Hizuki
2019-12-30 21:04:07
2178文字
Public FF14
 

原初世界からの贈り物

【FF14】公光。クリスタリウムに現れた星神の従者の話。子供達だけのはずでは。



気分転換に星見の間から出てみれば、街中は普段と異なった雰囲気に包まれていた。
浮かれている、と言っては何だが、人々は笑顔を浮かべて楽しそうにしている。
一体何があったのかと少し辺りを回って話を聞いていると、聞き覚えのある単語が耳に届いた。

なるほど、そういうことか」

それを知り得る存在は数人しかいない。
なおかつ、それを主動する人物となれば、自然と一人に絞り込まれていく。
その人物の姿を探してクリスタリウムの中を歩く。
きっと目印になるものを着ているだろうから、探すことは難しくない。

「星神の従者様がクリスタリウムまで来ているとは知らず出迎えもできずに失礼を」

白に縁取られた鮮やかな緋色の外套を羽織って、エーテライト・プラザの上層、エクセドラ大広場を見渡せる場所に彼女はいた。
正面にはクリスタルタワーの扉が見える。
わざとらしく声をかけると、笑いながら彼女が振り返る。

「あ、見つかっちゃった」

悪戯っぽく笑みを浮かべる姿は少しばかり幼く見え、彼女が歴戦の勇士であることを忘れさせる。
こうしていると普通の女性と何ら変わりない。

「あなたしかいないだろう?」
「それもそうか」

あはは、と笑ってみせ、もう一度広場の方に視線を向ける。
彼女と肩を並べて、同じように見下ろした。

「ありがとう。子供達も喜んでいたよ」
「大したものじゃないけどね」

子供達は星飾りの付いた小さな袋を手に持っていた。
ふんわりと漂った甘い香りからして、どうやら中身はお菓子の詰め合わせらしい。
もらった、と無邪気な笑みを家族に見せる子供達に釣られて、大人達も笑顔になる。

「いやいや、十分すぎるくらいだ。向こうはもうそんな季節なのか」

星芒祭。
確かイシュガルドを発端とする祝祭だったか。
1年間いい子にしていた子供の元に星神の従者が贈り物を持ってくるという。

「うん。だからちょっとだけおすそ分け」

ちょっと、とはいえそれをクリスタリウム全体にとなれば相当な量になる。
視界の端に捕らえたのは彼女と同じ色の外套を纏った双子の姿。
他にも暁の賢人が同じような格好をしているのを見た。
彼らも彼女の協力者なのだろう。

「あなたが世界に闇を取り戻してくれたからこそ、こういったことを楽しめる余裕も皆に生まれた本当に感謝している」
「いいんだよ。いきなり来た私達を『水晶公と同郷』っていう言葉だけで、ここの人達は快く受け入れてくれた。そのお礼みたいなものでもあるから」

その言葉を伝えたのは他でもない私自身。
そして彼女達が原初世界に戻るための方法に多少の進展はあったものの、まだ問題は積まれている。
私も頑張らなければ、と改めて気合を入れ直していると。

「あと、これ水晶公の分」

そう言って彼女は持っていた白い袋の中から別の何かを取り出して、私に差し出す。

「私の?」

従者からの贈り物を受け取っていたのは子供達だけだったはず。
しかも少しばかり袋が大きい。

「水晶公にはいっぱいお世話になってるから。ね?」
「そんな私は
「いいからいいから」

受け取るのを躊躇っていると、彼女は私の手に袋を持たせて笑う。
あたふたしている私を気にした様子もない。
ふと階下から彼女の名を呼ぶ声がした。
それに応えるように双子に向かって手を振る。

「さて、ちょっと行ってくるよ」

二つの緋色が姿を消し、彼女もくるりと身体の向きを変える。
これから彼らと何かがあるのだろう。

「そうそう、夜になったらコンサートもやるんだ。観に来てくれたら嬉しい」

私の考えていたことを見透かすように言葉を続ける。
ということはその準備といったところか。

「あ、ああ、もちろん行かせてもらうよ」

せっかく彼女達がクリスタリウムのためにと企画してくれたのだから、行かないわけにはいかない。
一体いつの間にそんな準備をしていたのかと聞きたくなる。
私の返事ににっこりと笑うと、彼女は階段を下りていった。

「それじゃ、また後でね」

足音が徐々に遠ざかっていく。
そしてちょうど今自分が立っている足場の下から3人の姿が現れる。
双子に挟まれるようにして歩いていく彼女はとても楽しそうで。
彼女から渡された袋に目を落とす。
子供達がもらっていたものと同じ星飾りの付いた袋。
口を縛っている赤いリボンを解けば、中には白い箱が入っていた。
箱をそっと開けてみれば、自身の目と同じ色の石をあしらった耳飾りが姿を見せる。
『普段よりもちょっと頑張ってみました』というメッセージカードから、彼女が作ったものだと分かった。
ミーン工芸館の面々から彼女は職人としても一流であるとは聞いている。
まさか彼女のお手製のものがもらえるなんて思いもしなくて、年甲斐もなく受かれている自分がいるのが分かる。
元通りに箱を閉めて丁寧にしまい、星見の間に戻る。
そして再び中身を取り出して自分の耳に付けた。
鏡に映る自分の耳元に揺れるそれを見ながら、夜の準備に駆け回っているであろう星神の従者様に改めて感謝をして。
何やかんやで今日はちゃんと食事を取っている時間もないだろうから、準備の邪魔にならない程度の差し入れを届けに行こうと決めて、もう一度星見の間を出た。