Hizuki
2019-12-02 21:51:54
2543文字
Public FF14
 

未来に繋ぐ夢と思いと

【FF14】エス光。酒場で出会った女の子の夢の話。5.1メインクエ終了直後、漆黒秘話2話の内容をふんわりと含みます。モブキャラが結構喋る+CP要素ほとんどありません。2年前に書いた話と繋がってますが、読んでなくても大丈夫な感じになってます。直接会って伝えたいこと。



第一世界での現状報告に戻った石の家。
その場に姿を見せたのは、ギムリトでの戦いの最中に倒れた私を助け出してくれたというエスティニアンだった。
報告を済ませてリンクパールを鳴らしながら慌てて彼の後を追い、どうにかモードゥナとクルザスの境界で引き止めることに成功した。
そうして今、セブンスヘブンの片隅で、久し振りに顔を合わせた彼とテーブルを挟んで向かい合っていた。

「まさかエスティニアンが暁に協力してくれていたとはね
俺にも色々あるんでな」

何があったのか敢えて問うことはしなかった。
主だった賢人達はみんな第一世界にいる。
その中で残っている面々を考えれば何かがあったと察するのは想像に難くない。
暁の事務方を一手に引き受けているタタルさん。
そしてアルフィノの過去を知っているクルルさん。
この二人とエスティニアンの間で間違いなく何かがあって、結果として彼は暁への協力という形になったのだろう。
機会があれば話を聞いてみてもいいかもしれない、なんて思いながら手にしたコップの中身を飲み干した。

「あの、突然申し訳ありません」

私達の話が切れるタイミングを見計らっていたのか、恐る恐る声がかけられた。
声のした方へ二人揃って振り向くと、そこには商人らしき男性と幼い女の子が立っていた。

「失礼を承知でお尋ねします。あなたはイシュガルドを救ってくださった英雄様でしょうか?」

イシュガルド国内やクルザス領でもない場所でかけられた問いに思わず目を丸くした。
確かに声をかけられることは何度もあった。
とはいえここはイシュガルドではない。

「ええと、まぁそうです

英雄かと問われ、はいそうですと答えるのはやはり少しばかり抵抗がある。
自然と答える声は控えめになった。

「ほらパパ、わたしのいったとおりでしょ?」

男性の服の裾を引っ張り、女の子が得意げに胸を張った。
どうやら私のことを言い当てたのは女の子の方らしい。

「すみません、どうしても娘があなたにお礼を言いたいと
「私に?」
「おねえちゃん、イシュガルドをまもってくれてありがとう!」

一歩こちら側に踏み出した女の子は元気いっぱいにそう言った。
裏表のない、素直な言葉は実に眩しい。

「何で私だって分かったのかな?」
「ほんでみたの!それでね、ちゃんとおれいをいいたいなっておもってたの!」

本、と言われふと以前あったことを思い出した。
子供向けに竜詩戦争を伝えるための絵本が作られること、そしてそのニーズヘッグとの最終決戦のシーンに私の姿がモデルとして描かれていることを。
最近始まったイシュガルドの復興事業の関係で向こうに顔を出す機会も増えた。
声をかけられるにしても、今までは圧倒的に騎士団の兵や、異国の者に友好的な貴族からがほとんどだった。
けれど最近は子供達から声をかけられることが増え、少し不思議に思っていたものだけれど、これでようやく合点がいった。

「わたしね、いつかあのしろいドラゴンさんにあいにいくんだ!それでね、きょうみたいにありがとうっていいたいの!」

女の子は真っ直ぐな目で思いを語った。
白いドラゴンとはフレースヴェルグのことだろう。

「わたしのゆめのひとつなの!」
「そっかぁきっとそのドラゴンさんも喜んでくれるよ」
「えへへ!」

そう簡単に会えるようなドラゴンではない。
何せ七大天竜の一角なのだ。
けれど女の子の思いはきっと蒼天を巡って聖竜に届くに違いない。
いつかドラヴァニアの地を踏み、直接伝えられる時が訪れてほしいと心の中で願う。

「それとね、くろいドラゴンさんにもあいたいんだ」
「黒い、ドラゴン

隣で小さくエスティニアンが呟いた。
やはり思うところがあるのか、エスティニアンは女の子から視線を逸らし、テーブルに置かれたカップに目を向ける。

「どうしてかな?」
「くろいドラゴンさんのいもうとは、ひとがころしちゃったんでしょ?だから、ごめんなさいしなきゃっておもって

カタリ。
側の壁に立てかけていた紅い槍が揺れた。
まるで、女の子の言葉にいないはずの黒竜が応えたかのように。

「わたしだってパパがころされたらいやだもん

小さな手がきゅっとスカートの裾を握る。
彼は何も言わない。
持ち上げたカップを口元に運んで、ただ静かにそれに口をつける。

「それがわたしのもうひとつのゆめ

ころっと変わった女の子の表情。
俯いた顔からぽろりと涙が落ちた。
あの本からこれだけのことを感じ取ってくれる子がいるとは。
先の夢はともかく、もう一つの夢が叶うことはない。
黒い竜は、ニーズヘッグはもういないのだから。

本当にそう思っているのか?」

沈黙を破り、確かめるようにエスティニアンが問う。
彼の声に圧されたのか、大きく肩を揺らした。
カップをテーブルに置いて立ち上がると、女の子の方に歩み寄っていく。
動きに合わせてさらりと雪色が揺れる。
そして女の子の前に膝をついた。
ゆっくりと顔を上げ、エスティニアンの目を見て、女の子は力強く頷いた。

そうか。なら、その気持ちをずっと忘れないでやってくれ」

それを見て表情を和らげると、伸ばした手で女の子の頭をくしゃりと撫でる。
途端に険しかった顔は綻び、店内に元気いっぱいの返事が響く。

「うん!」





そろそろ出発するという男性と女の子を見送った。
クルザス中央高地を経由して、グリダニアに向かうのだという。
姿が見えなくなるまで手を振って、店の中に戻った。
互いに空になってしまった飲み物のおかわりを注文して、私達は席に着いた。

ニーズヘッグにも、伝わってるよね?」
「ああ、きっとな」

黒竜の魔力を帯びた槍は何も語らない。
ただそこに静かに存在するだけ。
けれど伝わっていると信じたい。
姿形は違えども、確かにあの場にいたのだから。

「あの子の夢、叶うといいな」
「そうだな」

これからのイシュガルドを生きる子から聞かされた夢に、私達の心は温かくなる。
夢を叶え、聖竜の前に立つあの子の姿を思い描きながらそっと目を閉じた。