Hizuki
2020-02-17 21:11:51
1948文字
Public FF14
 

一問一答、その理由は

【FF14】エス光。ヒカセンから突然相談を持ちかけられたエスティニアンの話。漆黒秘話2話の内容をちょっぴり含みます。それを俺に聞くか。



「エスティニアン、今どこにいる?ちょっと相談に乗ってほしいんだけど」

そんな連絡を相棒から貰った時は何事かと思った。
こうと決めたら一直線、自分の身も省みずに突っ込んでいく相棒が俺に相談とは。
黒衣森にいることを告げれば、分かったと返事が聞こえた。

「すぐ行くからグリダニアで待ち合わせね。カーラインカフェで!」

俺が答える間もなく通信は切れ、はぁと溜め息を吐く。
自分の用事はもう済ませていたし、宿を取っているのはグリダニアだからどうしたって向かうことにはなる。
おまけに指定してきた場所は宿と同じ場所ときていた。
これは槍でも降るんじゃないのかと心配しつつ街へと戻る。
テレポを使って来るだろうからあいつはきっとすぐに街に着く。
少しばかり遠方にいる分待たせることにはなるだろうが、連絡が突然だったことを考えればやむを得まい。
当然ながら道中の天気が物騒になることはなく、待ち合わせ場所に向かえば、入って右手側の席に座っていた。
向かい側の壁には愛用の槍が立て掛けられている。

「全く急に連絡を寄越してきたかと思えば
「ごめんごめん。ここの代金私が持つからさ」

先に俺の分まで払っていたのだろう、カウンターまで行くと『お好きなものをどうぞ』と声をかけられた。
一杯、といくにはまだ少し早い時間。
相棒の言葉に甘えて柑橘のエッセンス入りの炭酸水を頼み、それを受け取って席に戻る。
ふっと漂った香草の香り。
ポットからカップにとくとくと注がれる淡い琥珀色に、立ち昇る湯気。
どうやら相棒が飲んでいるのはハーブティらしい。

「で、相談っていうのは?」

口の中を軽く潤し、本題を切り出した。
テーブルの上に広げられている紙には何やら幾つかのメモ書きがされていた。
俺の問いに紙を裏返すと、ペンを手に取ってこちらを見る。

「男の人ってさ、どういうチョコが好きなの?」
それはそいつ次第だろう」

あまりにも漠然とした質問に一瞬答えに詰まった。
幾らなんでも括りが大きすぎるうえに、しかも内容がチョコレートについてとは。
味の好みなんざ本当にそいつ次第だろうに。

「うーん、甘くない方が好き?」
「そういう方が好みの奴もいるだろうな」
「ああ、でもアイメリク卿は甘い方が好きそうだよね」

相棒から飛び出したのはアイメリクの名。
シロップ入りの紅茶を好むあいつが甘いものが平気なのは誰が見ても明らかだった。
神殿騎士団経由の依頼として、相棒はそのシロップを納めたこともあるらしい。
誰が作ったものなのかをあいつ自身が知っているかどうかまでは分からないが。
うんうんと頷きながら相棒がペンを走らせていく。

「んじゃ最近おいしいと思ったものは?」
クガネで食ったスルメ、だな」

あれは美味かった。
そのままでも美味いし、火で炙ればまた風味が変わる。
現地の酒ともよく合っていたのを覚えている。

「ふんふん。東方はこっちとはまた違っておいしいもんね」

更に重ねられていく質問に、内心首を傾げる。
そういうことを聞くのならば俺ではなく適役の相手が他にもいるだろうに。
冒険者仲間の縁だってあるだろう。

ところで、どうしてそんなことを俺に聞くんだ?」
「え?」

相棒からの質問が途切れたところで口を挟んだ。
湯気の落ち着いたカップを置き、返ってきたのは間抜けな声。
向けられたぽかんとした顔は、何かを企んでいるような表情に変わる。

「だってエスティニアンにあげるチョコについての相談だもん」
「は?」

今度は俺の方が呆けた声を発する番だった。
理由が分からず困惑する俺に相棒は言葉を続ける。

「そろそろヴァレンティオンだからさ」

興味がないが故に近付かずにいたが、何やら旧市街の方が騒がしいとは思っていた。
あれも確か発祥はイシュガルドだったとぼんやり記憶してはいる。

「もらうにしたって好みのものの方が嬉しいでしょ?」

広げた紙をまとめて鞄の中に仕舞って立ち上がる。
俺の横を通り過ぎると自分の槍を手に取った。

「そういうわけだから楽しみにしててね」

そう言い残すと、建物の外へと駆け出していった。
いつだったか野宿をした時にあいつの料理を食べたことがある。
悪くない、いやあの時に伝えはしなかったが美味かったのを覚えている。
味については心配していない。

だからと言って、それを直接本人に聞くやつがあるか。

伝える相手を見失った言葉は溜め息へと変わる。
確かに槍は降らなかったが、嵐が通り過ぎていった。
そしてあの嵐は近いうちにもう一度来る。
きっとそれは今日の連絡のようにまた突然来るのだろうなと、少し温くなった炭酸水を呷った。