Hizuki
2020-06-01 20:54:55
2050文字
Public FF14
 

会える時が来るまで

【FF14】オル光。グリダニアに留まらざるを得なくなったヒカセンと封鎖の噂を聞いてヒカセンに連絡を取るオルシュファンの話。ただ友のために。

リンクパールから聞き慣れた呼び出し音が聞こえる。
数回の後にその音は途切れ、僅かな間を開けて声が返ってきた。

はぁい」

少しばかり疲れが滲んだような声。
まだ誰からか気付いてはいないのだろう。

「私だ」
「え、オルシュファン?どうしたの?」

私の声を聞くや否や、声はいつもの調子に戻った。
彼女の声が返ってきたことにまずはほっと胸を撫で下ろす。

「商人から不穏な話を聞いたもので、少し気になってな」

頼んでおいた補給物資を届けてくれた商人が聞かせてくれたのは、グリダニアが封鎖されているらしいという噂話だった。
飛空艇はもちろん、各所の門も閉じられているため徒歩でも入ることは叶わず、あの国で何かが起こっているのかもしれないという程度の要領を得ないものではあったのだが。
その話を語れば、彼女ははぁ、と溜め息を吐いて言葉を続ける。

「なるほどね。その真っ只中にいるよ
「大丈夫なのか?そちらはどんな感じなのだ?」

心配のあまり問いを重ねれば、小さく笑い声が聞こえた。

「聞こえてきた話だと、黒衣森のどこかで何かあったみたい。一応原因の調査に行くことを申し出たんだけど、エオルゼアの英雄に何かあっても困るからって言われちゃって」

功績を称えて、人々は彼女を『英雄』と呼んだ。
問題事を前に彼女が大人しくしているとも思えない。
けれど自国の問題を自国の中で解決しようとすることも大事だとも思う。
有事の際に必ず『英雄』がいるとも限らないのだから。

「こっちに自分の部屋があるからそう困ってはいないよ。本当いきなりだったからびっくりはしたけど」
「それは幸いだった」

三国には冒険者用の居住区画があると彼女から聞いていた。
緊急事態下の現地において、少なくともそういった場所を持っていたのは実に幸いだったと言える。

「とにかく外出は避けてくれって言われてるからどこにも行けないし、いつまで続くかも分からないし」
冒険者にとってそれは死活問題だな」
「そうなんだよねぇ。久し振りに部屋の片付けとかもしてたけど、そんなに広いところでもないからすぐ終わっちゃったし。っていうか

彼女の溜め息混じりの声がそこで一度途切れた。
何も言えずにその続きを待つ。

「やっぱ人と会えないって寂しいんだなって思っちゃった」

声の調子が沈む。
誰にも会えずに部屋で一人きり。
それは気も滅入るというものだろう。
どう言ったものかとかける言葉を探していると、彼女の方が先手を打ってきた。

「だから、こうやってオルシュファンの声が聞けたのはすごく嬉しい。わざわざありがとう」

耳に残った珍しい沈んだ声を上書きする明るい声。
顔は見えないのに、彼女の笑顔が思い浮かんだ。
周りの者達をも明るくする彼女の笑顔が。
自身も不慣れな環境の中で、こちらまでも気遣う様子は実に彼女らしい。

「お前の声が聞けてこちらも安心した。しばらくは大変だろうがどうにか耐えてほしい」
「うん。いつ人手がいるって言われてもいいように、すぐに動けるようにはしておくつもり」

やはり大人しくしているというのは彼女の性には合わないようだ。
動き出すようになれば自然に他人と顔を合わせる機会も増えるだろう。

そういえば、手紙は届くのだろうか」

物や人の流れが止まっている中、直接彼女の元に届けられる手段を考え、そうして思い至ったのが手紙だった。
ふとそう口にすると、彼女は可能性のある言葉を次いだ。

「あ、どうだろう届けてるのはモーグリ達か。もしかしたら大丈夫なのかも?」
「ならば、今いる場所を聞くことはできるだろうか?」
「ん?別にいいけどどうして?」

そして私の問いに彼女が聞き返す。

「一度手紙を書こう。それが無事届いたのならば、こちらから差し入れを送ろうかと思ってな。気持ち程度にはなってしまうが」
「え?いいよいいよ。そっちだって大変なんだから」
「私が個人的にそうしたいのだ。それなら構わないだろう?」
分かった」

個人的に、と言うと彼女は引き下がった。
そのまま続けられた場所を手近にあった紙に書き控える。
大々的にどうこうしたいという訳ではない。
ただ友のために気を紛らわせられるような何かがしたい。
それだけだった。

「本当にありがとう。封鎖が解けたらちゃんとお礼させてね」
「姿を見せてくれればそれでいいさ。またドラゴンヘッドでな」

通信が切れ、部屋には暖炉で薪が燃える微かな音だけが聞こえる。
棚からレターセットを取り出すと、先程控えた宛先を封筒に記した。
本国に宛てた正式なもの以外で手紙を書くのは実に久し振りだ。
話していたことと重なってしまう部分もあるが、改めて自分の言葉にして認め、赤い蝋で封をする。

「この手紙を届けてもらえるだろうか」

そして、手紙の配達人にそれを託した。
どうか彼女の元に無事に届きますように、そう祈りを込めて。