Hizuki
2020-03-16 22:36:57
1990文字
Public FF14
 

叶うのなら、どうかもう一度

【FF14】エス+光。会わせたい人、会いたい人の話。オル光前提、2020年プリンセスデーの内容を含みます。普段より気持ちビターめかも。会いたい人に会えるのなら。



フロンデール薬学院を出て、ザル回廊を歩く。
街の中は今の時期ならではの装飾を施されていた。
女の子のためのお祭り、プリンセスデー。
その街中で出会った寂しげな女の子。
一緒に出かけられない友達の会いたい人に会わせてあげたい、という願いを持っていた子が入院していたのがこの薬学院だった。
その子達に触発されて、治療を頑張っている子達が会いたい人を手紙に記し、もしそういった人がいるのなら連れてきてはもらえないかと頼まれて。
手紙の内容を書き写したものが今私の手元にあるメモだった。
何となくこの人だろうか、という見当を付けつつ、メモを見ながら足を進めていると、道を曲がった先で何かにぶつかった。
その拍子に持っていた紙が床に散らばる。

「あっ、ごめんなさい!ちょっと考えごとしてて

明らかに非があるのは前を見ずに歩いていた私の方。
少しよろけた体勢を立て直して咄嗟に謝罪の言葉を口にする。
ゆっくりと視線を上げていくと、目の前の人物がよく見知った者であることに気付いた。

「ってエスティニアン?」
「誰かと思えば相棒じゃないか」

蒼い目と交わった視線、彼は互いの関係を表す名で私を呼んだ。

「何をと聞くまでもなさそうだな。また頼まれごとか?」
「ご名答。流石だね」

散らばったメモを拾いながら、エスティニアンがやれやれと言った様子で息を吐く。
それを受け取って、今の私が抱えている依頼を簡単に説明した。

「なるほど。入院中の子供達が会ってみたい人に会わせてやりたい、か」
「そう。実際に来てくれるかどうかは相手の都合もあるから分からないけど」

ちょっと変わった美容師に、プロの調理師、凛とした女性剣闘士、はたまた歌姫達やこの国の女王まで。
人だけではなく本の影響を受けたドラゴン族と希望は本当に様々だった。

「まぁお前の頼みだっていうなら、応えてくれるんじゃないか」

これまでの私を知っているエスティニアンは前向きな予測を立ててみせた。
多少なりとも当てがあるからこそ、私も引き受けたわけではあるけれど。

「だといいけどね。とりあえず遠いところから当たってみるつもり」

一番遠い場所は恐らく東方。
移動距離を考慮に入れるのなら、先に話を付けなければいけないのはそちらになる。

「それにさ、会いたい人がいるなら会わせてあげたいじゃない?」

憧れの人に会いたいという子供達の願い。
子供達の願いを叶えてあげたいと思ったのは本当。
親元からも離れ、自身の身体を治そうと頑張っているみんなの助けになれるのなら、とこの依頼を引き受けた。

いつ、会えなくなるか分からないから」

だけど、それに自分の願いを重ねてしまっているとも分かっていた。
ずっと私の中にある銀色。
彼に会いたいという、叶わない願い。
目を閉じれば彼の姿が浮かび上がる。

「お前が言うと説得力があるな」
ごめん」
「気にするな。俺にだって会いたくても会えない奴がいる」

エスティニアンが思い浮かべただろう人物に心を傾ける。
きっと彼が考えたのは、喪った家族のことだろう。
両親と、弟と。

「それに、お前がそういう奴だってよく知ってる」

頭の上に何かが乗った。
それに気づいて目を開ければ、くしゃりと前髪を崩される。
仕方のないやつだ、と言わんばかりの顔。
乱れた髪型を直しながら呟く。

理解のある相棒様で助かります」

『彼』とはまた違う形で私を理解してくれる人。
蒼の竜騎士の名を冠していた存在。

「まぁその何だ、うまくいくといいな」
「ありがとう」

相棒、と呼ぶ彼に甘えている自覚はある。
他人から見ればきっと私達は歪な関係に見えるだろう。
今一番近い場所にいるのに、一番にはできない彼との関係は、きっとこれからも変わらない気がしていた。

「それにしても珍しい場所にいるんだね」

確かにエスティニアンは各地を自由に動ける立場にはいるけれど、ウルダハなんていう場所で会うなんて珍しい。
しかもこの道の先にあるのは錬金術師ギルドとさっきまで自分がいた薬学院だけ。
少し首を傾げれば、答えはあっさりと返ってきた。

「ああ、依頼で錬金術師ギルドに用があるものでな」

依頼で、と言われたことに少し安心した。
場所が場所なだけに何かあったのかと気になっていたから。

「では、またな」
「うん、また」

私が来た道を歩いていくエスティニアンを見送った。
吹き抜けの天井から注ぐ光が雪色の髪を照らしている。
彼の姿が見えなくなって、ふうと息を吐き出すと手元のメモにもう一度目を通した。

「さて、私も行きますか」

向かうはクガネ、更にその先。
お金持ちになる方法を知る人物を探して、いや、人ではないか。
とにかく約束を取り付けるべくその地へ飛んだ。