Hizuki
2020-11-23 16:43:46
1977文字
Public FF14
 

世界に別れを告げる時

【FF14】アルバート+光。最期の場所の話。やや暗めの内容なので苦手な方は注意。捏造部分あります。いつか来るその時に。


何となくふらりと足を向けた先はアム・アレーンだった。
第一世界の端にある物見櫓の上で、光の氾濫が起きた証をぼんやりと見上げていた。

「なぁ、お前はどこで死にたい?」

突然聞こえた声にそっちの方を振り返る。
あたしを見ていたのはもちろんアルバートで。

いきなり出てきたと思ったら質問が物騒すぎるんだけど」

姿を見せるのは決まってクリスタリウムのペンダント居住館の中。
そんなアルバートが外で声をかけてきたのは場所が『ここ』だったからだろうか。
更に向こうにあるのは、かつてのこの世界の英雄達が命を絶った場所。
アルバート達の最期の場所。

「まぁいいや。うーんどこで、か。考えたこともなかったな」

とはいえ突然それを生きている人間に聞くか?と思わなくもない。
けれどわざわざ姿を見せてまで聞いてきたということは、この問いに対するあたしの答えを聞いてみたいというアルバートの意思なのだとも読めた。
彼の問いを小さく繰り返し、腕を組んで首を捻る。
今まで関わってきた国々のどこかか、それとも誰も知らない場所か。
一人なのか、誰かが側にいるのか。

気を悪くしたらごめんとは思うんだけど、やっぱ生きられるところまで生きて、やりたいこと全部やってから、家族とかに見守られながら、ふかふかのベッドの上でっていうのが理想じゃない?」

色んな可能性を選択肢に入れて、辿り着いた答えはありふれたものだった。
辿り着いたというよりは一般的な、の方が正しいのかもしれない。
望もうが望まなかろうが、その時はいつか必ず来る。
なら少しでも穏やかに眠りに就きたいとは思う。

そうか」

一応最初に付け加えたそれは彼の成り行きを知っているが故のもの。
肯定するわけでも否定するわけでもなさそうな声がぽつりと返された。

「とはいえ、あたしも冒険者なわけ。きっと理想通りになんてならないのよ」

自分の手に馴染んだ武器を天に掲げる。
光を受けたそれがあたしとアルバートの間に影を作った。

「それなら、戦場になるかな。あたしは戦うことしかできないからさ」

どちらかといえばこっちの方が本音に近いのかも知れない。
理想はあくまで理想でしかなく、今自分の身を置いている環境を考えればそんな平穏なものより現実味がある。
昔から頭を使うのはあまり得意じゃなくて、身体を動かしている方が好きだった。
そして腕試しを兼ねて旅に出た地で、結果的にこうして英雄なんて呼ばれるようになって。

「自分が全力を出しても勝てなかった相手になら、そういうのでもいいんじゃないって」

ひんがしの国に行った時にちょっと聞いた話。
この首を持っていくがいい、だったっけか。
勝者に敗者が自身の処遇を委ね、場合によっては勝者が戦果として首を持ち帰るという話。

「そんな奴がいるのか?」
これから先にそういう奴がいるならって話」

意外そうにアルバートが聞き返した。
一瞬ちらりと過った闇を今は見なかったことにする。
あれはいつか必ず決着をつけなければならないもの。
あの件に関してだけは自分の首を差し出すつもりはない。

「なるほどな」

何かを察してくれたのか、それ以上追及されることはなかった。

「多分あたしは、あんたみたいに世界のために命を捨てるなんてことはできないだろうから」

もし、アルバートと同じようなことが自分の身に降りかかったとしても、あたしはきっと同じ選択肢を選べない。
いや、選ばない。
英雄なんて呼ばれようとも、あたしはあたしだ。
どこぞやかの聖職者みたいに身を投げ打ってどうこうなんてしたくはない。
あたしの最期の場所はあたしが決める。

「俺達にはそうするしか方法がなかったってだけだ。戦うことが世界のために繋がっているなら、お前もそう変わらないだろ」
「どうだかねぇ

物は言いよう、か。
確かにそうなのかもしれない。
最前線で脅威と戦って、誰かを、国を、世界を守って、救っているのなら。
まだ捨ててはいないにしても、命を使っていることと同じなのかもしれない。
武器を元通りに収めると、来た道を戻っていく。
アルバートの隣で一度足を止めて様子を見れば、相変わらず浮かない顔をしていて。

「ま、今回のアルバートの質問に答えるなら、潔く戦場でってことになるかな」

少しだけ声を張り上げれば、本当にちょっとだけ彼が表情を和らげた。
せめて触れることができるのなら、軽く小突くくらいのことはできるのに。

お前らしい答えだ。変なことを聞いて悪かったな」

それだけ言い残すと、アルバートはまた姿を消した。
一人残されたあたしは少しずつ冷えてきた砂漠を歩いていく。
あたしの最期の場所は一体どこになるのだろう、そんなことを考えながら。