一撃を仕掛けた。きっと私の口角はこれでもかというほどに上がっている。

 それからどれだけ二人で斬り合っただろうか。庭の石に躓いて体がよろけたところに刀が振り下ろされる。体が地面に倒れ込みながらも片肘を地面に着いてギリギリのところで刀で受ける。この状態でまともに受けては押し負けるので、己の刃の上を滑らせるようにしてかわした。
 桂の刀が地面に着いた隙に体勢を整えるために素早くその場から飛び退いた。

「もう終わりかい?確かに鈍ってしまったのかもしれないね」
「お前だって、昔ほどの気迫が感じられないが」
「君が本気を出させてくれないからじゃないか!」
 酔ってる桂は、気が大きくなっていて好ましい。いつもこうであってくれればいいと思うのに。
「言ってろ。……こちらから行くぞ」
 桂に飛びつくため、姿勢を落として足を踏ん張ると砂利がザリザリと音を立てる。
「おいで」
 桂の言葉を待って足を弾くように伸ばす。
 
 ───バシャリ!!
 足が地面から離れる直前に大量の冷や水を浴びた。
「うわ」
 驚きのあまり体勢を崩してそのまま桂の胸元にぶつかる。直前に二人とも刀を手放したのでそのまま抱き合う形になる。
「これで何度目だ!!」
 怒気を帯びた高杉の声に二人で身を竦める。
 水が降ってきた方向を見ると、桶を持って怒りを露わにする高杉の姿が見えた。
 やってしまった。
 こうやって家で二人で斬り合ってると誰にも止められなくなり危険なため、護衛にあたっている元奇兵隊が近くに住んでいる高杉を呼びに行くのだ。
 そして、とても怒られる。
 抱き合っていた体を離して、二人で背筋を伸ばして高杉の方に体を向けた。
「すまない、高杉君」
「桂さん、俺は、何度目かを、聞いているんだ」
 高杉は強調するように言葉を区切って話す。
「ええと……
 視線を彷徨わせる桂に元長州藩の顔役、新政府の軸としての威厳はない。
「あんたらが結婚してから俺がこうやって呼び出されるのはこれで十度目だ!いちいち呼び出される俺の身にもなってくれ」
「すまない、高杉。その……気が乗ってしまって」
「気が乗れば迷惑をかけてもいいと?」
 高杉の言葉に二人で申し開きのしようもなく身を縮めた。

「桂さん、この家の酒か武器、どちらか全部捨ててくれ」
「酒はだめだ」
「刀はだめだ」
 私たちの声が同時に、別々のものを否定する。
「私が酒なしではやっていけないのは分かっているだろう」
「いや、刀を捨てたらお前を守れない」
 命を守るためなら酒など二の次に決まっているのに何を言っているんだ!などと言い合いを始める私たちに高杉は頭を抱えた。
「どちらも捨てられないなら真剣勝負をやめろと言っているんだ。二人とも柔術も得意なんだから丸腰でやりあえないのか?」
「真剣勝負だからこそ血が滾るんだろ?」
 私の言葉に高杉は大きくため息をついた。
「あのなあ。今はもう真剣でやり合って怪我したり死んだりしたらいけない立場なのは分かってるだろ」
「桂は昔からそういう立場だぞ」
「分かってんならやるなって言ってんだ!」
 あまりの形相に体が跳ねる。

 しかし、私だって負けているわけにはいかない。
 私だって、酒を飲むと気が大きくなるのだ!!

「高杉は最近つまらん!」
 高杉は、ああ?と鬼の形相でこちらを睨みつける。
「死を目の前にしても華麗に刃を振るった高杉はどこに行ったんだ。暴れ牛と呼ばれた男が斬り合いを恐れるなど……笑わせる」
 「なあ!桂!」と桂に振るが桂は高杉に叱られた事実が随分と効いてしまったらしい。「あ、ああ。そうだとも」と言いつつもたじたじである。仕方ない、私自身で追撃するしかないようだ。

「長州男児の肝っ玉はどこに行ったんだ?鳥羽伏見に置いてきたか?」
 私の煽る言葉に高杉が俯く。握りしめた拳がブルブルと震えているのが見えた。
そして目を見開いてこちらを向く。

「そこまで言うなら俺だって黙っちゃいられない。おい、薙刀をよこせ!二人まとめて跪かせてやる!」

 近くにいた奇兵隊員から薙刀を奪い取り、こちらに刃を向けた。

「これより!!!長州男児の!肝っ玉!お目にかけ申す!!」

「そう来なくっちゃ!」

 ビリビリと体に降りかかる威圧に期待で胸が躍る。投げ捨てられた刀を拾ってすぐさま高杉の元へ飛びかかった。


 この三人の斬り合いは最終的に元奇兵隊たちに助けを求められた伊藤、山縣の長州藩の2人に留まらず大久保、勝、果てには江戸の鬼小町までをも巻き込む大乱闘となったのだった。