街の店ではおばけ顔のかぼちゃが飾られるようになった頃。
ブロッケンJr.のもとに荷物が届いた。
どんな配達ルートかはわからないが、送り主はかのキン肉星の新しき王ではないか。
「なんだよキン肉マンのやつ〜忙しいんじゃねぇの?」
誰に対する照れ隠しを零すも、やや乱暴に包装紙を剥がす手付きに喜びと期待が表れる。
しかしそれは箱を開けた途端、一転した。
「ゲェー、何だこれ!」
中にはロリポップキャンディ(という名を彼は知らないが)、チョコレート、クッキー、煎餅、うまそうな棒、などのお菓子や駄菓子が入っている。それらはあくまで、メインのものを引き立てるように。
箱の中心に鎮座しているのは、黒い、手触りはふわふわの素材でできた、キャスケットのような形の帽子
……そしてそれには猫の耳のような装飾が付いていた!
「は?何の冗談
……」
更にメッセージカードが入ってるのに気がついた。
『親愛なるブロッケンJr.
イベント事は楽しんでこそだぞ!
はっぴーはろうぃん!!! 』
末筆にはいつ練習したのか、サインと思しき前衛的な線で書かれた何かがあった。
「
……こっちはそーゆー感じはあまりないんだよな
……」
きっと本場の国の面子から見聞きした情報や、最近やたら違う方向に熱が入ってるジャパンのイメージが強いのだろう。
そして何より本人がそういうノリが大好きである。
少し昔に、バニーガールに扮して観客を沸かせていた彼だ。ハロウィンなんて最高の機会である。
そんな姿を思い返していると、送られたものは随分とささやかなのでは?と思えてきた。
ブロッケンとて笑いのわからぬ男ではない。
友達の振りに応えてやるくらい
……くらい
……
「スグル
……俺の自慢の弟
…」
「こんなことで自慢にするなよ
……」
さて、送り主の兄である。
目の前の、トレードマークの軍帽から、送られてきた黒猫の頭にすげ替えたブロッケンを拝みながら、弟へ感謝を述べる。
ブロッケンは先程どうするか悩んだが、アタルに会うなり「こんなの送ってきてさー」と軽く、そう軽い冗談話のノリで話した。
隠しておいてもよかったのだが、後から何かの拍子で見つかったら最悪だ。
愛する弟が用意したサービスを、披露せずにいたとあらばどんな仕置を受けるかわからない。
きっと賢い選択肢を採った筈。
そう信じていたブロッケンに、アタルは某悪魔六騎士もかくやという速さで、それを被せたのだった。
「とても愛らしい姿だ、ブロッケン」
「う〜〜、そう真剣(マジ)になるなよー!」
その耳に連動機能はないが、ブロッケンが気恥ずかしさに頰を紅潮させると、震えているようにも見える。
「今夜はそのままでいるよな?」
ぐ、と肩を抱く誘い文句に、ブロッケンはJaかはい、しか選ばせてもらえない。
胸の奥がぎゅっと詰まる感覚に、一呼吸おいて冷静になる。
(大丈夫大丈夫、別に俺からは見えないから普段と変わらないしいつも通りいつも通り
…)
「
……仕方ねえなぁ
…」
強がる姿に、アタルはマスクの下で口端を上げながら、更に遊びを提案した。
「せっかくだから、最中は「にゃんにゃん」と鳴いてくれるか?」
「な
……っ!?それは流石に無理無理!やだ!」
「大丈夫、間違いなく可愛い」
──何も大丈夫じゃねぇよ!!
既に羞恥心の線を踏んでいたのに、さらに越えさせようとする恋人に胸中で叫ぶ。
こんなくだらない内容なのに、真剣な目で見つめらると、絆されそうになってしまう。
でもここで許したら
……!とブロッケンは今後の自分を案じた。
グム厶、と知らぬ間に唇を噛んでいると、アタルはふと、ブロッケンを解放し贈り物のの中にあったお菓子を探る。
そして、ひとつ手に取ると向き直り、突き出しながら笑みを浮かべた。
「では勝負をしようか」
「勝負?」
それは棒状のチョコレートのお菓子だった。
「これを咥えて、そうだな、30分離さずにいられたら、さっきのは諦めるし、お前の言うことを何か聞くとしようか」
「えっ
……!なんでも
…!」
「なんでもとは
……まぁいいか。その代わり、お前が途中で離したら
……わかるな?」
「うぐ、」
そもそも、その勝負を受ける義務などない筈。
それなのに、まるで当然のように条件をつらつらと並べる主人によって、可哀想な黒猫は既に檻の中。
正常な判断は抜け落ち、生来の負けず嫌いだけが機能する。
「やってやろーじゃねぇか!!」
「それでこそ俺の見込んだブロッケンだ」
二人の脳内にカーンと金属音が鳴り響いた(気がした)。
「んぅ
……ッ、!」
ブロッケンはベッドの上で、アタルに後ろから抱きしめられている形だった。よしよし、とまさに猫でも可愛がるように、はだけさせられた腹部を撫でられる。
何をされるか、と構えた所に素肌同士の感覚が乗ったので思わず息をもらした。
今、口元は棒状のチョコレート菓子を横向きして真ん中を咥えている。それなりに硬度はあるが、気を付けていなければ折ってしまいそうになる。
「あぁ、噛み折ってもアウトだからな」
「んぎ
……っ」
今言うなよ。
肩越しに睨まれても、アタルは素知らぬ顔。
撫でていた手がするすると下に降りてくると、ブロッケンはぷい、と顔を戻し試されるそれに耐える覚悟をした。
しかし、意外にも手は際どい所ではあったが止まった。代わりに項の辺りをごしごしと布が擦れる。アタルが口付けをし、そしてそのまま強張った首筋を優しく愛でているのだ。
逆の手では時折、ふわふわの帽子少し押し込みながら頭を撫でる。
「んあ
……、むむっ」
ブロッケンは思わず「なぁ」と口を開いてしまう所を、慌てて閉じる。勢い余って折ってもいけない。
正直、恐らくそれはもう激しく責め立ててくるものだと思っていた。30分の中で、自分の理性を崩しにかかってくると。
しかし、いつも以上に優しい触れ方はなんだろうか。呼吸の度にチョコレートの甘い香りが鼻を抜ける。毒のようにじわじわと思考が蝕まれていくようだった。
「ん、ぐぐ
……ッ!?」
油断を見せると脇腹のあたりをざわざわと大きな厚い掌が這う。ベルトを緩められ、ひとまとめに下着の縁まで指が滑り込むと、ぞくりと身体が震えた。
ブロッケンの代わりに、チョコレート菓子がミシリと呻く。だが、それ以上は何も起らない。
「んぅ
……?」
僅かに震える黒猫に、優しい声がかけられる。
「どうした?何かして欲しいことがあったか?」
「
……!!?」
その言葉に、ブロッケンは一瞬冷静さを取り戻した。そして最悪の答えを見出した。
口を開けてはいけない。
それは快感に声を上げるのを耐えられるか、そういう勝負なのだと思っていた。
だかしかし、人
……少なくともブロッケンの構造上は、口を開かなければ、自分の思いを伝えることは叶わない。
(隊長〜〜!!?)
振り返れば、きっとにやにやと笑っているのだろう。
(焦らし続けるつもりかよッ──?!!)
つづく
ブロッケンは耐えられ
……
①る! (その攻撃がどうかしたか?
②る! (やり遂げてみせる!
③ない!(もう少しだったけど
…
④ない!(即オチ
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.